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一人の勇者 ②

「ルリカさん!」

「おぉ! あれが100年振りの……!」

「今の内に取り()っておこうか……」

「女が勇者とはな」

「意外と美人だ……」


 そんな声が周りから聞こえる。


 今このパーティーに出席しているのは、各国から集まったお偉いさん方や、今後私をサポートするであろう技術者達や、何とかコネを使って参加した人達だろう。


 正直言って、あまり楽しいものではない。


 私を勇者として見るのでは無く、自分を有名にさせる道具としか見ていないから。


「ルリカさん。私はフォルード商会のオミリオと申します」


「は、はあ……」


「私はルリカさんの装備などを各国から集め、此度(こたび)の魔王討伐に全力で協力させて頂く所存です」


「そうなんですか。ありがとうございます」


「そこで、折り合って少しお願いが……」


「何でしょう?」


 大体見当は付いてるけれど。


「はい、魔王を討伐した際に、フォルード商会が装備の協力したと、そう言って頂ければ――」


「あっ、すみません。呼ばれている様ですので失礼いたします」


「ああっ、ルリカさん……! ――チッ」


 やっぱり、このパーティーはあんな感じの人ばかりね。


 その後も色んな人達から同じ様な事を言われ続けた。


「ふぅ、少し何か食べよーっと」


 私に言いよる人が少なくなり、何とか料理が並べられている所まで辿り着けたので、お皿を手にとってその上に料理を並べて行く。


「こんな感じで良いかしら……」


 私は料理を乗せたお皿を持って近くの椅子に座り、ゆっくりと食べ始めた。


「んっ、美味しい!」


 流石王様が開催したパーティーね。


 シェフは間違いなく三つ星レストランのとこね。


「失礼、相席良いですかな?」


 そう私に話しかけて来たのは初老の男だった。


「構いませんよ」


 ここで拒否して悪印象を残したらもしこの人が私に装備とかをくれる人だったらその装備あげるっていうのをやめるかもなので、こういうのにはしっかり対応する。


「ルリカさん、ですよね?」


「はい」


「ああ良かった。人違いだったらどうしようかと」


「それで、私に何の用でしょうか?」


「ええ、実はですね、和は装備品の資材を提供する職業をしているのですが、同時に情報屋もやっていましてね。面白い情報を手にしたので、ルリカさんに教えて差し上げようかと」


「……それ、私がお願いするわとか言って一通り話した後、じゃあ話したから情報料として1000万G(ゴールド)、とか言わないですよね?」


「まさかそんな、ここは王宮で、しかもパーティーの真っ只中ですよ? そんな事をこんな一目に付く場所でやれば私の信頼に傷が付きます」


「……なるほど、確かにそうですね。それで、情報というのは?」


「……勇者のつるぎ()、という剣についての情報です」


「勇者の……剣?」


御伽話(おとぎばなし)などで聞いた事はないでしょうか? 伝説の勇者が、魔王を倒す際に光り輝いたとされる伝説の剣です」


「もちろん聞いた事がありますが……それが何です? まさか、本当にあるなんて言わないですよね?」


「ところが、実はあるそうなんですよ、その伝説の剣」


 ……はぁー?


「すみませんが、その様な冗談は……」


「いえいえ嘘ではありませんよ。こんな冗談を言って何になるのです?」


「……まあ仮にその話が本当だったとしましょう。それで、その勇者の剣はどのにあるのですか?」


「詳しい場所は分かっていませんが、どうやら精霊種(スピリット)の森の奥にあるそうです」


「ス、精霊種……」


 精霊種の性格というのは全種族の中で有名だ。


 大半が残虐非道、道徳というものを知らない人だらけという精霊という名前が似合わなすぎる種族。


 そんな人達が住んでる森の奥……行ける気がしないわね……。


「ただ、この噂はかなり信憑性がありましてね、何とこの情報の提供者が、その精霊種なんですよ」


「え?」


 ス、精霊種が私達に情報提供?


 聞いた事無いわそんなの。


「嘘を掴まされてるんじゃないですか?」


「ははは、それなら精霊種はもっと酷い嘘を吐きますよ」


「……確かにそうですね」


「なのでこの話には信頼性がそこそこあるのです」


「なるほど……」


 本当にその剣があるのならば……魔王討伐の際に役に立つ事は間違いないわね。


「旅の最中、良ければ行って探してみて下され」


「分かりました。情報提供に感謝します」


「では私はこれにて」


 そう言って初老の男は席を立ってどこかへ行ってしまった。


「あっ、お料理お料理!」


 そうして私は勇者の剣の事を考えながら、少し冷めた料理を口へと運ぶのであった。


『面白い!』


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