歓迎会、あざす!
「そろそろ時間か……」
リコが店の壁に掛かられていた時計を見てそう言う。
「そうですね、そろそろ行かなければならない時間でしょう」
「はぁー……おじさん、酔い覚め水頂戴」
「あいよ」
その後、おじさんが謎の水色がかった水を出し、それをリコが一気飲みした。
「うっ……くぅー! 効くねぇー!」
「んじゃ、お勘定かい?」
「ああ」
「ん」
おじさんが紙にサラサラっと俺らが頼んだ飲み物とお会計を書き、リコに渡す。
「ほい」
「……あの、何故その紙を私に?」
「払え」
なっ、何て横暴なっ……!
「こっ、こういうものは普通、割り勘、というやつでは……?」
「新人だろ? 払え」
「えぇ……」
リコは紙を俺に押し付けてスタスタと店から出て行ってしまった。
「はっはっは、まあ彼女もそういう人だこらね。ああ、嫌いにはならないでやってくれ。根は本当に良い子なんだ」
「……」
どうだか。
取り敢えず、俺はお金を払い、店を出た。
「遅い」
「……待っていてくれたのですか?」
「どーせ道分かんないだろ?」
覚えてるんだが……まあ、言わないどこう。
「ありがとうございます。助かります」
「ふんっ。付いて来な」
リコに付いて行き、あの拠点の前に着く。
「んじゃ入るぞ」
リコが扉を開けて、奥の方へと行った。
「おっ! 来たなぁー!」
ギリッダが俺の肩に腕を回して
「お前ぇらぁー! ヴェリト達が来たぞぉー!」
と叫んだ。
「あっ、来たんですね……」
リィナがチョコンと部屋の出入り口の側から顔を出してそう言った。
「申し訳ありません、遅れてしまったでしょうか?」
「いっ、いえいえ! 時間丁度です……!」
そう言うと、リィナはテコテコと部屋の奥へと走って行ってしまった。
取り敢えず、歓迎会をしてくれている訳だし楽しまないとな。
「おぉ来たか新入り! これでも飲むのだ! ガハハハハハハ!」
そう言って手渡されたのは恐らくリキュール。
しかも何も割ってないやつ。
おいおい、これを直で行けと?
無理だわ。
「おいバカジャスト。そんなの飲ませるなよ」
リコが俺からリキュールを取る。
「私に飲ませろ」
グイッとリコが瓶を口に当てて飲み始める。
「ガハハハハハハ! 良いぞ良いぞぉ!」
ヤバイ、こいつらヤバイよ……。
ルリカ達も引いてるのを感じる……。
「どーもーヴェリト君」
レイーナが背後から話しかけて来た。
身長がバカデカい。
2mくらいありそうだ。
「先程ぶりですね」
「ええ、ギリッダが突然君の歓迎会をやるって言うから少し驚いたわー」
「おや? 貴方の時はされなかったのですか?」
「ええ、何でなのかしら……? 君が少し羨ましいわー」
そう言ってクルクルと回って俺の前は来る。
「まあ、歓迎するわ。ヴェリト君」
「こちらこそ、お世話になります。レイーナさん」
「呼び捨てで構わないわよ」
「それでは、レ、レイーナ……」
「うんうん、それで良いわ」
レイーナはまたクルクルと回って移動する。
いやー、凄い綺麗だな。
「やあ。ヴェリト……だっけ? よろしく。先程も言ったけど、アルセー・トビットだ」
「これはこれは、ご丁寧にありがとうございます」
アルセーが差し出して来た手を握り、握手をする。
「俺もリコみたいに冒険者をやっててさ、君もやってるの?」
「ええ、一応は」
「ランクは今いくつ?」
「Dですね」
「おぉ、なら今度一緒にクエストでも……あぁ、ごめん。そんな格好してるって事は、あんまり素性を知られたくない感じかな?」
「察してくださりありがとうございます。我々は今アルカニット教会から追われている身。クエストをやるのも中々難しいのです」
「そうかぁー。じゃあ、終わらなくなったら一緒にやろうよ」
「ええ、その時には是非」
俺はそう言ってペコリと頭を下げた。
さてと、あと話してないのはリュークとレーダスとゲリトか。
「「……」」
うわ、ゲリト以外の人達からは話しかけるなオーラが出てる……。
でもゲリトの言ってる事分からないしなぁ……。
仕方ない、三人と話すのはまた今度にしよう。
「よぉーし! それじゃあ新入り達! 何か一言ずつ頼む!」
ギリッダがマイクに見立てた空のワインボトルを持たせてくる。
「えっと……私達をこのアルカニット教会反対派に参加させて頂き、誠にありがとうございます。皆様のご期待に応えるよう誠心誠意頑張りますので、よろしくお願いいたします」
パチパチパチと拍手が起きる。
「それじゃあ次は、君だ! 頼むぜ!」
ギリッダがワインボトルをルリカに渡す。
「え、えっと……わ、私も同じく、皆様の力に添えられる様、奮闘して参りますので、よろしくお願いします」
拍手が起こるが、皆んなの顔は「ほぉ、なるほど」と言った様な顔だった。
ルリカの声を聞くのは初めてだったから、こんな声だったのかと思ったのだろう。
「次は君だ!」
今度はニルに渡された。
「えっと……アルカニット教会反対派の活動に……全力で取り組みますので……よろしくお願いします……」
ルリカと同じ様な反応が起こる。
さてと、次だが……
「んじゃ、最後は君だな。頼むぜ」
レカがワインボトルも持つ。
俺はすかさず【テレパシー】を発動した。
『俺の言葉通りに言うんだ』
こくり、とレカが頷いた。
『アルカニット教会反対派の皆様の為に精一杯頑張りますので、よろしくお願いします』
「ア、アルカニット教会反対派の皆様の為に、せ、精一杯頑張りますので、よろしくお願いします!」
セ、セーフ……。
頭がクラッとするが、気合いで耐える。
MPが0になったら気絶してしまうのだが、ギリギリ【MP自動回復】のお陰でMPが1になったので気絶しなかった。
とはいえ、かなりキツイ。
「それじゃ、皆んな最後に拍手だ!」
パチパチパチパチと大きめな拍手が起きて、俺はそろそろ倒れそうだった。
「よぉーし! じゃあこれ飲めぇー!」
ジャストが俺の方にウォッカの瓶を突っ込み飲ませる。
「あぁっ! おいジャスト! このバカッ! コイツは未成ね――」
「あひゅぅ〜」
俺はバタンと倒れて、気絶してしまった。
あと、めちゃくちゃ喉が痛くなった。
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