泳げないならば亀に乗ればええんですよ(?)
ザザー……。
うーん、波が良い音出してるぜ……。
「ちょっとー! イイジマなに寝てるのよー!?」
ルリカが俺の視界の上からヒョコッと顔を出す。
「うるさいなぁー、波の音を聞きながら寝っ転がる何て殆ど出来る機会がないんだからやったって良いだろー?」
「私達がここに来た目的! 覚えてる!?」
「……海水浴?」
「ちっがぁーう!」
「分かってる分かってる、人魚族の国への行き方、だよな?」
「何だ、ちゃんと覚えてるじゃない」
「俺が忘れる訳ないだろ」
「で、どうやって行けば良いの?」
「お前泳げないからなぁ……」
「あ……えっと……」
「……まさか、お前もか?」
「……その……まさか……」
お前もかよニル!
「よくそれで日向ぼっこ出来たな」
「気持ちよかったから……つい……」
「はぁー、仕方ない、裏技で行くぞ」
「どうやるのー?」
レカがいつの間にか海から戻って来ていた。
「通称、浦島太郎裏技だ」
「うらしま……たろう……?」
「誰それー?」
「まあ、なんて言うか……よぼよぼの爺さんになった男……?」
「いずれ貴方もなるじゃない」
「よぼよぼにはならねぇよ。まあ取り敢えずついて来てくれ」
そう言って海岸を歩いて、お目当ての生物を探す。
「いた」
そう、目の前には大きな亀がいた。
「亀? その子をどうするの?」
「この子に裏技をやるんだ」
「え、この子に!?」
ルリカが亀と俺の間に入る。
「ダ、ダメよ! そんな可哀想な事させられない!」
お前は裏技を何だと思ってるんだ……。
「大丈夫だ、痛い事とか辛いことはさせない」
「そ、そうなの?」
「大マジだ。俺だって辛い思いをさせたい訳じゃないからな」
「だったら……まあ……」
ルリカが俺の前から退く。
「さてと、んじゃあコイツを……おらぁっ!」
亀を思いっきり蹴り飛ばす。
「ちょっとぉぉぉぉぉおお!?」
ルリカが俺の肩を掴んでグワングワンとしてくる。
「さっき痛い事とかしないって言ってたわよねぇー!? 何やってんのよぉー!?」
「待て待て落ち着け」
「落ち着いてられないわよ! イイジマ何亀を蹴り飛ばしてんのよ!」
「あの程度じゃあの亀痛くも痒くもないぞ」
「……え?」
あの亀の甲羅は相当頑丈で、俺がインワドで量産していた最強の剣でも3回は斬らないと倒せないのだ。
なので、あの程度の蹴りじゃあ全然大丈夫なのだ。
「でも、蹴り飛ばしちゃってどうするのよ?」
「まあ見てろ」
ピューッと落ちて来て、ドシーンと落ちた衝撃で近くの地面が揺れる。
『……キュキュウ』
亀が本来は出さないであろう声で鳴く。
「ど、どうなってるの?」
「バグらせた」
「それは分かってるのよ!」
「細かく言うと絶対分かんないだろうから少しザックリ言うと、懐かせた」
「……この亀ってアッチ系の亀なの?」
「違う違うそうじゃない。この亀は一定の距離地上離れて落ちると、最初に見たやつに何か懐くんだよ」
「……やっぱそれってアッチ系の亀なだけじゃ」
「違う」
「でも」
「裏技だ」
「あっ、はい……」
因みに本当に裏技である。
一定の距離離れて落ちると言っても、本当にそのラインはシビアなのだ。
だから諸君、勘違いしないでくれよ?
「でもこの亀でどうするの?」
「この亀に乗るんだ」
「……はい?」
「楽しそー!」
「ああ、楽しいぞレカー」
「乗るって、え? これに?」
「そうだが?」
「危なくない!?」
「ところがどっこいこれが安全なんだなぁー。俺に懐いてるから襲ってこようとしないからな」
「はぁー……まあ、その時はその時よ」
ルリカが亀の甲羅の上に乗る。
「どうだ乗り心地は?」
「意外とイケるわね」
「だろ?」
レカを乗せて、ニルと共に乗る。
「それじゃ、しゅっぱーつ!」
『キュルゥー!』
亀が大きな声で鳴き、動きだす。
「「「「…………」」」」
『ノソノソ』
「えと……遅くない?」
「そりゃ、亀だからな」
「日が暮れる……」
「遅ーい!」
その言葉に亀はキレたのか、こちらを少し睨んでから高速でヒレをバタバタと動かし始めた。
「うおお……! これなら……!」
……まあ、1.3倍にはなったかな?
「……気長に待つか」
「そうね」
そして俺らは、飲み忘れていた水中呼吸薬を飲んだりして、亀が海に入水するのを待った。
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