黒光りし者
「「「「チーン……」」」」
さて、何故俺らが昇天しているのかというと、それは会議が終わったところまで遡る。
「イイジマ」
「ん?」
会議が終わってすぐ、イネに声を掛けられた。
「何だ?」
「そういえばお前がここに来た理由は修行をする為だったよな?」
「ああ」
「最近……出来てないと思うのだよ私は。修行が」
「……」
「つまりだね、今から君達に修行して来てもらう」
「えぇー」
なんて唐突なんだ。
しかもちょっと疲れてるのに!
「取り敢えず、近くにモンスターの群れがいたらしいから、そいつらを狩って来てくれ。レベル上げもした方が良いしな」
「はぁー……分かった、皆んなにそう伝えてくる」
「うむ、では頑張れよ」
「ああ」
そして俺は皆んなにイネに言われた事を伝えた。
「しゅ、修行……」
「やだぁー!」
「イネ……凄い……厳しくなった……」
「まあでもやるしかないさ。それに今のままじゃ教会の大司教全員が一気に攻めて来たら勝てない強さだって分かったし、レベル上げはやっぱ大切だ」
「それは……まあ、確かにそうね……」
「……あ」
レベル上げと言えば……。
「? どうしたのイイジマ?」
「思い出したわ」
「何を?」
「裏技をだ」
「裏技? どんなやつなの?」
「一気にレベルを上げる裏技」
「え……こ、ここにもあるの?」
「ここには無いし、あの宿屋でやった様なやつじゃない。ちょっと地道なやつだが、でも普通にやるよりは絶対に良い」
「ならそれやりましょ!」
「言われなくとも」
俺らはその裏技が出来る場所へと向かった。
まあテレポート裏技を使ったりする程遠いのだが。
「おいしょ」
「えっと……ここがそうなの……?」
ルリカ達が辺りを見回す。
「ああ、ここだ」
竹藪……だが、忍びの里の近くの竹藪ではない。
「どこなのここ?」
「あー……まあ一言で言えば魔族領の近くだな」
「えっ、そんなとこまで来たの……!?」
「そこに裏技があるから、そこに行くのだ」
「深い様で浅いわね……」
「ふっ、深ぇよっ!」
絶対深いぞ!
「で、レベルが簡単に上がる裏技はどこなの?」
「こっちだ」
数十歩歩いて、立ち止まる。
「ここだよここ」
「えっと……」
目の前には人一人がやっとで通れそうな穴がある。
「ここの……中?」
「そうだ」
「これ……通れるの……?」
ニルが少し心配そうな顔でこちらを見る。
「おいおい、俺スタイル結構良いだろ?」
「いや……その……私が……」
「はぁ? 超スタイル良いくせに何言ってんだ?」
「……!」
ニルが目を少し丸くする。
「……本当……?」
「こんなとこで嘘言ってどうなる」
「……ありがとう……」
ニルは少し俯いてしまった。
あれ? 何で俯いちゃったんだ?
機嫌を悪く……いやいや、ありがとうって言ってるんだからそれは無いだろ。
……まあ、良いか。ニルは大丈夫だきっと。
「それじゃ、こん中入るぞー!」
ジャンプして体勢をミイラの様にして入る。
「えっ、えぇーい!」
「わははははぁー!」
「おぉ……」
上から、ルリカ達も入ってくる音がした。
ズバザザザーと滑り台の様に滑り、スタッと着地する。
「よしっ、到ちゃぐべぇぁ!」
後ろから勢いよく滑ってきたルリカに吹っ飛ばされる。
「あっ、ごめんイイジマアァァァァア!?」
ルリカも、後ろから来たレカ&イネに吹っ飛ばされた。
「ごめんルリカお姉ちゃーん!」
「ごめん……ルリカ……」
「「チーン……」」
その後、【超回復】を発動して、痛みが消えた。
「取り敢えず、ここなのね?」
「ああ、ここにその裏技がある。ただ……」
「ただ?」
「ここからちょっとだけ歩く」
「なぁんだ。そんな事くらい大丈夫よ」
「いや、俺が心配しているのはそこじゃなくてだな……」
「? 何よ?」
『『『『『カサカサ』』』』』
通路の奥の方から人ではない足音がする。
この空間に入ってくる少しの日光が、その足音の正体を照らす。
茶色に近い黒光りした甲殻。
「ひっ!」
そう、奥から迫って来ていたのは……。
『『『『『カサカサカサカサ』』』』』
「ゴッ、ゴキブリ!」
大量の、ゴキブリだった。
「「「「チーン……」」」」
そう、これが俺らが昇天した理由である。
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