【SIDE】教会にて
アルカニット教の教皇による緊急招集で、本部であるリーチャニット大聖堂に八人の人物が集まる事になった。
「さてと、皆さまお集まりになりましたかな?」
そう発言したのは、風の大司教、ビラナ・グリダであった。
まず、このアルカニット教は、魔法の属性というものを神格化して崇めるといったもので、それぞれの属性に一人一人大司教がいるのだ。
「いや、全員では無い。ビレッドとヴァイナとリタがまだだ」
そう言ったのは水の大司教、ラースレ・ラミットだ。
「そうですか、まだでしたか」
「というか、教皇様も来ていないではないか、一体どうなっている!?」
そう怒り気味にラースレへ尋ねたのは、火の大司教、ギガスト・ヴィグリットだ。
「落ち着きなさいギガスト、この間教皇様も言っていたでしょう? 貴方にはもう少し冷静さが必要だと」
「む、むぅ……」
ギガストを宥めたのは、土の大司教、ファレスチナ・ビャードだ。
ガタン、と音がして大きな扉が開く。
「ごめんなさぁ〜い皆さぁ〜ん☆ 遅れちゃいましたぁ〜☆」
語尾に☆を付けた様な喋り方をしながら入って来たのは、光の大司教、ヴァイナ・リョコタだ。
「遅いですよ」
「ごめんなさぁ〜い☆ でもぉ、色々と事情があってぇ〜☆」
「その話は良い、早く座るんだ」
「はぁ〜い☆」
そしてヴァイナが椅子に座った時、また1人部屋に入って来た。
「……」
「おい、遅れて来たのに何も無いのか?」
「…………遅れてすまない」
「ふんっ!」
そのままスタスタと歩いて椅子に座ったのは、闇の大司教、ビレッド・バレスだ。
「……遅い! リタは一体何をしているんだ!?」
「あ、あのぉー……」
「何だ!? リタが来たのか!?」
「いえ、だからぁ……そのぉ……」
「ん……? っ!? リ、リタ!?」
「はいぃ……そうですぅ、リタですぅ……」
頭をめちゃくちゃ下げて挙げている右手をプルプルと震えさせているのは、無の大司教、リタ・ピチュルドだ。
「すまない、君がいたのに気が付かなかった」
「別に大丈夫ですよぉぅ……もう慣れてるのでぇ……」
そう言ってリタは椅子の上で体育座りをした。
『ガチャ』
扉が開く音がした。
大司教達は全員椅子から立ち、お辞儀をした。
そう、いま入って来た、初老の男こそが……
「良い、座れ」
アルカニット教会現教皇、アーガスト・フラーチだ。
大司教達は、アーガストが座るのを見てから座り、アーガストの次の言葉を待った。
「まずは、急な招集に集まってくれた事、感謝する。
それでは早速、本日の要件を話そう」
大司教達は、その要件の内容を、固唾を飲んで待つ。
「例の、逸脱者の件だ」
その言葉で、この場の空気が変わった。
アルカニット教が定義する逸脱者というのは、この世の理を外れ、世界を混乱に陥れる可能性が高い人物、という感じである。
「教皇様、逸脱者はもう死んだはずでは……?」
ビラナがアーガストに問いかける。
「いや、それがまだ生きておるらしい」
その言葉に、大司教達全員が驚いた。
「そんな……! 人魚族の国を爆破までしたのに……!」
「流石逸脱者、と言ったところだな」
「それで教皇様、逸脱者の現在位置はわかっておられるのでしょうか?」
ファレスチナが皆んなを落ち着かせるためにアーガストに質問する。
「すまないな。海から出て近くの待合場まで行ったというところまでは掴めたのだが、それ以降はサッパリなのだ」
「教皇様の手から逃れるなんてぇ〜☆ 生意気な奴ですねぇ〜☆」
「私も驚いているよ。いやはや、一体何をしたんだか」
「えっとぉ……それでぇ、僕達にぃ、一体何をさせるおつもりなのでしょうかぁ……?」
リタが右手をプルプルと震えさせてさながら挙げて、質問する。
「ああ、君達には情報収集をしてもらいたいんだ」
「情報収集……ですか。しかし、教皇様より情報収集が上手い者は、ここにおりません」
全員がうんうんと頷く。
「しかしだね、君らも全く出来ないという訳じゃないだろう。それどころか、常人より情報収集は得意だろう」
「それは……おっしゃる通りかと存じますが……」
「ならば是非とも頼みたいんだ。えーと、最後の目撃情報に近いのはどこだ?」
「俺です」
「私も近いです」
ギガストとファレスチナが同時にそう言う。
「では、2人に調査をして貰うとしよう」
「「かしこまりました」」
「頼んだぞ。えーでは次に――」
そこからは、近頃の信徒の状況や、金銭的な話をした。
「それでは、これにて会議を終了とする。ではの」
そう言うとアーガストはパッと消えた。
「……では、俺らは一度教会に戻るとするか」
「そうね」
そう言ってギガストとファレスチナは部屋を出た。
その直後にビレッドが無言で退出し、ビラナとラースレも退出した。
「それじゃあねぇ〜☆ リタちゃぁ〜ん☆」
ヴァイナも退出した。
「あ、あれぇ? もう僕一人ぃ……? あぁーまたやっちゃったぁ……教会に戻らないとぉ……」
椅子から降りて、リタも部屋を退出した。
そして、扉がバタンと閉められた。
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