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お久しぶりのサーカス団

「おおイイジマ!」


「百取!」


 火事になっている家を見ながらお互い名前を呼ぶ。


「これ、一体誰が?」


「分からぬ、気配が無いというのに……何故じゃか放火されておった……」


 あのフード野郎か……。


「取り敢えず、火は消えそうか?」


「今、水魔法が使える者をかき集めて消化しておるが……この火の強さじゃと二時間は燃えるじゃろうて」


「そうか……」


 俺の【水出現】は少量づつしか出ないのでやっても焼石に水だろう。


「ちょっと、話し合いたい事があるから、会議室に来てくれないか?


「うん? 分かった」


「一体何を話すんだ?」


 イネが小声で聞いてきた。


「いや、ちょっとした提案だ。ただ……百取もそう考えているかもしれない……というか、考えているだろう」


「?」


「ルリカ達も来てくれ、お前らにも関係ある話だから」


「わ、分かったわ」


 そして俺らは会議室にある椅子に座った。


「して、話とは何じゃろうか?」


「単刀直入に言うが……村の場所、移動しないか?」


「!?」


 イネが目を見開いてこちらを見る。


「大丈夫だイネ、分かってる。俺らにそういう決定権や選択権が無いって事はな。

だが百取、俺が今修行を終えずにこの村を去って、教会が俺らを追って攻撃が無くなったとしても、この村の位置は教会にバレている事になる。

つまり、教会がいつここを自分らの戦力に引き込もうとするか分からないって事だ」


「う、うぅむ……確かにそうじゃのぉう……じゃが、この村を捨てるというのはいささか急すぎるし、それに、今の自分の家に思い入れがあるという者も多い……。そのような事を言えば、儂への信頼がかなり無くなるじゃろう」


 ニヤリ、と俺は心の中で笑った。


「実はな、そういうを全部大丈夫に出来る奴と、俺は知り合いなんだ」


「ほお?」


「お前らなら分かるだろ?」


 ルリカ達にそう聞く。


「もちろんよ」


「知ってるー!」


「分かる……」


 俺はポケットから 〝鈴〟を取り出して、チリンチリンと鳴らした。


『ブピャラフォォォォー!!』


 そしてあの、独特な笛の音が聞こえた。


「な、何じゃ今のは!?」


「安心しろ、あいつらが来た音だ」


「あいつら?」


 チリンチリン、と先ほど俺が鳴らした鈴の音とは違う鈴の音がした。


「我ら、二度(にたび)汝等(うぬら)相対(あいたい)せぬ」


 いつの間にか、目の前に一人の団員がいた。


「「!」」


 イネと百取が戦闘体勢に入る。


「待て待て、アルカニット教の奴じゃない! 俺が呼んだ奴だ!」


 団員が少し動いた事により、コックスコームの鈴がなった。


「団長は汝等を我らが拠点にて待ち()びたり。入れ」


 ただ団員はそう言って、その場から消える。


「……今の奴は何者なのじゃ?」


「団員だよ。臙脂(えんじ)のサーカス団の」


「臙脂のサーカス団……?」


 俺は、臙脂のサーカス団についてかいつまんで説明した。


「なるほど……そのような存在がこの世にいたとはな……まだまだ世界は広いのぉう」


 百取は背もたれに寄りかかって天井を見つめる。


「それでは百取様、早速その臙脂のサーカス団という団体の拠点であるテントに参りましょう」


「うむ、そうじゃな」


「じゃあイイジマ、案内してくれ」


「別に良いが……多分、あんたの方がよく分かってるだろ」


 テントはその場にポンと出現する……つまり、その場の空気が一瞬で変わるのだ。


 百取とイネが俺より分からないという事はないだろう。


「ははは、やはり君はそういう所が分かるか、そうじゃな、儂にはもうそのテントがどこにあるのか分かっておるわい」


「……ん?」


 カキィンと、金属がぶつかり合う音がした気がした。


「……百取様」


「分かっておる、少々急がねばじゃな」


「じゃあ行くか」


 俺らはサーカス団のテントの元へと走って向かった。





 着くと、影蘭(えいらん)鬼姫(きひめ)が団員達と戦っていた。


 だが――


「な、何なんだよこいつらぁ!? 強すぎるー!?」


「くっ、ここまでとはっ……!」


「…………うわぁ……」


 めちゃくちゃボロ負けだった。


『面白い!』


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