初期化裏技……に近い裏技
「行くぞ!」
俺はそう叫んで駆け出し、すぐに左右にステップを踏んだ。
「えっ、えいっ!」
イライザも同じ様にスタップを踏み、俺の動きを完璧に真似してくれていた。
「おいぃぃ……僕らはまだ確かめ合ってるんだよおぉぉぉおおお!」
リタが俺に対して今度はパンチとキックを両方繰り出して来たが、
「よっ」
裏技をやる為の邪魔にならない具合に避ける。
「チッ!」
そしてすぐに床に手を付き、片手で数回跳ねる。
「う、うわっ!?」
少し危ないながらも、イライザは数回跳ねれていた。
「【虚無!】」
目の前にあの闇が現れたが、ちょうどクルクルと回らなければならなかったので、バレエをする様にクルクルと回って回避した。
「ちょぉっ!? そんな動きまでするの!? ……え、えぇい!」
おおっ、意外と上手く出来てるじゃないか。
どうやらイライザにはバレエの才能があったらしい。
「!」
その時、ヴァイナが動いたのが見えた。
そして、口の周りに手を当てた。
何かを、叫ぼうとしている……?
「リタちゃ〜ん☆! 気を付けて〜☆! 彼がやろうとしているのは〜☆! 世界の不備よぉ〜☆!」
「!?」
アイツッ、まさか裏技の存在を知っている!?
くそ、それは完全に予想してなかった!
「イライザ! ペース上げるぞ!」
「分かったわ!」
「させるかぁ!」
再度黒い闇が現れたが、それを普通に避け、ジャンプしたり、バク転したりしまくった。
そして――
「次でラストだ! 真似しろ!」
俺はそう言って特大のジャンプをした。
「え、えぇぇぇい!」
イライザもジャンプし、スタッと着地する。
「どうだ?」
「どうだって言われても、何が何だか……ん?」
イライザ手をにぎにぎする。
「何か、体調が良くなった様な……もしかして!」
「ああ、そういう事だ」
俺がそう言うとイライザはパァッと笑顔になって、リタに右手を向けた。
そして、こう言った。
「貴方はもう【虚無】と【無】を使えないわ」
「……はぁ!?」
リタはすぐに「【無】!」と唱えたが、どうやら発動しなかった様でチッと舌打ちをした。
「お前ぇ……どうやって……あぁ……世界の不備でかぁ……でもぉ……どうやってぇ……?」
「今俺らがやったのは、所謂初期化裏技、に近いものだ。今日が始まった時の状態に戻す。そういう裏技だ」
ぶっちゃけ、使う事は無いと思っていた。
何せ俺はインワドではずーっと裏技で最強だったから、やる必要性自体が無かったのだ。
「まあ、これで形勢逆転、ってやつかな?」
「くぅっ……!」
リタは大きく飛び退き、大司教達の元へ近付いた。
流石に、今の状態で一人でいるのは不利だと分かったのだろう。
「リタ、精神とかは大丈夫なのか?」
「異常な人にそれを聞いても分かるわけが無いだろう。ヴァイナ、回復してやってくれたまえ」
「はぁ〜い☆ 【大回復】☆」
ヴァイナがそう唱えると、リタの表情がスゥーッと元通りになり、その場にストンと座った。
「うぅ……大聖堂をめちゃくちゃにしちゃいましたぁ……」
そう言って体育座りをして顔を埋めてしまった。
「気にするな、むしろああしなければならなかった」
「そうですよ、貴方が気にする必要はないわ」
「うぁぁ……」
リタは更に顔を埋めた。
「あらぁ〜☆ どうします〜☆?」
「仕方ない、リタ抜きで戦うしかないだろう」
そう言ってリタを除く大司教達は左右に両手をバッと突き出した。
……何をする気だ?
「ふんっ!」
そう言って彼らは回転し出した。
……まさか!
「クソッ!」
俺は急いで銃を発砲する。
「甘いですよ」
ビラナがそう言って強烈な風を吹かせ、弾丸の勢いを殺した。
そして……
「ふぅ、確かに、力が上がった気がするな」
「気がするんじゃなくて〜☆ 実際そうなんですよぉ〜☆」
そう、今彼らがやっていたのは、ステータス2倍裏技だ。
ただ、あの裏技は回転するだけで良い代わりに、回転する速度や足の位置をミスるとダメな裏技だ。
それを全員でやり切るとは……。
多分相当練習したんだろう。
っと、そんな事を考えている場合では無かった。
「さあ行くぞぉ逸脱者!」
こうして、俺らと強くなった大司教達の戦いが幕を開けた。
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