数が多かった理由
「おぉ、意外と遅かったな」
イネは焚き火を作って暖まっていて、これからドラゴンの肉を焼きますよと言わんばかりの長い串が近くに並べられていた。
……食うのか? あの量を。
「どっかの誰かさんが1000体以上のドラゴンと戦う事は無いって言ったのにそれ以上の数がいたからな」
「……何だと?」
イネの顔が真剣な表情になる。
「本当に、1000体以上いたんだな?」
「あ、ああ……」
「どういう事だ……?」
イネが顎に手を当てて考え込む。
「何かおかしいのか?」
「あのダンジョンの層の移動は、私以外不可能なはずなんだ」
「不可能?」
「違う層に続く道を私が壊したからな」
「……」
脳筋すぎん?
「だから、1000体以上いるのはおかしいんだ……」
「繁殖したとかは?」
「まだ入れて数年だ。あいつらは数十年に一度の発情期で繁殖するから、ありえない」
「ならば最近発情期があったとか」
「それは私も思った。だが、このダンジョンに入れる前に妊娠しているかどうか確認した」
「そしたら?」
「どいつも妊娠していなかった」
「じゃあ何でだろうな」
「分からん」
全くもって謎だな……。
まさか、バグった、とか?
いや、仮にそうだとしても増えすぎだし、そんな裏技知らない。
「取り敢えず、この事は私が調べておくから、先に修行場に戻っていてくれ」
「分かった」
そう言って俺らは、イネの事をチラチラと見つつ修行場へと戻った。
「一体何が原因だったんだろうなー」
「分からない……でも……確かに……あのダンジョンに行く前……少し……変な音がした……」
「変な音?」
「うん……何か……ゴゴゴッて……岩みたいなのが……動く音……」
一体、何だろうか。
「諸君、少し大変な事が起こっているかもしれない」
いつの間にか立っていたイネが、そんな事を言った。
「何が大変なんだ?」
「違う層に続く道を壊したと言ったろ?」
「ああ」
「直っていた」
「……普通は、ありえるのか?」
「いや、ありえない。確かにダンジョンに自動修復機能が無い訳じゃないが、かなり壊したからな、最低でも5年は掛かるはずなんだ」
「なのに、直っていたと」
「ああ」
まあ間違いなくニルが聞いたゴゴゴッという音と関係があるだろう。
「イネさんや」
「何だ?」
「ちょっと聞いて欲しい事があるんだが」
「何だ?」
ニルが聞いた音の事を話した。
「なるほど、確かに私もその音には気付いていたが……ここら辺ではよく中忍の修行の岩転がしというのをやるから、気にしてなかったんだ」
じゃあ、特に関係はない……って事か?
「だが、岩転がしにしては不自然な音だった」
「どんな風に?」
「引きずる様な音も混じっていた」
「だとしたら……直された可能性、というのが高い気がする」
「直された……!?」
イネの目が大きくなる。
「だが、直すには下の層から来なければならいぞ? 穴でも掘って来たと言うのか?」
「うーん、そこなんだよなぁー」
あのダンジョンに住んでる奴らがいたのかもしれないが……一旦その可能性は置いといて、穴を掘る理由……。
そして行き先はダンジョン……。
いや、待てよ、もしかしたら穴を掘っていないのかもしれない。
「……イネ」
「何だ? 呼び捨てか」
「今はそんな事良いだろ、それより、あのダンジョンは最初は弱いモンスターしかいなかっただろ?」
「ああ」
「それって……ダンジョンに見せかける為のカモフラージュ……なんじゃないか?」
「なっ!?」
インワドでもただの弱いモンスターしかいないダンジョンだったが、俺らプレイヤーが気付かなかっただけで、もしかしたらどこかと繋がっている転移型魔法陣があるのかもしれない。
「……確認、してこよう」
そう言ってイネはパッとその場から消えた。
「……何もなきゃ良いんだが……」
スゥッと、空を見上げた。
嫌に、快晴だった。
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