【SIDE 禁書図書館】退屈凌ぎ
「はぁーあぁ」
イイジマが出て行ったゴールを見て、イライザはそう言った。
「行っちゃった……」
何だかんだ楽しかったなと思う。
まあ、難易度を上げたはずなのに前のやつより早くクリアされてしまった事は気にしない。
「よいしょ」
右手を動かして、本棚の位置を元に戻す。
この図書館内でならイライザは文字通り〝何でも〟出来るので、一秒未満で終わる。
「はぁー本当に退屈」
退屈しない、という事をイライザはやる事が出来るのだが、やらない。
そんな事をしても本当の退屈凌ぎの様に満足出来ないからだ。
ここでまた満足出来る様にする、という風にも出来るが、イライザは面倒くさがりなのでやらない。
よって、退屈しない様にする、というのをしなかった。
「でも……やっぱりどうにかはしたいわね……」
そこでイライザは、自分の分身を作った。
それを透明にした後、自分の意思で操作できる様にした。
これで、イライザは時々外の世界を見て回るのだ。
イイジマが出て行った場所から、自分の分身を行かせる。
「おぉ」
イライザがそう声を出す。
まあ無理もない。出た瞬間目の前に床があったからだ。
「なるほど、今回の出入り口は天井なのねー……」
イライザの分身は、〝天井に〟立っていた。
「それじゃあ、外に出てみるとしましょうか」
扉に向かって歩いて、そのまま貫通する。
「よっと」
壁に立っていたイライザは、クルッと90°回転して床に足をつける。
「うわー、すっごい綺麗な所ね」
天井を見上げると、美術館に飾られている様な絵が描かれていた。
「やっぱ人族って芸術とかに関しては凄いよね……まあ、小人族には敵わないけれど」
そう言ってイライザは教会ないをプラプラと歩く。
人とぶつかっても、スルーっとその人が貫通していく。
イライザの分身は、言わば幽霊みたいな状態なのだ。
しかも、祓えない。
「他にも色々見ちゃおー」
ルンルンスキップをしながら階段を15段飛ばししながら登り、一つの場所に辿り着く。
「えーと……会議室? おもしろそーっ! 入ってみよー!」
スルーッと扉を貫通して中に入る。
「うわ暗っ!」
現在、会議が行われていないので当たり前であるのだが、イライザはそれに気付かない。
「ちょっと座ってみましょー」
椅子に座り、腰に手を当てて
「儂がここで一番偉い者なり〜!」
と言ったが、その声は暗闇に吸い込まれていった。
「……他の場所に行きましょ」
何してるんだろう自分と思いつつ、イライザは会議室を出た。
「あれ? あっちも会議室がある」
向かい側に、『会議室(教皇用)』と書かれた部屋があった。
「まあ、こっちも入ってみましょ」
イライザはその会議室に入る。
(あっ! 誰かいる!)
イライザはそう思いながら近づいてみる。
「ですから、逸脱者探しも大事ではありますが、やはり反対派の方にも力を――」
「馬鹿を言うなビラナ! 逸脱者を探して殺さねば、我々には未来が無いんだぞ!」
「落ち着きなさいギガスト。ビラナの言う事にも一理あるわ。現にリタはその反対派に拉致されてた訳だし……」
「ならばさっさと誘拐したリトヴェという奴を捕まえれば良い! そしたら俺が直々にそいつから情報を吐かせてやる」
(リトヴェって……イイジマの事よね……)
イイジマの心を読んだイライザはそれが分かった。
「それは無理だと思うぞ」
「な、何故だラースレ!?」
「そいつはお面を着けていたのだろう? つまり素顔は分からない訳だ。そして名前も九分九厘偽名。情報は無いに等しいぞ。見つけるにしても、やはり時間が足りない。逸脱者を殺せる期間はもうあまり残っていないぞ」
「くっ……」
赤髪の男がドン、と机を叩いた事にイライザは少しだけビックリする。
「取り敢えず、私がそのリトヴェについて調べよう」
「きょ、教皇様直々に!?」
「私がやるのが、一番効率が良いだろうしね。それに……私の大事な大司教の一人に手を出したんだ。少しだけ怒っているよ」
教皇がとんでもない量の殺気を出した。
「「「「「っ……!」」」」」
大司教達の顔色が少し青くなっている。
因みにイライザは何ともなかった。
「それじゃあ、今日はこれにて解散にしよう。では」
教皇がそう言って消えると、皆んな出入り口に向かって行き、外に出た。
「……私も外に出るか」
少し、面白い事になってきたかも、と思いながら、イライザはニヒヒヒッと笑った。
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