右手にドラゴンがいますが、気にせず快適な空の旅をお楽しみ下さい
「さ、寒ぃ」
上に行ったら寒くなるというのは知っていたが、ここまで寒いとは思わなかった。
今使ってるこの浮遊裏技は知ってたけどやってこなかったやつだからな……やっとくんだった……。
「凍る、寒さで凍る」
「もうちょっと下に降りる事は出来ないの?」
歯をガチガチしながらルリカそう質問してくる。
「やっても良いが長旅になるぞ」
「な、ならやめとくわ」
「少し下に降りて休憩しますか?」
「いや、もうちょい進もう、流石に移動距離が短すぎる」
「分かりました」
なんでリレオは平気な顔してるんだ……結構寒いぞ……?
「魔族にあまり温度は関係ないのです。まあ全く感じないという訳ではありませんが」
俺の顔を見たリレオがそう言った。
「そうか、魔族って基本的に人間よりスペック良いよな」
「いえいえ、人間に劣っている部分もありますよ」
「例えば?」
「そうですねぇ……繁殖しにくいという部分があります」
「ぶふぅ!?」
ルリカが盛大に水を口からぶちまける。
「どうした?」
「い、いえ何も……」
めっちゃ動揺してるが……まあいいか。
「そうか、吹き出した水を拭いといてくれ」
「わ、分かってるわ」
「話を戻して……何で繁殖しにくいんだ?」
「至って単純な話です……女性の産まれる確率が低いのです」
「あぁー……」
確かに女がいないと繁殖出来ないな……。
「魔法で女を産ませる事とかって出来ないのか?」
「未だ、その様な魔法は見つかっていません」
「そうか……嫁さん、見つかるといいな」
「はっはっは! ええ、見つかると良いですねぇ」
馬車を走らせ、30分程経つ。
「そ、そろそろ下に降りて休憩しよう……」
「カチーン」
「ほら、ルリカ凍ってるし」
「分かりました」
「衝撃に備えろよー」
裏技を解除する。
この裏技は解除した時、ゆっくり落ちていってくれるので、落下ダメとかの心配は無い。
ドサッと地面に落ちる。
「いやはや、この儀式は素晴らしいですな」
「俺にはよく分からないが、馬車単位での距離で三日短縮するんだし、あんたらには相当ありがたいんだろうな」
「ええ、本当にありがとうございます」
リレオはそう言ってペコリと頭を下げた。
「いぃいぃ、気にすんな。ところで後どんくらいなんだ?」
「ざっと、四日程ですかな」
「意外とかかるな……」
「五国またがりますからね……先程の儀式をやってもこれくらいです」
「分かった、ありがとう」
リレオの肩をポンと叩いてルリカの元へ行く。
「大丈夫かー?」
「バキンッ(氷の壊れる音)い、生きてるわ……」
「うおぉ……氷を纏って無い筈なのに割れる音がした……」
「何よそれ……で? 後どれくらいのかかるの?」
「ざっと四日程だそうだ」
「四日……やっぱり浮遊裏技を使ってもそれくらいかかるのね……」
「しゃーないしゃーない、ほら、もう少ししたら出るからしっかり休んどけー」
「分かったわ、貴方も休んどきなさい」
「言われなくとも」
地面に寝っ転がって、空を見上げる。
……綺麗だなぁー。
空気をスゥーっと吸い込んで、リレオに
「よし! そろそろ行こう!」
と言う。
「分かりました、では、儀式の方を……」
また馬車浮遊裏技をして、浮かせる。
「よーし、レッツゴー!」
そう言った瞬間だった。
『ガオオオオオ!!』
右側な空から鳴き声が聞こえた。
「……察したが……今のは、なんだ?」
「恐らく、ドラゴンの鳴き声かと思います」
ド ラ ゴ ン 来やがったぁー!
魔物の最強種やないかい!
チラッと見てみると緑色のゴタゴタした体を持つドラゴンがこっちに向かってきていた。
「あー、これ逃げられるか?」
「この速度ですと……少々無理そうですね……」
「マジかよ!」
今の状態でドラゴンと戦ったら間違いなく負ける!
だけど……やるっきゃねぇ!
「馬車走らせといてくれ、倒す」
「えぇ!? た、倒せるのですか?」
「多分な」
「では……頼みましたよ」
「ああ」
馬車の屋根の上に登る。
うおっ、意外と足場不安定だな……。
腰に力を入れて銃をベルトから引き抜く。
そしてドラゴンに照準を合わせ、【氷雨】を弾に発動する。
エイムアシスト裏技をしている時間は……無さそうだな。
「これで……どうだっ!?」
引き金を引くと足場が不安定なのも相まって後ろ側へ転ぶ。
「危っぶね!」
もう少しで落ちるところだった。
すぐに立ち上がってドラゴンを見る。
どうやら右手が凍っている様だ。
弾に【神速】を発動し、再度狙いを付けて発砲した。
『ギャオオォォォォォ!!』
ドラゴンの右手砕かれていた。
……1回目は頭狙ったんだけどな……。
ま、2回目は狙い通り当てられたから良いか。
ドラゴンは吠えながらそのままどこかへ飛び去った。
「ふぃー!」
馬車の下側に戻り、安堵する。
「ど、どうやって撃退したのです!?」
「あー? さっきのデカい音はドラゴンの嫌がる音なんだ、だから鳴らした」
「なるほどぉ……」
当たり前だが嘘だ。
銃が魔族の世界にあるか分からないのでそうした。
銃を知らない方が良いからな。
「それじゃあ俺は少し休むよ」
そう言って、寒い中何とか寝るのだった――。
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