そろそろ、場所を移しましょうか
「おーい、皆んなー」
部屋に戻って皆んなにそう声を掛ける。
「何?」
「なになにー?」
「どうしたの……?」
「そろそろ……この村を出ようと思うんだ」
「えっ、何で?」
「今日俺を狙って襲いに来た奴がこの村に来たろ? これ以上ここに迷惑をかける訳にはいかない」
「まあ……確かにそうね……」
「と、いう訳で! 次に行く場所を決めたいと思いまぁーす!」
「わー!」
レカがパチパチと手を叩く。
「で、どうやって決めるの?」
「簡単だ、多数決で決めるんだよ」
「なるほどね、なら私は……ヴィルガの町に行きたいわ!」
ヴィルガの町は、はっきり言ってこれといった特徴はない。
だが、あそこは意外とモンスターが多い場所にある為、冒険者ギルドの掲示板にモンスター討伐の依頼が無いことが無い。
要するに戦闘狂ウェルカムタウンって事だ。
「私は……イレカ町に……行きたいな……」
イレカ町は、ニルの住んでいた国のジルファーナの様に、音楽で栄えている人族の町だ。
確かにニルが行きたい理由も分かる。
「レカは?」
「うーん……人魚さんの町に行きたい!」
「レカちゃん、人魚さんの町は空想上の――」
「よし、じゃあそこ行くか」
「「……え?」」
「ん? 何か変な事言ったか?」
「いやいやイイジマ、人魚の町、正確には人魚族の国は存在してないじゃない」
「いやいや、あるぞ」
「あ、あるの!?」
「ああ、まあここから少し遠いが……テレポート裏技を使えば一瞬だろ」
「な、なら私も人魚族の国が良い!」
「私も……! そこが良い……!」
「よし、じゃあレカの案で決定!」
「やったー!」
レカがぴょんぴょんと飛び跳ねる。
可愛い……。
「んじゃ、まずは皆んなに別れでも言いに行くか」
「そうしましょ」
そして俺らはまずベクト爺の所に行った。
「そうか……行くのか……」
「ああ、まあまた戻って来るさ」
「その時を待っておくとするわい」
「ああ、じゃあな」
そう言って教会から出ようとしたが
「待てイイジマ」
ベクト爺に呼び止められた。
「何だ?」
「先程の偽樹神様の事なのじゃが、あれは……相当闇が深いぞ……気をつけるのじゃ」
「……胸に刻んでおくよ」
そして次はイライザの元へ向かった。
「よー、元気してるかー?」
「めちゃくちゃ元気だけど、どうしたの? 疲れてるんじゃ……」
「ああ、明日から明後日くらいにこの村を出ようと思ってな」
「あっ、そうなんだ……少し寂しくなるなぁー」
イライザが少し悲しそうな顔をする。
「で、そこで提案なんだが、俺らと一緒に旅をしないか?」
「え?」
「ほら、どーせここにいたって暇だろ? だったら俺らに着いてきた方が良いんじゃないかなぁー、と」
「……」
「どうだ?」
「……誘ってくれたのは嬉しいけど、行けないや」
「何でだ?」
「一応私はここの司書だから、他の事にうつつ抜かしてる暇はないの」
「迷路をさせたりとかがか?」
「あれは侵入者対策って言ってるでしょ!」
「悪い悪い、まあ、行かないってなら強制はしないさ」
「ありがと、というか、会いたくなったらこっちらから行くよ」
「あの分身ちゃんか」
「そそ」
「あれ便利だよな、やり方教えてくれよ」
「私の力でやってるから無理でーす」
「どーせこの禁書のどれかにあんだろ?」
「あるにはあるけど……探すのは無謀ね」
「そうだな、一生かけても無理そうだ」
見渡す限りの大量の本、冗談抜きで5000万冊はありそうな量の中から探すのは無理だろう。
「まあ私はどこにあるか分かるんだけど」
「なら教えてくれよ」
「自我が保てなくなって廃人になるけど良いの?」
「……やめとくわ」
「賢明ね」
その後、イライザはルリカ達とも色々語り合っていた。
途中、「イイジマってそういうとこあるよねー」と聞こえたが……聞かなかった事にした。
「それじゃ、俺らは帰って準備でもするわ」
「分かったわ、まあまた今度、ね」
「ああ、また今度」
そう言って部屋に帰ろうとした――が。
「あ、そうだイライザ」
「何よ、良い感じでお別れ出来そうだったのに」
「そんなに俺とお別れしたいのか……? じゃなくてだな、ここに来る時に魔法を100個程描かれた魔法陣があるって話したろ?」
「あぁーしてたね」
「お前のその力なら、あの魔法陣がなんなのか分かるんじゃないか?」
「分かるも何も、あの魔法陣私が作ったものだよ?」
「……はぁ!? 何でもっと早く言わないんだよ!」
「だって、イタズラしたくなっちゃって」
「そうだったな! ベクト爺が言ってたもんなイタズラっ子って!」
「それは……」
「取り敢えず、あれ一体どうやるんだ? 禁書を使う以外で!」
「無いわよ」
「マジかー」
あれが出来る様になれば相当戦略の幅が広がるんだけどなぁー。
仕方ない、あれに匹敵するレベルの裏技を探すとするか。
「まあなんだ、頑張るとするよ」
「頑張って応援してる。それじゃまたねー!」
そう言ってイライザは消えた。
さてと、んじゃあ頑張って探すとするか!
そう思いながら、ルリカ達と図書館を出た。
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