サーカス団に村の移動の手伝いをして欲しいってお願いするなんて聞いた事無いよ
「うわぁ……」
「かっこいい……」
リヴェットを見て、影蘭や鬼姫がその姿に見惚れる。
分かるわー。服装めっちゃカッコいいもんな。
「ふむ、要件は何かな?」
「あれ? 分かっていないのか?」
「君にこの質問するのは私が初めてのようでね」
「なるほど、そりゃあ嬉しいな」
トントン、と肩を叩かれる。
「ん?」
「ちょっと……今のどういう事?」
ルリカがそう耳打ちしてきた。
「どういう事とは?」
「『君にこの質問するのは私が初めてのようでね』ってやつ!」
あぁー……確かにちょっと分かりにくい文面ではあるか。
「前にリヴェットは全ての未来を知っているって言っただろ?」
「そうね」
「じゃあどうやって知る?」
「……分からないわ」
「答えは簡単だ。別の世界線、または別の時間軸にいる自分に聞くんだ」
その場にいた皆んながキョトンとした顔をする。
「いやだって、未来の自分とかはその答えを知ってるだろ? じゃあ聞いた方が良いじゃないか」
「いやいや、普通は聞かないのよ」
「だから彼は普通じゃないんだよ。普通だったらまず未来を知っている以前にここにパッてテントごとテレポート出来ねぇよ」
「……確かに」
「んでまあ話を戻すと、さっきリヴェットが言った『君にこの質問するのは私が初めてのようでね』ってのは、要するに別の世界線の奴も全員やってなくて、自分が初めてって事だ。
だろ?」
そう言ってリヴェットを見やる。
「その通りだ。説明してくれて感謝する」
よし! 当たってた。
「という訳で、説明願えないだろうか?」
「ああ、えっとだな――」
アルカニット教会が攻めてきて、忍びの里の場所がバレてしまったので、村を丸ごと移動させる手伝いをして欲しいという事を少し大雑把に伝えた。
「なるほど……」
「頼むよー」
「だがやはり、我々に利点が無い」
「また炎ってやつか?」
「いや、今回はそれではない」
「じゃあ何だ?」
「正確に言うと、其方では出来ぬ」
「……ほお?」
俺じゃ出来ない? 中々言ってくれるじゃないの。
「勘違いはしないで頂きたいが、其方が弱いからという意味合いでは無い」
あっ、そうなのか。
「今回もショーを手伝って頂きたいのだが……それを其方ら、忍者達にやって頂きたい」
百取達はこの言葉に動じていなかったが、内心ビックリしているだろう。
「……何故儂らに?」
百取がそう問う。
「我々は忍者とのパフォーマンスをした事が無い。
我々がやったものが無い事ほど、観客が盛り上がるものは無いのだ」
「なるほどのぉう……つまり、その観客の為にやるのか?」
「……安心したまえ、その観客は其方らの技などを広めたりは一切しない言い切れる」
「何故じゃ?」
「ふふふ、分かるであろう? 我らのサーカスに来る者達であるぞ?」
「ふぅむ……」
百取は少し考える姿勢を取った後
「分かったわい、良いぞい」
と言った。
「百取様、本当によろしいのですか?」
イネが百取にそう問う。
「なぁに、儂らの技を見せなければ良いだけの事よ」
そう言うと百取はリヴェットに近づいた。
「本当に、儂らの村を移動させてくれるんじゃろうな?」
「お約束しよう。我は約束を違える者では無い」
「ならば良いわい」
百取はイネのそばに戻った。
「其方らも準備が必要だろう。準備が出来たら戻って来てくれたまえ」
そう言ってリヴェットは煙玉を下に投げて消えてしまった。
「それじゃあ、一度帰るとするかのぉう」
「それは良いのですが……ショーの手伝い、とは一体何なのでしょう?」
「恐らくじゃが、彼奴と戦う事になるのじゃろう」
「!?」
おっ、正解だ百取。
「ほ、本当ですか!?」
「……そうじゃ」
「あの者から……ただならぬ気配を感じたのですが……」
「分かっておるわい。じゃが考えてみるのじゃ、サーカスで戦うと言うても、人が死ぬ所を見たい訳じゃあなかろう。
よって、生かしては貰えるじゃろうな」
「おいおい百取、弱気過ぎじゃないか?」
煽る様にそう言う。
「……何じゃと?」
「生かして貰える? なぁに言ったんだ。勝てば良いんだ勝てば」
「だがなイイジマ、先程も言ったが、あの者からはただ者では無い気配がした。つまり相当強いという事だ。
百取様ですらそう言っているのだぞ」
「はぁー、良い情報をやろう」
「……何じゃ?」
俺は腕を組み
「俺は、あいつに勝った」
ドドン! と効果音がする様な感じでそう言った。
「「!」」
「つまりだ、あんたはリヴェットに勝てるって事だ」
「……ははははは!」
百取が満面の笑みで笑う。
「なるほどなるほど! それは……ははは! 面白いのぉう! そうじゃな! お主が勝てたんじゃから儂らも勝てるのぉ!」
「おいおい、その言い方だと俺が弱いって言っている様に聞こえるぜ?」
「ふっ、分かっておろうくせに」
その後、俺らは笑いながら肩を組んで帰った。
「……いやほんと、何で仲良くなってるんだあの二人……」
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