垢抜けすぎじゃね?
「……ばぐ?」
リコがそう呟く。
「そう、裏技」
「何だそれ?」
「うーん、なんて言うんだろう……世界の欠陥、不備とかじゃないかな?」
「世界の欠陥だぁ? 何言ってる?」
「まあ見てなよ」
そう言ってラールは壁の方に行って、グルグルと腕を回し始めた。
「!」
あれは! あの動きは!
「よっ」
ラールが手を壁に突き刺すと……
「……は?」
ラールの右腕の周りが波の様に蠢いた。
「何が起きてんだ!?」
「これが裏技だよ」
そう、あれは体の一部を貫通させられる裏技だ。
何で知ってる……?
俺はこの世界に来てからやった事無いぞ?
「君はこれが何か分かってるんじゃないの? イイジマ君?」
「……イイジマとは、誰のことでしょうか?」
とぼけるしかない。
ここまで知られてたら、もうそれくらいしか出来ない。
「おぉーっと、とぼけるか。まあ良いや。どうやら僕の事覚えて無い様だね」
「?」
えっ、どこかで会ったか?
そんなバカな。俺はインワドのNPCをフル暗記したはずだぞ!?
「ふふー、分からないかー。教えてあげちゃう」
背骨を曲げて片足ずつピョンピョンと跳ねる様に近付いて来て、俺の耳元でこう囁いた。
「フィーチャリット・バグーン」
「!」
俺は、その名前を知っていた。
が、
「……本当に?」
「そうそう」
見た目が全く違うのだ。
まず現在の見た目を言おう。
オレンジ色のファサッとした髪、黒いコートを袖に腕を通さずに着ており、肩掛け状態。
そして明るくクルリンとした顔に、茶色のザラザラとしている服。
そして黒くてシュッとしたズボンと靴。
そして前のフィーチャリットの服装。
まず黒髪! 黒縁眼鏡! くっそ伸びた前髪! 猫背! 柄が合ってなくてぶっちゃけダサい服! そしていつも何かの本を大事そうに抱えてる!
……本当に同一人物ですか?
「いやー、俺垢抜けたよね?」
「……抜けすぎでは?」
「そう言う君も敬語なんて使っちゃってー! そういうキャラじゃ無いくせにー!」
笑いながら一定間隔で俺の背中をドンドンと叩いてくる。
「……」
うるせー! ここではそういうキャラで通してんだよ!
「んでまあ彼も俺の事を思い出してくれた様だし、君らも今の裏技という力について少し分かったでしょ?」
「……まあ多少はな」
リコはそう言ってフンッとそっぽを向いてしまった。
「よしよし、それじゃあ計画を話すよー。と言っても、これは仮の計画。本当の計画はもう少し練らないと、彼らには裏技があっても勝てないだろうからねぇー」
そう言ってフィーチャリットは計画を話し始めた。
とは言っても、かなりシンプル。
まず、世界に散らばっている反対派の人達をこの王都に集めて、街の端に円状に配置する。
そしてらその円が狭まっていく様に教会に攻め込み、まあ俺の使っている裏技何かをみんなで使って教皇を殺る。
と言った感じの内容。
本当にシンプルだなぁー。
「もう一度言うけど、仮だからね?」
俺をチラッと見てそう言って来た。
お前、心でも読めるのか?
「これにもう少し修正とか、新しいアイデアとか入れたらそれが真の計画になるって感じかな」
そう言ってフィーチャリットが少し背筋を正す。
「さてと、僕からの皆んなに対する話は以じょ――」
「ちょっと待て」
リコがフィーチャリットの言葉を遮る。
「さっきあんたがやった裏技、あれはそう簡単に使えるもんなのか? 命の危険は? あるとしたらどれくらいの危険度何だ? そういうのをちゃんと言え。昔っからお前はほんと……
「はいはい、まあちゃんと説明するからそうカッカしないで」
そしてフィーチャリットは自分の知っている裏技について話し始めた。
とはいえ、そこまでの量は無かった。
5、6個程だけだ。
「そして、これ以外の裏技全部を知ってるのが、何を隠そう彼なんだ!」
だからやめろってそれ。
「知りません」
当然白を切る。
「知らないってよ」
「ただ彼が嘘をついているだけだよ」
「はぁー、ヴェリトが迷惑してるんだ。さっさと帰れ帰れ」
「昔の仲間に言う事かいそれ……?」
フィーチャリットは最後に、と俺の所へ来た。
「後でここに来て」
周りにバレない様に小さな紙を渡された。
恐らく地図だろう。
「それじゃあ皆んな、また今度」
そう言ってフィーチャリットは去って行った。
「……あんた、逸脱者なの?」
リコが俺にそう聞いて来た。
「まさか、そんな訳がないじゃないですか。誤解ですよ」
ここでそうだというメリットは無い。
言えば関係が悪くなるかもしれないしな。
「そうだよな。ったく、今度会ったらあいつの顔面に一発ぶち込んでやる」
そう言ってリコは部屋を出て行ってしまった。
恐らく、あの酒場に行くのだろう。
「それじゃあ、今日は皆んな解散だ。出来れば少しだけ調査して帰ってくれ。あと、覚悟を決めろよ。お前らが待ち望んだ、教会をボコせる日が近づいて来てるんだ」
ギリッダはそう言って部屋から出て行った。
「では行きましょう」
そして俺らは、その渡された地図に描かれている目的地へと向かった。
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