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……これ、一種の人狼ゲームじゃない?

「諸君、集まって貰って感謝する」


 百取さんが招集を掛けてから1時間後、会議室には全上忍が集まっていた。


「今回呼んだのは、この中に、儂に無断で森人族の村に下忍を出した者がおるからじゃ」


 その瞬間、会議室内の空気がピンとなる。


「そしてあろう事か、その村で曰く付きと呼ばれている物を買って来させた様なのじゃ」


 うわわっ、な、何か空気が冷たくなってきたわ……。


「そこで、今回はこのルリカ君に、お主らの調査をして貰いたいと思っている。ルリカ君の事は、お主らも一応知っているじゃろう?」


 コクリ、と上忍達が頷く。


「そして彼女は忍者ではないのでな、その犯人を庇う理由も存在しないという事じゃ。では廻邏毘、起動してくれ」


「あ〜い」


 廻邏毘さんはポチッと正言機のスイッチを押した。


「この機械は周囲の者に嘘を吐けなくするものじゃ。この機械を壊そうとした場合は、即、儂が捕まえて牢屋に送る。因みに、この会議室から出て行こうとしても同じものとする。ではルリカ君、初めてくれたまえ」


「はっ、はい!」


 って、言われても……何をどうしたら良いのか分からないわ……。


 と、取り敢えず、一番近い人から始めようかしら。


「えっと……まず、貴方のお名前を教えて貰っても?」


「……瞬冷(しゅんれい)と言う」


「貴方は、森人族の村に人を送りましたか?」


「否だ」


 なるほど、この人は違う、と。


「では貴方は――」


 そこから私は上忍全員にそう質問していった。


 もちろん、上忍の中に鬼姫(きひめ)さんや影蘭(えいらん)さんもいたけれど、ちゃんと聞いた。


 結果……


「だ、誰も……やってない……?」


 全員が、人を出してないと言ったのだ。


「ふむ……一体どういう事じゃろうな……?」


 百取さんが私をみる。


 多分、私の情報が本当か疑っているんだろう。


「し、質問を変えます! 皆さんは、記憶を取り戻せる道具が欲しいですか!? はいかいいえで答えて下さい!」


 ひとまず、これでどうにか炙り出せそうだけれど……。


「「「「「いいえ」」」」」


「……え?」


 全員……いいえ?


 ど、どういう事!? もしかしてあのおばあさん……嘘吐いたの!?


 いや……でも……あの状況で嘘を吐いても意味が無い……。


 じゃあ本当に何でなの……!?


「ルリカよ、お主を疑う訳じゃないのだが……」


「わ、分かってます……」


 でも一体どういう事なのかしら……?


 誰も村に人を行かせていなくて、誰も記憶を取り戻せる道具は欲しくない……。


 動機が無いしまず誰もやってないって事よね……?


 でも買われているから事は起きてるし、やるからには動機があるって事だ。


 これは……もうほぼほぼ人狼ゲームね。


 本当の事しか喋れないタイプの。


 ……いや何その人狼ゲーム。


「ならば……あっ! この中に、《《曰く付きの物》》、または道具が欲しい方、もしくは欲しかった人はいますか? いたらはいと返事して下さい。因みに、要らない方は要らないですと言って下さい!」


 そう、先程の言葉には抜け道があった。


 記憶を取り戻せる〝道具〟と私は言ったのだ。


 つまり、道具ではなく、曰く付きの物は曰く付きの物だと思っていれば、あそこでいいえと言う事は全然可能なのだ。


「「「「「要らないです」」」」」


「……はい」


「!」


 いた!


 今声を発したのは……!


「しゅ、瞬冷さん!」


 先程、私が一番最初に質問した人だった。


「瞬冷、お主じゃったのか……」


「……申し訳ありません、百取様」


「何故こんな事をしたのか、聞かせて貰えるな?」


「……私は、ある日何か大事な事を忘れている気がする様になったのです」


「大事な事?」


「何かは覚えていませんが、とにかく大切な事だったのは覚えているのです。それを思い出したい、と、前に部下に言ったのです」


「ほお」


「すると、その部下が独断で森人族の村に行き、その曰く付きの道具を買って来たのです。恐らく、その思い出したいと言った時の私は別の部下が任務を失敗したので怒っていたので圧の様なものがあったのでしょう。私の監督不足です。申し訳ありませんでした」


 そう言って瞬冷さんは土下座した。


 う、うわぁ……生の土下座を見るのは二回目だけどやっぱり慣れないものねぇ……。


「なるほど、分かった。処遇は後ほど送る。まずは彼女にその曰く付きの物を差し上げたまえ」


「かしこまりました」


 そう言うと、瞬冷さんはその場から消えた。


「彼はのぉう……真面目で良い奴なんじゃが、今回の事件の様に怒ると物凄い圧を出してしまう癖があるんじゃ。もちろん、仲間だけにな。じゃから、あやつの事、許してやってくれんか?」


 まあ、こういう感じの経緯ならば全然いいわね。


「分かりました。許します」


「おお、ありがたい」


「百取様、こちらになります」


 いつの間にか百取さんのそばで(ひざまず)いていた瞬冷さんが手に持っていた物を差し出して来た。


「これか」


「はい」


「ルリカ君、受け取りたまえ」


「はっ、はいっ!」


 私は瞬冷さんの手からその曰く付きの物を受け取る。


 見た目は、シルクハットに近い帽子だった。


「これを被せれば、戻る……と、私も部下が」


「では、イイジマに被せてみるとするかの」


「それじゃイイジマ、被らせるよ?」


「お、お願いします!」


 そうして私は、イイジマに帽子を被せたのだった。


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