裏技使えば合唱なんて楽勝なんですわ
「お、お呪い……?」
「そうだ、お呪いだ」
正確には裏技だが。
「んじゃあまずそこの壁の方に向いて手を付こうか」
そう言うと皆んな困惑しつつもやってくれた。
「全員やってるなー? そしたら、右腕をピーンと上の方に伸ばしてくれ」
全員が右腕を上に伸ばす。
「そしたら一回ジャンプしてくれ……あ」
人魚族って……ジャンプ出来るの?
下半身部分が魚だから……出来なくね?
……やっべー、どうしよ。
「あー、一回ポヨンと上の方に浮いて落ちれるか?」
「? 分かりました」
全員が尾鰭を動かして少し浮いてから、ゆーっくりと落ちる。
これで……ジャンプした判定になってくれよ……?
「それじゃ次はその場で右回りでターンをしてくれ」
クルーッと回る。
「最後に喉を前の方から自分で掴んで後ろにのけ反ってくれ」
「「「「「えぇっ?」」」」」
分かる、イカれてるよな。
「皆んな、やりましょう」
ミルラが全員にそう言い、一番最初にやった。
それを見た他の人魚族達も
「ミルラちゃんがやったなら……!」
「え、えぇーい!」
「うっ、うっ……!」
自ら自分の首を掴んでのけ反った。
「よし、じゃあこれで歌が相当上手くなっている筈だ」
「えっ、ほ、本当に!?」
「ああ、試しに歌ってみるか?」
と、いうわけで、人魚族達がまた並び、音楽が流れ始める。
「「「「「アァー」」」」」
その後も順調に彼女達は歌っていった。
と言っても、自分でもこんなに上手く歌えるのかという驚愕があって、目が見開いていたりしたが。
曲が終わり、少しの間静寂が訪れる。
「「「「「やったー!」」」」」
彼女達が隣の人とハイタッチしたり抱きしめ合ったりする。
「イイジマさん! 本当にありがとう! まさかこの超短時間でここまで上手くなるなんて……」
「いやいや、君らが今まで頑張っていたからだよ」
実際、やる気が無かったのなら歌詞などを覚えておらず、歌えなかっただろう。
だが、彼女達はしっかりと歌い切った。
誰一人ストップする事無く。
「そ、そう言って貰えると光栄です……!」
笑顔を隠しきれてないな。
まあ、別に良いんだが。
「これなら5日後の合唱も大丈夫そうだし、俺はこれで帰るわ」
「ま、待って下さい!」
あー、これお礼をさせて下さい! とか言われるパターンか?
そう思っていると俺が教えた人魚族達全員がミルラの後ろに並んだ。
「私達は、貴方抜きじゃここまで上手くはなれませんでした。だから!」
「「「「「全員で何かお礼をさせて下さい!」」」」」
「え、えぇ〜」
困ったなぁー。
俺別になんかやって欲しい事ないんだよなぁー、マジで。
「そういうのは大丈夫だ。して欲しい事も無いしな」
「で、でしたら! 5日後の私達の合唱、見に来てくれませんか!? 絶対に! 素晴らしい歌声を披露します!」
なんか……感動ドラマの最終回の一回前の話のラストみたいな会話だな……。
「……分かった、行こう」
「っ! ありがとうございます!」
「んじゃ、5日後を楽しみにしてるよ」
「「「「「はい!」」」」」
その後、俺は振り向かずに練習場所から出ていったが、音で彼女達が練習に戻ったのは分かった。
「――と、いう訳だ」
少し遅くなってしまったので、ルリカ達に訳を話す。
「なぁーるほどねぇー……そんなに沢山の女の子に囲まれて嬉しかった?」
「え?」
「嬉しかったの?」
あ、圧が……凄い……!
「……お、女の子はいなかったぞ?」
「そういう事じゃないわよ!」
「痛てててててて!」
頭をグリグリとされる。
これ普通に痛てぇ!
「ニルー! ヘルプ!」
「……粛清を……受けよ……」
「お前もそっち側かー!」
その後、何とか弁明をして、ルリカのお説教は回避した。
「よーするに、歌が下手な人魚族達を上手にしたって事ね?」
「そうだ」
「……いや凄いわね。音痴な人をこの短時間で上手に出来るものなの?」
「いやまあ裏技は使った」
「痛い事とかさせてないでしょうね?」
「してないしてない」
「なら良いわ。で、5日後にその合唱団が街中で歌うのね?」
「ああ」
「見に行くの?」
「当たり前だろ。見に行かない訳無い」
「ま、そうよね」
「いやー、5日後が楽しみだなぁー」
そう言って俺はベットに寝転んだ。
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