サンタクロースのソリの正体って浮かんだ馬車なんだよね
「うぅ〜ん?」
いつから世界は逆さまになったんだ?
あ、いや、俺が逆さまなだけか。
「起きろールリカー」
頰をペチペチする。
へっへっへ……昨日の仕返しだ……。
「んぅん……何よ……」
……グハッ! 可愛さダメージエグッ!
「どうしたのイイジマ? いきなり後ろに吹っ飛んで」
「朝一にとんでもない攻撃を食らったんだ」
「何よそれ、ほら今日は魔族領に行くんでしょ? さっさと行きましょ」
「あ、ああ……」
立ち上がって出かける準備を整える。
銃をベルトに挟み、バックを背負って、水道水でちょっと顔を洗う。
「ふぅー」
「それじゃあ行きましょ、イイジマ」
「あーちょと待て」
一応忘れ物がないかを確認する。
「忘れ物は……無いな、んじゃ今度こそ行こうか」
部屋を出て宿から出ようとする。
「今日も早起きだね」
その一言で動きを止めた。
「おばさんも早起きだな」
「早起きは三文の徳さ、今日もどこかへ行くのかい?」
「ちょっと遠くへね。あぁそうだこれ」
バックの外ポケットから頼まれていた薬草を取り出す。
「おや、もう取って来たのかい?」
「納豆のレシピを早く知りたくてな」
「分かった、今紙に書いてくるから待ってな」
おばさんは奥へと行き、カリカリと何かを書く音が聞こえた。
「ほら、これだ」
奥から出てきたおばさんはレシピの紙を渡して来た。
「ありがと、また機会があったら来るよ」
「私も来ます」
「…………そうかい」
おばさんはまた奥に行って、そのまま出てこなかった。
「あっイイジマ! 早く行かないと!」
「おおっとそうだった、行こう!」
宿の扉を開けて走る。
一応あの魔族に怪しまれない為にテレポート裏技はせずに歩いて行った。
「おや、時間通りですね」
「はぁ、はぁ、なんとかな」
「少し休憩しますか?」
「大丈夫だ」
「では行きましょう」
そう言って魔族はスタスタと歩き出して、ピタッと止まる。
「ああすみません、自己紹介が遅れました。私はリレオ・レペッツォと言います」
「俺はイイジマだ、彼女はルリカ、よろしく」
「こちらこそよろしくお願いいたします」
そう言って朝日が少し差して来た町から出た。
『パッカパッカパッカパッカ』
「…………馬車があるなら言えよ……」
「申し訳ありません、普通長旅は馬車で移動するものなので知っているかと……」
いやまあ確かに普通はそうだろうな。
でも俺らは裏技で一っ飛びしてたからなぁー。
「あ、そうだ」
「? どうされましたイイジマさん?」
「この馬車浮かせちゃダメか?」
「……はい?」
「この馬車浮かせれば障害物とか無視できるだろ?」
「それはまあそうですが……そんなのは不可能ですよ?」
「不可能を可能にする方法がある……と言ったら?」
「!? 少し気になりますね……」
「まず――」
説明しかけたところで、ルリカが俺の袖を引っ張る。
「ちょ、なんだよ?」
「彼に裏技の事を教えちゃって良いの!?」
「あー……確かにな……」
裏技を教えたら俺らが相手側を倒した時、裏技で俺を殺しに来るかもしれない……。
……いや、無理じゃね?
「ルリカ、俺は絶対に俺らが不利になる様な裏技は教えない。
攻撃力を上げるとかHP無限にするとかな。
んで今から教えるのはそういうのに該当しないヤツだし、元から裏技の存在を教えはしない。
だから安心しろ」
「……なら良いわ」
ルリカから解放された俺はリレオの元へと戻り、説明をする。
「なんと、馬車を浮遊させる儀式があるとは……」
「俺の家に代々伝わる方法でな……俺のじいさんはそれで世界を渡り大商人になった」
「凄いですね……是非、教えて頂けないでしょうか?」
「もちろん良いが……口外するなよ?」
「魔神に誓っていたしません」
わーお、魔族の場合だと魔神に誓ってなのね……。
「んじゃ、始めるか」
馬車を止めてもらい、馬達の前へ行く。
そして――
「ハグハグハグハグ!!」
「「!?」」
草を、食べ始めた。
「イイジマさん!?」
「イイジマ! お腹壊すわよ!?」
「ハグハグ……ペッ」
口で噛みまくった草を手の上に出す。
あぁー口の中から土の味がするー!
後で水貰お。
吐き出した草を上にぶん投げる。
そして草が落ちてくる前に服を脱ぎ、一本でも良いから取る。
取ったら服を着て、先頭の馬に跨る。
そして草を頭の上に乗せ、そのまま手を使って後ろにグルンと回りながら跳ぶ。
そして草を右足で浮かせ、左足で自分の手に向かって蹴る。
それをキャッチし、回転しつつ馬車にベチンと叩きつける。
「……出来た……筈だ」
「い、今ので?」
ルリカがそう言った途端馬車が浮きだす。
「おぉっ……!」
リレオの目が見開かれる。
「な、浮いたろ?」
「いやはや、貴方を仲間に出来て本当に良かった……敵にいたらと思うとヒヤヒヤします」
「よせやい照れる」
あとなんか馬を操縦してるリレオが白髭生やしたおじさんだからか……これがサンタクロースの正体な気がしてきた。
浮いた馬車に乗る白髭魔族が。
そんな訳無いんだけど。
「ルリカ水をくれ」
「あっ、はい」
「ありがと」
水を口に入れてぐちゅぐちゅして吐き出す。
あぁー土の味がほぼしなくなった! 水って最高!
リレオの肩に手を置き、
「これでかなりの時短になるか?」
と尋ねる。
「ええ、3日程早くなります」
「そんなにか!?」
馬車での三日分って相当な距離じゃないか?
「それほどこれは凄い事なのですよ」
リレオはそう言って空を眺めた。
「空が、凄く近いですね……」
「まあそのせいでクソ寒いけどな」
「ははは、そうですね」
リレオはそう言って馬を操縦するのだった――。
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