一人の勇者 ④
「よーし、頑張りましょー!」
私はそう言って王都から出る。
もちろん行き先は精霊種の森だ。
「ふんふんふふーん♪」
そう鼻歌を歌いながらスキップをして歩く。
何故そんな事をしているのかというと……
仲間がいないからだ。
そう、勇者になった時仲間を募集したのだが、皆んな魔王討伐なんていう命を賭けまくる事をには参加したがらず、「どーせ勇者様が倒してくれるでしょ」的な感じで誰も仲間になってくれなかったのだ。
「ふん……ふふん……べ、別に大丈夫よ! 仲間がいなくたって、私自身が強いんだから!」
何せ勇者だし!
「取り敢えず、精霊種の森までの行き方は何となく分かるから……早く行ってしまいましょ」
そして私は少し駆け足で歩き始めた。
勇者の剣とは、前にも言ったけれど、御伽話に出てくる勇者が持っていた剣の事よ。
その剣の名前は御伽話に出てこないので、勇者の剣、と呼ばれているわ。
そしてこの剣、普通の剣と何が違うのかというと、まず材質ね。
オリハルコンっていうこの世には無い素材で作られていて、鋼を紙の様に斬る事が出来るらしいわ。
更にこの剣、勇者が本気で敵を倒そうとすると金色に光り輝くらしい。
今は、精霊種の森の奥にある台座に突き刺さっているようね。
……いやその台座、鋼より硬いって事?
とかいう疑問は置いといて、取り敢えずそんな感じのが勇者の剣。
それを手に入れられれば……まあ間違いなく魔王を倒せちゃうわね。
……で、何故突然こんな事を言い出したのかというと
「ふんぎぬぬぬぬぬぬ……!」
「頑張って下さいルリカさん!」
現在進行形でその剣を抜こうとしているかるだ。
事は一時間前に遡る。
「やっと……着いた……」
二泊三日の野宿をし、ようやく精霊種の森に辿り着いた私は、勇者の剣がある方向へと歩き出した。
「……なんか、暗くて薄気味悪いわね……」
この暗さのせいで何かに見られているって感じが凄いするし……。
怖すぎるわ。
「早く行っちゃいましょ!」
足を早め、剣に向かって歩く。
「うふふふふ……」
「!?」
な、なんか笑い声が聞こえた!
気のせい……じゃないわよねこれ多分!
だってここ精霊種の森だもの!
「……ルリカさん」
「あひゃぁ!?」
背後から突然だけど名前を呼ばれたので変な声を出しながら驚いてしまった……恥ずかしい。
あれ? 今の声どこかで……。
ゆっくりと背後を振り返る。
「どうも」
「あっ!」
後ろにいたのは、リリーフィアさんだった。
「リリーフィアさん!」
「お久しぶりです。と言っても、現実で会うのは初めてなので、初めましてでしょうか?」
「うふふ、どちらでも大丈夫だと思いますよ」
「そうですか……して、早速勇者の剣を抜きに行くのですか?」
「そのつもりです!」
「では共に行きましょう。この辺りは危険も多いですので」
「ありがとうございます」
そして私はリリーフィアさんと共に奥へと入って行った。
そして――
「も、もしかしてあれですか……!?」
「そうです、あれが……勇者の剣です」
台座に刺さっている剣に、神々しい光が当たっている。
剣の見た目は、案外ただの鉄の剣と似ていた。
「早速引き抜いてみても良いですか?」
「もちろん構いませんが、一つ注意点がございまして」
「? 何です?」
「その、勇者の名に足る力が無いと抜けないのです」
「勇者の名に足る力?」
「要するに、その人の心の強さ、と言いますか、精神力と言いますか、それが勇者並みに強く無いと抜けないのです」
よ、よく分からないわね……。
「取り敢えず、抜いてみるとするわ」
「そうですね、やってみない事には手に入るかどうか分かりませんし」
そうして私は勇者の剣の柄を持つ。
「ふんぎぬぬぬぬぬぬ……!」
そして思いっきり引き抜こうとする。
「頑張って下さいルリカさん!」
でも……
「ぬ、抜けなぁーい!」
抜けなかった。
「うーん、まだ精神力が足りないみたいですねぇ……」
「そ、そんなー……!」
その時、ドスン、と地響きがした。
「な、何!?」
「……どうやら魔王軍がこの森のすぐ近くまで来た様ですね」
「えぇ!?」
「ルリカさん! お力を貸して下さい!」
「わ、分かったわ!」
そして私は、走り出したリリーフィアに付いていくのだった。
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