脱出したのだけれども
扉を開けてすぐ、俺は後ろを向いて思いっきり地面を蹴り、向かい側の壁へとぶつかった。
イリストスは一体何をしているといった顔だったが、すぐに状況を理解したようで、ゆっくりとこちらへ近づいて来た。
「ふん、逸脱者と言う割には弱いではないか」
「ぐっ……」
周りの兵士は俺に触れたら心臓が止まると思ったが、イリストスが吹き飛ばしたので危害を加えても大丈夫だと気付き、俺を取り押さえた。
「国王様、この者をどういたしましょう?」
「……私が直々に牢へ連れて行く」
「こっ、国王様がなさる様な事では……」
「お前達では其奴が抵抗した時に返り討ちに遭うだろう。なので私がやらせてもらう」
「かしこまりました」
兵士達が俺を丁寧にイリストスへ渡す。
イリストスは俺を担ぎ、進み始めた。
窓の外から俺の様子を窺うルリカ達が見えたので、【テレパシー】で言葉を送る。
『大丈夫だ、王様と取引して今秘密の通路に案内してもらっている。こっそりお前らも一階に来い』
「「「!」」」
ルリカ達が俺を見てこくりと頷き、スタタッと彫刻を下りて行った。
イリストスが一階まで着き、誰もいない事を確認して俺を降ろす。
「お前の仲間は?」
「今来る」
ちょうどその時廊下からルリカ達が近付いて来た。
「イイジマ、良かった無事で」
「良かったー!」
「本当に……良かった……」
「この方達が貴方の仲間かね?」
「そうだ」
「私の名前はル――」
「言うな」
「え?」
「知られているのは俺の名前だけで良い。お前らのが知られると、もしかしたら後々面倒な事になるかもしれない」
イリストスは少し驚いた顔をした。
「ふははは! 確かにそうだな。まあ良い。付いて来たまえ、秘密の通路はこっちだ」
イリストスに付いて行くが、念の為銃をいつでもベルトか抜く準備をしておく。
「この先だ」
そう言って彼は煉瓦を何箇所か押す。
するとゴゴゴゴゴと壁が動き、隠し通路が現れた。
「来なさい」
そして俺らはその通路を進んだ。
「ゴホッ、この通路、相当埃っぽいな」
……ん? 待てよ? 埃っぽい?
ここは海の中だぞ? 埃っぽいなんてあり得るのか?
「! 走れ!」
そう言った瞬間、爆発が起きた。
「きゃ!」
くそ! やっぱそうだったか!
「死ぬ気で走れ! イリストスは死ぬ気で泳げ! 速くこの街から出るぞ!」
「すまないが私は行けぬ、王として民を見捨てる事は出来ないぬのだ!」
「ならばまずはこの通路から出て普通に門の方から行くぞ! ここじゃ行ったところで爆発に巻き込まれて死ぬだけだ!」
「くぅっ……! 分かった!」
そして俺らは死ぬ気で走り、奥にあった扉を蹴破って外に出た。
「なっ……!?」
も、燃えている……だと……?
爆発ならまだ分かるが、水の中で……何が起きてるんだ……?
「ともかく、今は市民を避難させるぞ!」
「ああ!」
「ええ!」
そして俺らは街へと突っ込み、市民を避難させた。
何人も避難させたが、街中で見たけどここにはいない人もいた。
「一体……何があったの……?」
「魔法だ」
「え?」
「あの埃っぽい空気、水の中なのに何でだと思ったんだが、あれは【超発火】という魔法だ」
「【超発火】……」
「ああ、【超発火】はどこでも炎をつけられる粉を作り出せる。
もちろん自分の意思でその粉に火を付けられる。
そして爆発は恐らく小型の水中爆弾でも使ったんだろう」
インワドではそういうのも作れる。
まあ、主にイベントや自身のクランハウスの防衛の為に作られていたが。
「ひとまず、この状況どうする……?」
「どうするって言われても……非情かもしれないけれどこれは私達の問題じゃないわ。
これからどうするのか決めるのは彼らよ」
「でも『じゃあ俺ら教会ぶっ潰しますねー』って言って去る事も出来ない空気だろ」
「それはそうなんだけど!」
「逸脱者よ」
イリストスが俺を向いてそう言う。
「何だ?」
「頼む、教会を、潰してくれ」
イリストスの目は、少しだけ怨みが込められた目をしていた。
「…………分かった、ただまあ、少し先にはなる」
「何故だ?」
「今の俺らじゃもしかしたら教会を潰せないかもしれないからだ」
「逸脱者、でもか?」
「ああ、返り討ちに遭ったらやだろ? だから少しだけ修行してから行く」
「修行か……だが一体どこへ行くと言うのだ? お主を鍛えられる者などそうそうおらぬだろう」
「いや……いるんだよなこれが、しかも結構大勢」
「ほう? 何者なのだそいつらは?」
「悪いが言えない、彼らはそういうのを嫌う奴らなんだ」
「分かった、だが、急いでくれ、我々が教会を潰さんうちにな」
「ははは、まあ、なんだ、こういうのもあれだが……頑張ってくれ」
「……ああ」
そして俺らは近くの亀に乗り、地上へと向かった。
「ねえイイジマ」
「何だ?」
「どこに行って修行するの?」
「あぁ、お前らには言っておくべきだな」
俺は一拍置いてこう言った。
「忍びの里だ」
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