皆んなで作戦会議
「ここが、私の家です」
「おぉ……」
宿とはまた違う内装だ。
柱は綺麗な白で、縦縞が何本も入っている。
ローマ柱というやつだ。
そして壁は宿とはまた違う水色で、少し薄めの水色だった。
正直言うと、女の子らしい部屋だとおもった。
「イイジマ、なんか今失礼な事考えたでしょ?」
「な、な訳ないだろ」
「ふ〜ん、まあ良いわ。取り敢えず、今日からここに泊まるのね?」
「そうだ。お世話になるよミルラ」
「いえ全然! 先程も言った通り私達には恩があるので!」
その恩だけでここまでしてくれるなんて凄い優しいなぁ……。
「それじゃ、まずイイジマさん達が泊まる部屋を紹介しますね」
そう言ったミルラが紹介してくれた部屋は意外と広くて綺麗な部屋だった。
「元々は私の親の部屋なんですけど……二人共もう亡くなっちゃったので、使って下さい」
「あぁ……なんか悪いな」
「いえいえ、では、お疲れでしょうし、少し休憩したららこの部屋でこの先どうするのか話し合いましょう」
「そうだな、休憩が出来たら呼ぶよ」
「分かりました」
そう言ってミリアは部屋を出て行った。
「さて、んじゃあ何するか」
「休憩って言っても、何というか……今の私達の状況が凄すぎて休憩出来ないわ……」
「それでも今休憩しないと体も心も持たねぇぞ」
「分かってるけど……」
「……剣の手入れでもしよ……?」
ニルがルリカの剣を差し出す。
「あっ、そうね、確かに最近手入れするの忘れてたわ!」
ま、多少は休憩にもなるか。
「んじゃ、俺は弾薬でも増やすとしますか」
「私はー、うーん……寝てる!」
「おう、そうしとけ」
こういう状況で寝れるってのは大事だからな。
まあ、何が起こってるのかよく分からないのかもしれないが。
取り敢えず、各々自分の事をやり始めた。
「休憩、出来たぞ」
「分かりました。では……まずこれを見て下さい」
ミリアはそう言ってこの街の地図を広げた。
亀に乗って来た時に分かってはいたが、この街は円形の様だ。
「ここが今私達のいる居住区です」
ほぉん、東南東から南までの全域が居住区なのか。
「それで、東南東を含んだ北東の方向が、この国の王様である、イリストス・ニーチェロ・ギ・バーナに仕えている人達が住んでいる所です」
流石王族、名前が長い。
「ただ、北北東から西の方向まで、えっと……時計で表すと、9時から1時くらいまでの範囲は王族の敷地です」
王族の敷地でデッッカ!
「それで残りが……」
「商店街や娯楽施設がある場所だな?」
「はい、そうです」
「なるほどなぁ〜」
まあインワドの時と少々変わっている所はあったが、もう脳内で修正出来た。
「それで、イイジマさんはこれからどうする予定なんですか?」
「どうってのは?」
「ここに留まるか……脱出するのか、です」
んなもん答えは決まっている。
「脱出する、だ」
何としてでも裏技に似た力を持ってるって奴を見つけないと。
「分かりました。ではまず脱出する際に出来ない事を説明します」
「頼む」
「まず、泳いで脱出する事は出来ません。
これは、この街を覆う魔法のドームのせいで、出入りはあの門だけになっているからです。
そしてこのドーム、街の中心から円形に発動されているので、地面を掘って脱出するというのも不可能です」
「マジかー」
いざとなったらそれで行こうと思ってたんだけどなぁー。
「そして、現在門は厳しい警備体制なので、普通に門から正面突破するのは愚策と言えます。
流石のイイジマさん達でも、一つの門につき300人いるので、相手をするのは少し難しいでしょう」
いや、俺らなら行けると思うが……俺あんま人を殺したく無いんだよなぁー。
まあ魔族領やジルファーナで殺しちゃったりしたけど、あれは俺らに危害を加えて来たからであって、こちらから行って殺す、というのはあまりしたくない。
「さらに、この衛兵達はしっかりと交代して警備をするので、警備が手薄な時間がありません」
「ん? 待て待て、何でそんな事知ってる?」
この警備体制になったのは今日だ。
つまり、夜も手薄ではないという情報は知り得ないはずなのだ。
「いや、その……前にもあったんですよ、こういう事」
「あ、なるほどな」
前にもあったのなら知っててもおかしくないか。
いやでも、ここまでの警戒体制が敷かれるのが数年前か十数年前にあったなんて凄いな。
「話を戻しますと、取り敢えず夜でも凄い警戒されてあります。
そして門の無い壁にも五人ペアで一定間隔を空けて見張られているので、壁を破壊して逃げるというのも出来ません。
つまり……もうこの状況はほぼ詰みな訳ですよ! イイジマさん!」
「うーん、そうだな……」
本当にこれ詰みな気がして来たぞ……。
壁抜け裏技もダメ、人殺しは理性や道徳心がダメって言ってるからダメ、地面ホリホリもダメ……俺らどうしたら良いんだ?
「あっ、も、もうこんな時間ですね! ご飯にでもしましょうか?」
そう言ってミリアが立ち上がる。
あ、俺もう朝に食ったからあんまお腹空いてないんだけどな……。
ま、ここで断ったら失礼か。
「そうだな、ご飯にしよう」
そう言って俺も立ち上がった。
「何か手伝うぞ」
「え、いいですよ! イイジマさんはゆっくりしていて下さい! 追われている身なんですから!」
追われている身……なんか少しカッコいいよな。
「まあそう言わずに、な?」
「……そこまでやりたいなら仕方ありませんね、はい!」
そう言ってしゃもじを渡して来た。
「……これで何をすれば?」
「ご飯、炊けたら掬って下さい!」
……そんなに、俺を休ませたいんだな……。
その心遣い、ありがたく受け取るとするよ。
「分かった」
俺はそう言ってしゃもじを持ちつつルリカ達の元に戻った。
「……何で、しゃもじなんか持ってるの?」
「ご飯掬う為」
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