廻邏毘さんの知的探究心は凄い
「入れ」
俺らが百取の家の前に着いてノックをしようとした時、中からそう声がした。
流石上忍のリーダーだ。気配で察したか。
「失礼します」
イネがそう言いながら扉を開ける。
「なるほど、この村に入ってきたのは其奴じゃったか」
布団の近くにあった椅子に座りながら、百取はお茶を飲んでいた。
匂い的に緑茶だろう。
「はい、またアルカニット教会の大司教が攻めてきた様です」
「単独で、か」
「はい」
「他にいた気配は?」
「ありません」
「……其奴、本当に大司教か?」
「っ!?」
イネが急いで担いでいた奴の頬を引っ張る。
『ベリィッ』
剥がれた。
独特のリズム感がある音がなり、本当の肌が露わになる。
「離れろイネ! ソイツッ、大司教じゃねぇ!」
イネがすぐに手を離して距離を取る。
魔法陣の中には、考えるだけで物体を動かす事が出来る魔法陣もある。
ただ、その魔法陣がその物体に貼られていなければならない。
だが、それを使えばマネキンに爆発物を巻き付けて爆発させる。みたいな事が出来る。
俺らはそれを警戒しているのだ。
「【風の護り】!」
百取がスキルで俺らを護る風の盾を出した。
「ありがてぇ!」
「これくらいお安いご用じゃ」
だが待つ事10秒……爆発しない。
「爆発……しないのぉう」
「てっきり、百取様を消す為にここまで運ばせたのかと思いましたが……」
「儂もそう思ったわい」
「警戒は怠らないでくれよ、いつどこから本体が来るか分からないんだ」
ゆっくり動きつつ電気を付け、再度周囲を警戒する。
いない。
気配も無い。
これは百取の動きを見ていたら分かる。
「!」
いや! 反応があったっぽい!
イネもそれに気付いたらしく俺らは三人は同じ方向を警戒する。
場所は……俺らが入ってきた玄関である。
「来るぞい」
小声で百取がそう言い、俺らの緊張感が高まる。
そして――
『バァン!』
扉が勢いよく開かれた。
「こぉ〜こでぇ〜すかぁ〜?」
「む?」
この独特な喋り方は……
廻邏毘だ!
「どうしたんじゃ、儂の家の扉を思い切り開けよって」
「いやいや〜、何をおっしゃいますか百取様ぁ〜。捕まえたんでしょ〜う? アルカニット教の〜、だ・い・し・きょ・う・を」
「捕まえておらんわい」
「どぅえ〜!?」
廻邏毘さんが大袈裟に仰け反る。
「そういう気配がしたんですけど〜!? ……あれ〜? よくよくみると〜、そこにいるじゃないですか〜」
「ソイツは偽物じゃ」
「いやいや〜、その傀儡では無くてですね〜、その後ろの奴ですよ〜」
「「「!?」」」
俺らは一斉に振り返る。
そこには
『ピチョン』
水が人の形を成していた。
『ニュウン』
なっ、水が人になった!?
「なんじゃこれは……!」
百取が距離を取る。
「まあ、偽物を見やぶれなければ、上忍のリーダーとは言えぬな」
「お主は何者じゃ?」
「分かっているだろう? 私は、水の大司きょ――」
「はぁ〜い〜、どいてどいて〜」
俺とイネの間を広げてそこを通っていく。
「……何だ貴様は?」
「……」
「私の言葉を遮っておいて無視だと!? 貴様……その態度改めさせてやろう!」
どこからか出てきた水が、廻邏毘に襲いかかる。
「マズイ!」
そう言って助けに行こうとした俺を、イネと百取が止めた。
「な、何で!?」
「見なさい」
言われた通り廻邏毘と水の大司教を見てみると……
「ぅぐぅぁ……あっ……」
「あのね〜、調べ物の〜、邪魔しないでよ〜」
廻邏毘が水の大司教の首を掴んで持ち上げていた。
「……え、えぇ……!?」
「あやつはのぅ……儂と同じくらい強いんじゃ」
そ、それにしても強すぎませんかね?
「はぁ〜い、ちょ〜っと調べるね〜」
ダァンと地面に打ち付け、脳震盪を起こさせる。
「がはっ!」
おいおいあれ大丈夫か? 死ぬぞあれ。
「ほぉ〜ほぉ〜、へぇ〜、そんな〜、感じなんだ〜」
? 何をしているんだ?
「百取、廻邏毘は何をしているんだ?」
「あやつは他人のステータスの一部を見る事が出来るんじゃ。じゃからそれを今見ちょる。邪魔しちゃいかん、お主もああなるぞ」
うん、俺は遠目から見る事にしよう。
「百取様ぁ〜ありがとね〜、縄で縛っとく〜?」
「ああ頼むわい。猿轡も忘れずにな」
「りょ〜かぁ〜いでぇ〜す」
その後、廻邏毘が水の大司教を拘束してこの家の下にあった地下室に投げ入れていた。
一瞬チラッと人骨が見えた気がしたが、まあ……何も無かった事にしよう。うん。
「では〜、私は〜、これでぇ〜」
「うむ、またの」
パタン、と今度は優しく扉が閉ざされた。
「……凄かったな」
「ああ、やはり、廻邏毘は強いな」
「イネもそんくらい強いだろ?」
「私は後もう一歩と言ったところさ」
「もうそれ強さ的には十分じゃないか?」
そんな事を言いつつ、俺らは百取の家から出て、修行場へと戻った。
「あっ、さっき廻邏毘があやつを地面に打ち付けた場所……凹んどる……」
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