王様との話し合い
ベットの上でスヤスヤと眠っている王の横に行く。
「グガー」
「おい、起きろこの野郎」
そう言って頰をペチペチと叩く。
「んぅ? ……ヒッ! 何者だ貴様!」
「あんたが殺そうとしていた奴だよ」
「まさか……! 逸脱者……!?」
「そうだ」
「へ、兵士達はどうなった!?」
「扉の前できっとモヤモヤとした思いで居るよ」
「くそ……教会の奴らめ……! 大丈夫ではないではないか……!」
「教会?」
「あっ、いや、何でも無いぞ!」
まさか……こいつもアホなのか?
「はぁ、まあ良い、要件はそれじゃないしな」
「よっ、要件は何なのだ?」
「街の外へ繋がる秘密の通路の場所を吐け!」
「ッ! そ、そんなものはない!」
おいおい、分かりやすすぎるだろ。
こんなのが王で大丈夫なのかこの国?
「嘘つくなよ」
「ここで儂に嘘を吐くメリットがあるか?」
「ありまくりだろ。時間を稼げば兵士達がこの扉を壊して入って来たりとか、ほぼ確実に俺らをこの街に留める事が出来たりとかな」
「くぅっ……!」
もうこの国終わりだわ、破滅だわ。
「もう良い」
背後からそう声が聞こえた。
「!?」
なっ、二人いる……という事は!
「そいつは私の影武者だ。全く、もう少し良い回答が出来ぬものか……」
「もっ、申し訳ありません」
「下がれ」
「は、はっ」
そう言うと影武者は扉の鍵を開けて出ようとした。
「待て」
そこで俺は制止する。
「お前が本物の王かもしれないからな、この部屋に残れ」
「ふむ、確かにそうも思えるな。おい」
「はっ」
「この部屋のそこの隅にいろ」
王が言った場所は窓と扉から一番遠い部屋の角だった。
「かしこまりました」
影武者はそこにちょこんと座った。
「さてと、秘密の通路の場所を教えて欲しい、だったな?」
「ああ」
「私の答えは分かっていると思うが、ノーだ」
「おいおい、俺は逸脱者なんだろ? 教えなかったら死ぬとか考えないのかよ?」
兵士達にも使った手法でいく。
これ結構効果あると思うんだけどなー。
「私は、死ぬ覚悟が出来ている」
……やっべー、こういう奴には効かねぇわこれ。
「なるほど、死んでも教えない、って事か?」
「そうだ」
「……教えないんじゃなくて、教えられないんじゃないのか?」
「どうだろうな」
チッ、掴みどころがないな。
「なるほど、ただまあもちろん死ぬ以外の可能性もある、だろ?」
「そうだな」
「例えば、俺があんたに場所を吐かせられるとしたら、言わないのはアホらしいと思わないか?」
「ならば何故やらない?」
「例えと言っただろ。それに、脅しの為にこちらの手口、言わばカードを見せるのはリターンが少なすぎる」
「この街から出られるのにか?」
「俺が本気でやれば簡単に出られるが、本気を出すのが嫌なんだよ、1日動けなくなるから」
もちろん、嘘だ。
壁貫通裏技はあくまでもオブジェクト判定の目の前の障害物を貫通出来る裏技だ。
結界などの魔法で出来たオブジェクト判定では無いものは貫通出来ない。
あと別に本気出したところで最悪数時間気絶する程度だ。
「ふむ……」
流石に今言ったのは嘘だと分かっているだろう。
「なんにせよ、お前に教える事は無い」
「教会」
「!」
反応アリ、か。
だが、ここからは事前情報なんか全くの0の話だ。
インワドの知識とかから推測するしかない。
「何の事かよぉーく分かってるよな?」
「すまないが、何の話だね? この街に教会は無いが……」
「違う違う、地上のだ」
「地上の?」
「ああ。地上の教会、〝アルカニット教〟」
「っ」
「おっ、どうやら知っているっぽいな」
インワドではNPC専用の宗教があった。
まあ中には普通にその宗教にドップリとハマっているプレイヤーもいたが、取り敢えずこのインワドの世界で一番強い権力を持った宗教はアルカニット教だ。
こんな所にまで来る奴だ、そういう権力を持っている所しかないだろう。
「さぁて、そろそろ話してくれても良いんじゃないか? ……多少は、助けてやるよ」
「は?」
「おいおい分かってるんだよこっちは。脅されてるんだろ?」
さっきの「っ」の表情は、相当ヤバイという顔だった。
恐らく、俺に知られるのがヤバイのではなく、この国がヤバイという感じなのだろう。
「教会に何を言われてる?」
「……すまないが、何の……事か……」
「安心しろ、これを飲め」
そう言って俺は【薬品生成】で不死薬を使った。
効果は15秒だ。
「言っておくが、相当不味いから覚悟しろよ、ただ、それを飲めば15秒間何があっても死なない。
そしてお前の体に傷が付いたとしても、俺の【超回復】で傷を癒してやる」
「……分かった」
そう言って彼は不死薬を飲んだ。
「!? ぐぅっ!」
分かるよ、マジでクソ不味いよなそれ。
「はぁ、はぁ」
彼は飲み切った。
「ほら早く話せ」
「ああ、ある日教会の奴らがこの街にやって来てこう言ったんだ。
『喜べ、寛大なる神はこの街を見離そうとしたが、一つの役目を与えてやる事にした。
それはこの世ならざる力を使う、逸脱者を殺す事だ。
さもなくば我々が神に代わりこの街を滅ぼす。
そして、この事は他言するな。さもなくばお前の首が飛ぶぞ』とな。
なので我々は……お前を殺――』
直後、王の首が飛んだ。
「クソッ!」
王は今不死薬を飲んでいるので死んではいない。
空中を舞う頭を掴み、首にくっ付けて【超回復】をやる。
「ああ、助かった……」
「なるほどな、あ、もう話すなよ。15秒経ってる」
「分かった」
「取り敢えず事情は分かった。教会か……」
どうやら、教会は俺が裏技を使う事を知っている様だ。
「よし、ここから出たら俺はアルカニット教の教祖の所にでも行ってとっちめるとする。
だから、出してくれないか?」
「……その言葉、嘘偽り無いな?」
「無いな。それに、もしかしたら俺の今の目的と同じかもしれない」
「……分かった、警備を解――いや、秘密の通路を教えよう」
「賢明だな」
今ここで警備を解いたら俺が出た事が分かってしまうし、この国もそれが分かっているという事になってしまう。
「それじゃ、仲間と一緒に出させてくれ」
「分かった」
そして俺らは、鍵を開けて、扉を開けた――。
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