王都
「着きやしたで」
「ありがとな」
「ありがとうございまーす」
「ありがとー!」
「ありがとう……」
「……ご達者で」
「そっちもな」
俺らはあれから数日間馬車で旅をし、目的地であるアルカニット教会の本部である、リーチャニット大聖堂がある、王都ロザシリナに来た。
そう、王都だ。
つまり戻って来た訳だ。
最初の街に。
「戻って来たな……」
「そうね……」
懐かしい気分を思い出しながら、ここからの計画を話す。
「よし、まず俺らはこの街に入ったら、絶対に表には出ちゃダメだ」
「そうね。教会に勘付かれる可能性が高くなるものね」
「そうだ。まあ、基本的には【透明化】をやりつつ、教会の情報を集めまくるって感じだ」
「大変な……作業になりそう……」
「でも、やるしかないわ」
「ああ。んじゃ、行くぞ」
「おー!」
俺らはもちろん真正面から入るなんて事はせず、【透明化】を発動してから、手を繋ぎつつ壁を壁貫通裏技で抜け、路地裏へと入った。
「さてと、まずどうするか……」
お面を付けているからそう簡単に俺らだとバレない筈だが、流石にずっとは無理だ。
まあ良くて一ヶ月とかじゃないか?
あいつらの情報網ヤバイし本当にそんくらいだろう。
「まずはやっぱり……寝泊まり出来る場所を……探す事……じゃない……?」
「そうなんだが、そんな場所あるか? ここ王都だぞ? 誰も住んでない家とかないだろ?」
「……あるわ」
マジ?
「どこだ?」
「元々、私が住んでいた家よ」
「ルリカ……元々……王都に……住んでたの……?」
「そうよ。まあ冒険者になる際に手放しちゃったんだけれどね」
「何で手放したんだ?」
「……まあ、色々事情があったのよ」
一瞬、顔が暗くなった気がした。
深くは聞かないどこう。
「まあ、取り敢えずそこに一旦泊まるとしよう。案内してくれ」
「分かったわ。こっちよ」
出来る限り路地裏を使いながら移動し、どうしても無理な場合は【透明化】を発動させた。
「ここよ」
かなりの距離を移動した後、あまり人気の無い場所にある家の前でルリカがそう言った。
「おぉこれか……」
家の前には少し古くなった看板。
そこには、
『売物件』
と書かれていたが、まあ誰も買う人がいないのだろう。
多分忘れ去られてすらいる。
「鍵はあるんだよな?」
「ありけれど……多分壁貫通裏技を使った方が良いわ」
「ん? 何でだ?」
「鍵を使うと、間違いなくここの扉を最近開けたという痕跡が残るじゃない? だから使った方が良いと思うの」
「なるほど、まあ別にそんな面倒くさくないし良いぞ」
再度手を繋いで壁貫通裏技をする。
中に入ると、少し埃っぽかったが、案外綺麗だった。
「懐かしぃー」
ルリカがリビングの方を見てそう言う。
「それじゃあ、寝泊まりが出来る場所を確保できたし、今日は一旦ここで休むか。馬車の移動で疲れているだろうし
「そうして貰えると助かるわー。もうヘトヘトで……」
ルリカがリビングの床に寝転がる。
家は何だかんだで広く、二階へ続く階段もあった。
まだ上には行ってない。
「イイジマー! 上凄ぉーい!」
レカは行ってたわ。
「勝手に行っちゃダメだろー?」
「ごっ、ごめんなさーい……」
「ま、何も触ったりしないなら行ってきても良いぞ」
俺が言える立場では無いのだが。
「わーい!」
トテトテとレカが階段を登って行く。
「あれ? そういえばニルはどこ行った?」
「……ここ……」
声がする方を見ると、壁に付いているタイプのストーブの近くで丸くなっていた。
なんか、顔も絵文字みたいにとろぉーんとしてる気がしなくもないような……。
「今ストーブ付いてないだろ……」
「でも……この近くにいると……安心する……」
猫人族の本能というやつだろうか。
結構可愛い。
「ルリカ、2階に行っても良いか?」
「もちろん良いわよ」
許可を貰ったので俺も二階へと向かう。
「あっ、来た来たー! 見てー!」
ルリカが指差す方向には窓があり、その向こうの景色は、この王都を一望出来るのだった。
「うわすっごいなこれ」
「でしょでしょー!?」
「でも、俺らは今ここにいる事がバレちゃダメだからカーテン閉めないとだ」
「分かったー……」
少しだけションボリしたレカが床に座る。
「ま、たまに見ても良いぞ」
パァッと表情に笑顔が戻る。
「うんっ!」
そしてカーテンを手でちょこっとだけ開けて見ていた。
まあ、流石にあれくらいならバレないだろう。
レカを二階に残して一階に戻る。
「ゴロゴロゴロゴロ……」
「いや猫か」
「猫では……ある……」
「……確かにな……」
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