裏技マスター
「ふぅー」
VRを外して一息吐き、パソコンの電源を付けてカタカタとキーボードをいじる。
そしてメール画面を開き、今回新たに見つけた裏技を、運営宛てに書き連ねて行く。
「……よし、まあこんなもんかな」
出来上がったメールを見ながら、俺は背もたれに寄りかかった。
インフィニア・ワールド
通称インワド。
とんでもなく広大なフィールドに、超高性能なAI。
さらには完全オリジナル職業なんかも作れたりする自由度が超高めのVRMMORPGだ。
このゲームにて、俺はデバッカーと呼ばれる職業を勤務しながら遊んでいる。
デバッカーとは、まあ裏技や不具合なんかを探して運営に報告する仕事だ。
俺はそんなデバッカーの中でもかなりの好成績を収めていて、今まで発見、発見された裏技を全てフル暗記しているからか、何故だか同じ会社のデバッカー達に裏技マスターなんて呼ばれてしまっている。
物凄い恥ずかしい……。
でも、何かその二つ名的なやつ個人的にカッコいいと思うからやめてくれって言えないんだよなぁ……。
「あ、ここ誤字ってる」
両腕を伸ばし、高速で文字を打ち直す。
因みに、今報告しようとしている裏技は、どんなアイテムでもミスリルに出来てしまう
という裏技だ。
これを発見した時は流石にビビったなぁ……。
ミスリルはマジもんのレア鉱石だから、それを簡単に量産出来るともなれば、まあワールドマーケットがイカれるからな。
メールの修正をし終わり、送信ボタンを押してクルクルと回転椅子で回転してからカップラーメンを作る為に立ち上がった。
そしてお湯を入れ、椅子に座って待っていると、扉の向こうから一通の手紙が入れられた。
「ん? あぁ……」
それは、学校への再登校催促の手紙だった。
「またこれか」
俺は一応チラッと中身だけ読み、いつもと同じ内容なのを確認するとゴミ箱へ捨てた。
全く、本気で戻って来て欲しいんだったら毎回毎回同じ内容にするなよ。
再度VRを着けて寝転がる。
『ピロン! メールが届いています!』
「……はぁ?」
メール? 俺に?
どういう事だ?
俺は裏技を報告したりしている仕事柄その裏技を多用していた人によく逆恨みされる。
なので運営に頼んでアカウントIDを一分毎に勝手にコロコロ変えてしまうというとんでもない裏技の使用許可を貰って使用している。
それにまず運営からのメールはゲーム内デバイスでは無くパソコンに送って貰う様にも言ってある。
そう、つまり、この俺に運営以外の人がメールを送る事は《《不可能に近い》》。
「一体どうやって……取り敢えず見てみるか」
視界の端で揺れるメールマークをポチッと押す。
『おめでとうございます! 貴方はインニィニア・ワールドの最新バージョンのテストプレイヤーに選ばれました! 最新のバージョンをプレイしますか?』
そう書かれたメールが表示されると、下の方に【はい】と【いいえ】という二つの選択肢が出て来た。
「……何だこれ」
こんなの聞いた事が無い。
はぁ。どうせ悪質なイタズラだろう。
届いた理由も、適当にこのメールを送るアカウントのIDを入れていたらたまたま俺に来てしまったって感じだろう。
「ふっ、今時こんな事をやる奴もいるんだなぁ」
それもインワドで。
「まあ、【はい】を押してやるかぁ」
俺が【はい】を押したのにはちゃんと理由がある。
仮にこのメールにウイルスが入っていてデータが壊れたとしても、別のVRにバックアップを取ってあるのだ。
しかもちゃんと最後にインワドからログアウトする瞬間までが保存されている。
なのでこのVRのデータが消えても、痛くも痒くもないのである。
「うん……? 何か……眠く……」
俺はVR内でバタッと倒れる。
「う……クソが……一体……何が……」
瞼の重みが鉛の様になりながらもなんとか俺は目を開け続けていたが……流石に耐えられず、目を瞑ってしまった。
因みにだが、先程のメールには下の方に小さくこう書かれていた。
『最新バージョンの内容
・新ステージの追加
・新NPCの追加
・既存のステージの一部変更
・インフィニア・ワールドの、《《自身のアバターへの転生》》
注意:最新のバージョンを心から楽しんで頂きたいので、このメールの閲覧記憶は消去させて頂きます。ご了承下さい』
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