臭い? 知らねぇんなもん! 食え食え!
「イイジマせんせーのー、六分クッキングー!」
「お、おお……?」
一昨日使った鍋を持ってきて火を付けてそう言った。
「それではまずー、水を入れまぁーす。【水出現】!」
水を出して、2dLぐらい出たら止める。
「そしたら沸騰させまーす。【火出現】!」
近くの焚き火に火を付ける。
「そしたらこの鍋を置いて、沸騰したら……ソーイビーンを投入!」
ブクブクと泡立つ熱湯にソーイビーンを打ち込み、煮る。
「そしてここでー、特別な裏技で煮る速度を早めまーす」
鍋を持ってグルグルと時計回りに回した後、クルッとターンをして今度は反時計回りに一周半回す。
はい、出来た。
「よし、これで大体四時間くらい煮た状態になりましたー。ほぉーら見て下さい! 人差し指と親指で優しく挟んだだけで、ほら! 簡単に崩れちゃいます!」
「イ、イイジマ……誰と話してるんだ?」
「あぁいや、気にするな。ちょっとしたパロディだ」
「?」
煮たソーイビーンが入った鍋からお湯を流し、すぐにウィラージャーフラワーの毒を入れて混ぜる。
このウィラージャーフラワーは言わば納豆菌の役目を果たしてくれるらしい。
「そしてこのウィラージャーフラワーの毒とソーイビーンを……よくかき混ぜまーす」
すぐに入れてかき混ぜないといけないのは、冷めると別の菌が入ってくる可能性があるからである。
流石にインワドの世界に細菌とかいうのはないだろうが、リアルに忠実なインワドの事だ、そういう設定の失敗とかあるに決まってる。
「よくかき混ぜたら……カラシャルレの胞子を入れて……蓋をして三分待ちまーす」
本来この納豆の発酵には一日くらいかかる。
だが、そんなに待つのは面倒くさいし何より嫌だ。
そこで登場するのがカラシャルレの胞子だ。
このカラシャルレの胞子は、なんと発酵をめちゃくちゃ早める効果がある。
あの宿のおばさん本当に一体どうやって見つけたんだ……?
裏技を見つける才能あるだろ絶対。
「さてと……三分経ちましたね……いざオー、プン!」
蓋を開けると納豆特有の臭いが広がる。
「うあっ!? な、何だこれは!? イイジマ! 失敗してるじゃないか!」
「いやいや……大成功だぜこれで……」
「何だと!?」
納豆だ、完璧に。
この臭い、粘り気、色。
マジで納豆だ。
「そんなソーイビーンをどうするんだ?」
「米と共に食う」
「ご、ご飯のお供にするのか!?」
「ああ」
実は、ソーイビーンを撮りに行く前にご飯を炊いておいたので、皿に装ってイネに渡す。
「ほれ、美味いぞー」
「うっ……」
納豆を乗っけた瞬間、イネがめちゃくちゃ嫌そうな表情をする。
「ほ、本当に……食うのか……? これを……?」
「食わず嫌いはダメだぞー」
「っ……バグッ」
いった。
「……!」
おっ、箸が進んでるねぇ。
「な、何なのだこれは……!? 美味い、美味すぎる!」
「だろぉ?」
「イイジマ、感謝する。これほどご飯に合う食べ物なんてそうそう無いだろう」
「ふっ、どういたしまして」
俺も納豆をご飯に乗っけて食べる。
「あぁー」
そうそうこれこれ。
この納豆独特の風味が堪らねぇんだよなぁ。
それにこの食感……最高ぉー。
ご飯を山盛りで装った筈なのに、お互い30秒もしないうちに食べていた。
「うはー! 美味かったー! ご馳走様!」
「ご馳走様!」
イネを見ると、口の周りば納豆のネバネバがたくさん付いていた。
「イネ、ちょっと動くなよ」
「ん?」
「【水出現】」
イネの口に少しずつ水を出して落としていく。
「あ、口の周りに何か付いてるのか?」
「納豆のネバネバがな」
「すまない、ありがとう」
イネが服の袖でネバネバを取ったので、【水出現】を止める。
「後でもう一回作ってくれないか?」
「じゃあ、今日の晩御飯にでも出すよ」
「本当か!? 感謝する!」
イネの耳が凄いピクピク動いている。
「それじゃ、そろそろルリカ達を起こすか」
「そうしよう」
イネはフライパンとお玉を持ち……打ち鳴らした。
『パンパンパンパン!』
「何何何何!?」
「うぅーん……」
「…………グガー」
いやレカ! この音の中寝れるってマジかよ!?
「さあ起きたまえ諸君! 今日も修行をするぞ!」
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