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イネさんとの語らい

「うぅん……?」


 あら? 私、寝ちゃってた?


 というかこのは……どこかしら?


「起きたか」


「あっ、百取さん」


「安静にしてるんじゃ。其方が筋肉を無理に動かしたせいで線維(せんい)がまだ繋がっておらん」


 パタン、と枕に頭を乗せる。


「ふぅー……全くとんでもないのぅ。会議室をめちゃくちゃになってしまったわ」


「あぁ……」


 確かに、会議室吹っ飛ばされてたものね……。


「それに、ルリカ君。君が勇者じゃったとはな……」


「あ」


 そうだったわ……戦いや会話に集中しすぎてここが村のど真ん中で周囲にも忍者さん達が沢山いるのを忘れてたわ……。


「安心せい。幸い聞いたのは儂とお主の仲間と一部の上忍、そして廻邏毘だけじゃ。あやつらには一応黙っとく様に言ってあるから、この情報が他の奴に行く事はないじゃろう」


「あっ、ありがとうございます……」


 私が気絶している間にそんな事をしていてくれたなんて……感謝しかないわ。


「そ、そうだ、他の皆んなは……?」


「ルリカ君の仲間達は、今は美沙羅奇におるな。廻邏毘が記憶を取り戻せる道具でも作ったりしておるのを見ておるんじゃろ」


 あっ、皆んな美沙羅奇にいるんだ……。


「少し休んで体が動かせる様になったら、皆に会いに行くと良い。皆、其方を心配しておったぞ」


「……はい」


「それでは儂は、ちと野暮用があるのでな、少しばかり席を外すぞ」


「あっ、はい。お気を付けて」


 百取さんが部屋から出て行く。


 ……いやー……気絶しちゃうなんて……カッコ悪い所は見せられないなんて思ってたのに、最後はちょっとカッコ悪かったわね。


 でもまあ、気にしない気にしない! 倒せたには倒せたんだし、結果オーライプラマイゼロよ!


「ふっ……あでで」


 試しに右腕を動かしてみたらチクリとした痛みが右腕を色んな箇所から襲った。


 線維が繋がって無いのに動かすとこうなるのね……はぁ、これじゃ動けないじゃない。


「……暇だわ」


 あまり顔も動かせない中、ただ天井を眺めているというのは暇すぎる。


 誰か、話し相手にでもなってくれないかしら……。


「おや、話し相手が欲しいのか?」


「え?」


 声がした方向に顔を向けると、いつの間にかイネさんが立っていた。


「イネさん……」


「ははは、どうだ? 当たってたか?」


「当たってます……」


 流石上忍ね。読心術何てお茶の子さいさいなのかしら。


「ああ、上忍にもなればな」


 ……何か、イライザを相手にしている気分だわ……。


「さてと。話をしたい、と言っていたが、まあ何だ、私から聞きたい事が沢山ある」


 まあ、そうよね……。


「まず、私達を襲って来たトラスフォーという奴は何者だ?」


「イイジマの記憶を奪った奴の……配下……かしら? 多分配下よ」


「なるほど、では次だ。イイジマの記憶を奪ったという奴が使ったというチート。それに心当たりは? あとまず使った奴自体にも」


「どちらもないわ」


「そうか……ふむ、ますますイイジマを狙った理由が謎だな……。次で最後だ。より強力な配下達が君達を襲ってくる可能性は?」


「…………あるわ」


「……そうか」


 こればっかりはある意味仕方ないわ。


 一人配下が倒れたら、より強力な配下を送って倒した奴を倒すというのは、様々な時に用いられる方法だもの。


「ならば、私も君達の旅に同行させて貰って良いかな?」


「え?」


 今何て?


「なに、これでも私は上忍でね。戦闘能力は申し分無いと思うんだ。そして同行したいと言った理由だが、君達の事が少しだけ心配なのは勿論だが、一番は……ニルが惚れ込んだ人の記憶を奪った奴の顔面に、一発ガツンとぶん殴ってやりたいからだ」


「ふっ……ふふふふ……」


「おいおい、笑うなよ」


「ごっ、ごめっ……ふっ……ごめんなさい……最高の理由ね。ええ、ぜひ同行して頂戴。皆んなにも言っておくわ」


「ありがとう……だが、私が自分で報告してくるよ」


「良いの?」


「その様子じゃ、まだまともに動けないだろ?」


 また試しに右腕を動かしてみた。


 ……痛い。


「じゃ、報告に行ってくる」


「行ってらっしゃーい」


 イネがスタスタと部屋から出て行く。


 ……ふぅー、まさかイネまで仲間に加わるなんて……これであのチートとかいう力を使う奴を倒しやすくなったわね……ありがたいわ!


 そうして私は、再度天井を眺めるのであった。


『面白い!』


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