一人の勇者 ⑥
「うがぁぁ!」
ギラシャが物凄い速度で駆けて来て、剣を振り下ろして来た。
「くっ……!」
お、重い……!
物凄い力ね……。
「援護します!」
リリーフィアさんが手から水色の何かを放つ。
「んん? なんだぁ? どわっ!」
すると次の瞬間水色のそれが爆発した。
「くそ……なんなんだよ今のぁ……!」
「ふふふ、秘密です。でも直撃したら危ないとだけは言っておきますよ」
「ちぃっ!」
ギラシャが舌打ちをしながら剣を振るって来る。
その攻撃を私は避け、剣をギラシャの首に持っていく。
「させるかよぉ!」
「なっ!?」
するとギラシャは物凄い速度で私の剣を塞いだ。
なんて速度なの……!?
「うらぁっ!」
「はっ!」
今度はギラシャが私の事を斬ろうとしてきたが、リリーファさんの援護があって何とか回避出来た。
「くそがっ! ちょこまかとぉ……!」
ギラシャが攻撃対象をリリーフィアさんに変える。
「ふんっ!」
「!」
物凄い跳躍力で飛び上がり、リリーフィアさんを斬り付けようとする。
「その様なのでは当たりませんよ」
「がっ」
リリーファさんが素早く飛び回り、ギラシャの攻撃を回避してから反撃した。
凄いわね……私でも反撃までは出来ないわ……。
「くそぉ……! ハエみてぇにブンブン飛び回りやがって……!」
あ。
「……ハエ?」
飛ぶ事が出来る精霊種に対して、絶対に言ってはいけない言葉がある。
そう、ハエだ。
ハエと言って生き延びた人は殆どいないらしい。
「私にその様な事を言った事……後悔させてあげます」
その瞬間、リリーフィアさんの姿が消えた。
「!」
直後、ギラシャが先ほど私にやったのと同じ様に、剣で守りの姿勢を取った。
そしてそこにリリーフィアさんの攻撃がいった。
「危ねぇなぁハエさんよぉ?」
「……」
無言でリリーフィアさんはあの水色の爆弾を出して離れる。
「もう効かねぇよぉ!」
ギラシャがその爆弾を引っ剥がし、後ろに放る。
そしてその時起きた爆風によって加速したのか、先程よりも速いスピードでリリーフィアさんに迫る。
「はっはぁー!」
「……ふっ」
だが、リリーフィアさんはそれを再度躱し、物凄い勢いで迫って来ていたギラシャの後頭部に蹴りを入れ、ついでに爆弾を設置した。
「てめぇ……その爆弾やめろぉぉ!」
ギラシャが爆弾をリリーフィアさんに向かって投げ、自分は剣で爆風をガードする。
「!」
リリーフィアさんは足を爆弾方向に向けて爆破衝撃を抑え、そのまま慣性に従ってギラシャの方へと落下する。
「うおっ!?」
爆発によって発生した煙に視界が遮れる中、リリーフィアさんはそのまま蹴りを喰らわせた。
「痛っってぇ!」
手に直撃した足は、爪先をクルンと向きを変えてギラシャの手首を再度攻撃し、絡め、捻る。
そして、カンッ、と剣が床に落ちる音がした。
「しまっ――!?」
「そこです!」
「どわぁぁっ!」
武器を無くしたギラシャに、リリーフィアさんの強力な蹴りが入り、ギラシャは森の奥へと吹っ飛んでいった。
「さ、流石ですリリーフィアさん!」
「ありがと。ささ、早く剣を抜いてしまいましょう!」
「はい!」
「おいぃ……待てやぁ……」
「「!」」
も、もう復帰して来たの!? いくら何でも早すぎる……!
「ちゃんとぉ、殺されてくれやぁぁぁぁ!」
ギラシャが今までの比じゃない速度でリリーフィアさんに迫る。
「なっ!?」
その速度の違いに対応出来ず、リリーフィアさんは……
「ガハッ」
斬られた。
「……ハハッ」
ギラシャの残虐な笑みが、私の視界に入る。
何よあれ……あの速度……私じゃ対応なんか出来な――
「おぃおぃ、もう諦めんのか?」
「!?」
首にヒヤリとした感触が触れる。
「っ! 剣がっ……!」
いつの間に背後に!?
「はぁ……あばよ」
首の皮が切られるのを感じる。
血が首を垂れるのを感じる。
剣が肉を断とうとするのを感じる。
もう、お終いなの……?
「……嫌だッ!」
こんな所で! 終わりたくない!
その直後、右手が何かを握った。
「……ぅえ?」
「何だ!?」
その右手にあったのは……
「……剣……?」
あれほど引き抜こうとしても引き抜けなかった、勇者の剣だった。
そして勇者の剣から暴風が巻き上げ、ギラシャと私の距離を離す。
「どわぁぁぁっ! っと!」
何とか体勢を立て直したギラシャが着地する。
「おめぇ! その剣どっから! ……うっ!」
「なっ、何っ!?」
勇者の剣が突如輝き始め、剣身がウニョウニョと形を変える。
「もしかして……私だけの勇者の剣に……!?」
何それ! 最高じゃない!
戦闘中という事を忘れて、どんな物が出来上がるのか待つ。
そして、その輝きが消えた。
「おおっ! これが! 私の……剣?」
出来上がったのは、そこら辺の武器屋で売ってそうな普通の鉄の剣だった。
「ぶははははははは! おめぇ、勇者の剣にも見捨てられるとか! 可哀想すぎるぜ!」
え、私……勇者の剣にも見捨てられたの……!?
「嘘ぉ〜!?」
だがそう言ったその時、剣身が淡く金色に輝き始める。
「っ……!?」
「よしっ! やっぱり見捨てられて無かったわ!」
ま、まあ最初から見捨てられてないって分かってたけどね! ね!
「それじゃあ……ギラシャ!」
「ぬぅ……!」
「第二ラウンドよ!」
そうして、私は金色に光輝く勇者の剣を構えた。
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