何なのこれ……? 車……? なにそれ……?
「取り敢えず、イイジマと一緒に付いて来て!」
「わ、分かったわ!」
マンドラゴラの禁書に夢中のイイジマの手を取って、リーファの元へ歩いて行く。
……今私、イイジマの手を繋いでいるんだ……。
そういえば、何気に握った事無かったわね……。
へぇ……こんな感じなんだ……。
「何惚気てるのよ」
「のっ、のののっ、惚気てなんか無いわ!」
「嘘言わないで、私は心が読めるのよ? そんくらいお見通しよ」
「あぅぅ……」
どうしよ、恥ずかしすぎるわ……。
「え、イライザさんは心が読めるんですか?」
「いやあんたは知って――ないのか。そうよ、私は他人の心が読めるの」
「凄いですね! 一体どうやるんですか!?」
「いや、ちょ」
「どう、やるん、ですか!?」
す、凄い……イライザがあそこまで押されるなんて……!
「それはーそのー、わ、私持ってる能力でちょちょいのちょいって感じよ」
「その能力って、俺でも習得出来ますか!?」
「残念だけど出来ないわよ」
「そ、そうですか……」
イイジマが見るからにションボリとした顔を浮かべる。
「でっ、でも、前のあんたはこの能力無しに心を読んでたわよ」
「え?」
「だから、まあ記憶を取り戻したら、何とかなるんじゃないのかしら?」
「! そうなんですね! 良かったー!」
……イライザ……案外良い人じゃない。
「案外は余計よ案外は」
「あっ」
聞かれてた。
そんなこんなで、私達はリーファの後を追った。
「遅いわよ!」
「ごめんリーファ」
「まあ良いわ。それより……これをご覧なさい!」
そう言ってリーファが手を向けたのは……
「……何これ?」
よく分からない物だった。
なんか、馬車の車輪みたいなのが付いているけど、肝心の馬がいないし……あ、もしかして馬が逃げちゃったのかしら?
「どうやら違うみたいよ」
「え?」
イライザが髪をファサッと後ろにやった。
「これは車、という乗り物らしいわ。何でも、馬無しで、しかも馬車より簡単に操縦が出来るらしいわ」
「ちょっ!? 何で知ってるのよ!?」
リーファがイライザに近付いてそう言った。
「貴方の心を読んだのよ」
「ぐふっ……わ、私のセリフゥ〜!」
地団駄を踏みながら涙目になるリーファ。
「まあまあ落ち着いて、これで来てくれてありがとう。お陰で王都から出られるわ」
「ル……ルリカ……やっぱり私の友人は貴方だけよぉ〜!」
「あれ? イイジマはどうしたの?」
イライザがリーファの揚げ足を取る。
「ちょっとイライザ!」
「イイジマは私の恋人だから、友人じゃないわよ?」
うん、そんな事無いわよ!?
「さあ早く乗って」
リーファの一言で皆んなが車に乗る。
因みに、イイジマは私の車と一緒になった。
「操縦の仕方は簡単よ、そ右のペダルで進んで左ので止まるわ。そして目の前にある円形のやつを握って右に傾ければ右に、左に傾ければ左に曲がるわ。あと、その左にあるレバーで後ろに行ったり色々出来るわ。あと目の前のメーターは現在の速度を表しているわ、因みに時速よ。最後に、その円形のやつ……ハンドルって名前なんだけど、その横に赤いボタンがあるでしょ? それは――」
『ドォォォォォォォン!』
リーファの言葉を遮って、背後で爆発が起きた。
「な、何!?」
そこには、
「……逃がさない……」
あの全身黒い服を着た女性が浮いていて、長い何かを構えていた。
多分、前にイイジマが言っていた銃の別バージョンね!
「み、皆んな急いでその赤いボタンを押して!」
「わ、分かったわ! えい!」
ポチッと効果音の様な音が鳴った後……
『ビュフィォォォォオオオオオ!』
車の背後から筒が出て来て、イイジマのジェットパックの様に物凄い勢いで前に進み始めた。
「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああ!」」
建物を突き破り、遂に門の隣にある壁を突き破った。
え、あの壁まで相当距離があったのだと思うのだけれど……と、とんでもないスピードでここまで来たわね……。
「良かった、無事だったわね」
ギュオオンという音と共にリーファが私の横に来た。
「こ、このボタンなんなの!?」
「3秒だけ音速で走れるボタンよ」
何よそのボタン!?
「ただ、使ったら流石に冷却時間が必要だわ。じゃないとエンジンが燃えちゃうわ」
「……エンジンって何?」
「あーえーと、この車の動力源よ」
「へー」
それが燃えちゃったら確かに大変ね!
「ルリカ……」
「ルリカお姉ちゃん!」
「あ、ニル! レカ!」
良かった、二人共無事な様ね。
「ちょっと、私をを忘れて貰っちゃ困るわよ」
イライザもいつの間にか横にいた。
「忘れてないわよ。ただ貴方なら絶対来れるって思ってたから心配してなかっただけよ」
「ふふっ、口が上手いわねぇー」
「それで、目的地は私の街よね!?」
「そうよ!」
「ならば行きましょう! いざ、ベーナダンジョンへ!」
そうして私達は、リーファの街があるベーナダンジョンへと車を走らせるのだった。
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