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テント内での平和な一悶着

「大丈夫かー?」


「あっ、イイジマ殿! 見るのだ! 怪しげな建物が突如と現れ――」


「あぁ安心しろ、それは俺が呼び出した仲間だ」


「「……へ?」」


 影蘭と鬼姫がそう素っ頓狂(とんきょう)な声を上げる。


「そ、そうだったのか……」


「すまねぇイイジマさん。あんたの仲間攻撃しちまって……」


「気にするな、それに、お前らにやられるほど、あいつらは弱くない」


 この言葉に、影蘭達はムスッとしたが、百取は俺の伝えたい事が分かったらしく、元から細い目を更に細くさせた。


「なるほどのぉう。まあまあ、取り敢えず中へ入ろうじゃないか。彼らに敵意は無いじゃろ?」


「それは……確かにそうですが……」


「それに、ここには儂に勝ったイイジマがおる。何かあっても、守ってくれるじゃろうて」


「……かしこまりました。じゃあイイジマ、案内してくれ」


「その頼み事をするなら、あいつらにしてくれ。俺はテントの内部の事はよく分かっていないんだ」


「あっ、そうなのか。では……」


 影蘭と鬼姫は団員達の前に歩き


「「先程は、申し訳ございませんでした」」


 と言って土下座した。


 うわーお。中々見ないぜ、忍者が土下座してるの。


不躾(ぶしつけ)である事を承知しつつお頼み申します。どうか、私達に貴方方のテントの内部を案内して貰えないでしょうか?」


 チラッ、と団員達が俺に顔を向けたが、すぐに影蘭達に視線を戻す。


(つら)を上げたま()。我らはその様な行為は好まぬ」


 すぐに頭を上げる二人。


「団長は汝等(うぬら)の事も待たれり。入るが良し」


 そう言って団員達は消えた。


「えっと……私達も行って良いんだよな?」


「そうっぽいな」


「やったー!」


 ぴょんぴょんと影蘭が飛び跳ねる。


「おい影蘭! 百取様の前だぞ!」


 鬼姫が影蘭の肩を掴んで抑える。


「あっ……!」


 ……顔が真っ赤になってる……。


「ははは! 良い良い、元気な姿を見れて儂は満足じゃ。そんな事より、早う行かんとな。あやつらを怒らせたら怖いじゃろう」


「そうね、そうしましょう」


 ルリカもその言葉に賛成する。


「んじゃ、行くか」


 テントの幕をめくって中に入る。


「あっ、まっ、待ってくれ!」


 影蘭が俺に掴まる。


「!?」


「ちょぉっ!?」


「……」


 ルリカがめちゃくちゃ驚いた表情をし、ニルがこちらを睨んでいる。


 おいおい、何か別の意味でヤバイ空気になってるんだけど……?


「あっ、す、すまぬ! 私はこういう雰囲気の所は苦手でな……」


「大丈夫だ。ただ、流石に何かあった時に守りにくくなるから、掴まるなら鬼姫にしてくれないか?」


「ああ、そうするよ……。すまない……」


【光球】と【光球操作】を発動し、明かりを確保する。


「これで少しは大丈夫か?」


「ありがとう。大丈夫だ」


 影蘭がそう言った途端、ニルが腕に抱きついて来た。


「……あの、ニルさん?」


「何……?」


「影蘭にも言った様にだね、何かあった時に守れないから離れてもら――」


「自分の身は、自分で守る」


 そう言ってより一層腕をギュッと強く掴んだ。


「はぁー……分かった、ほら進むぞー」


 てくてくと歩き始める。


「ははは、いやぁ、見てて(なご)むのぉう」


 と、百取が言っているのが聞こえたが、ガン無視した。





 あの後、何故かルリカももう片方の腕を掴んで来て、少し歩きにくいながらも歩いた。


「待たれよ」


 頭上から声がしたので【光球】を操作して上の方を見る。


 すると、空中ブランコに乗った団員がいた。


「団長はこちらにあり。付いてきたまへ」


 ピョーンと次のブランコへ飛び移り、クルッと回ってまたブランコの上に乗る。


「よし、行くぞ」


 ……自分の両腕を人が掴んでるとこんなにも歩きにくいのか……。


 右手と右足を同時に出す様に歩きながら付いて行く。


「この先に団長はおられり。()きたまえ」


 団員はまたピョーンと飛んで別のブランコに乗り移り、どこかへ行ってしまった。


「……んじゃ、行くか」


 腕を掴まれながら幕をめくって、奥へと進む。


『ダラララララララ』


 おっ、このドラムロールは……!


『ダンッ!』


 ボフンという音と共に煙が勢いよく地面から出てきた。


 影蘭達が戦闘体制に入りかけたので手で制する。


「お久しぶりだな……イイジマ」


「ああ、ほんと久しぶりだな。リヴェット」


 煙が晴れると……臙脂(えんじ)のサーカス団の団長……リヴェットが立っていた。


『面白い!』


『気に入った!』


『続きが読みたい!』


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