食材調達
「よーし諸君! ご飯にしよう!」
「ご、ご飯? ――うわっ!?」
イネに注意が逸れてルリカが落ちる。
「ご飯にするって言ったが、まさかご飯を提供してくれるのか?」
「ん? もちろんだとも。むしろ提供しないと思ってたのかい?」
「いや、てっきり食材を集めて自分らで作れとか言ってくるのかと思っててな」
「あぁ、安心したまえ、ちゃんとそうだぞ」
「そうではない方が良かった……」
どうやら、ちゃんと食材調達をやらされるらしい。
「えーでは、これより食材調達を始める。
決められた範囲以内で食材を集め、六ツ半(19時)に再度集合し、料理を作り、宵五ツ(20時)に食事とする。何か、質問はあるか?」
スッと手を挙げる。
「範囲はどれくらいなんだ?」
「あー、えっとだなー。この竹藪一帯だな」
「意外と広いな」
「だが、ここにいる生き物は皆強いぞ?」
「なるほど、これも修行の一つって訳か」
「そうだ。と言っても、これは中忍の修行にもあるがな」
……そういえばインワドにもあったわ。
普通に裏技で食べ物を出現させてたから忘れてた。
「では、始め!」
イネが右手を上げた。
「よし、じゃあ行くぞ!」
俺はルリカ達にそう言って、駆け出した。
「ちょっ、ちょっと待ってー!
「……」
ルリカを背負って。
「…………いない……」
「いないかぁー」
ニルの聴覚を使って、獲物を探しているが、どうも見つからない。
「本当にこの竹藪の中にいるの?」
「そこを疑っちゃったらおしまいだろ」
「まあ、そうなんだけど……」
ルリカの気持ちは分かる。
ここまでいないとなると不安にもなる。
「! ……いた……! 2時の方向……! 300m先……! 大きい……!」
ナイスだニル!
「よし! 急いで行くぞ!」
走って約100mの所まで行く。
「今どこら辺だ?」
「今は……いや……さっきと殆ど変わってない……このまま真っ直ぐ……12時の方向に進めば……いる……」
「分かった」
俺はルリカ達に【足音消去】を掛けゆっくり近付く事にした。
【足音消去】はあくまでも足音が消せるだけなので、周りの草とかが服に擦れる音なんかは消せないのだ。
「いた!」
小声でそう言う。
見た目は少しカバに似ている。
だが、色は茶色で、体毛が生えている。
「あれを狩るの?」
「ああ、あれなら俺ら五人分くらいの量はあるだろ」
「確かにそうだけど……強そうよ?」
「俺らならやれるだろ」
「その自信はどっから出てくるのよ……」
「お前らを信頼してるだけだ」
そう言って目の前のカバ……っぽいヤツの背後に行く。
足音が無いので簡単だ。
そして……
「おらっ!」
パンチをした。
『ベギィッ!?』
突然の奇襲にカバっぽいヤツは驚いて前へと走り出した。
「今だ!」
ルリカ達にそう叫び、草むらから出てきて貰う。
『ベッ、ベギッ!』
「ごめん……」
ニルがそう言って、カバっぽいヤツの脳天に剣を突き刺す。
『ベッ……ギィ……!』
「!?」
嘘だろ!? 頭に剣が突き刺さってるのに、生きてるどころか振り払おうとしてる!
何なんだコイツ!
いや……待て……確かコイツは……
あーくそ! 微妙にモヤが掛かってる!
『ベギッ!』
「くっ!」
カバっぽいヤツがニルに体当たりをし、逃げようとする。
「そうはさせないわ! 【筋力調整】!」
ルリカが今度はカバっぽいヤツの体を斬り裂く。
『ベ……ベギィ……』
流石に体を半分にされると死ぬ様だ。
「それじゃ、これを持って帰るか」
「うう……ちょっとグロイ……」
「いやまあ確かに内臓とかが出ちゃってるが、まあ、目を瞑れば平気だ平気」
「何であんたは平気なのよ……」
「……前に、人の死体を見ちまったからかなぁー?」
「あ、えと、ごめんなさい」
「良いさ、別に。んじゃ、布で包んで運ぼうぜ」
「分かったわ」
そして俺らは、念の為に準備しておいた大きな布で、そのカバッぽいヤツを包み込み、イネの元へと帰った。
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