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銀次のバイト

 学校が終わり、今日は桃井家で晩御飯を食べる予定の銀次とソラ。スマフォケースの組み立てパーツをソラの家に取りに寄ってから桃井家に到着。しかし、ちゃぶ台を挟みソラはムッスーと膨れていた。どうしたものかと銀次が頭を抱えていると、哲也が帰宅して居間を覗く。


「ただいま……どしたの?」


「……お帰り。色々あってな」


「お帰りなさいテツ君。……銀次がモテモテになったんだよ」


「落ち着けソラ。俺はお前以外にゃ興味ないっての」


「グフッ、ストレートに言われると嬉しい……でも、こうなると銀次から離れたくない欲求が抑えられないのさ。このまま連れて帰りたい……」


 ジリジリと銀次に近づいていくソラ。このままでは『尽くしたがり』をされてしまうと銀次は冷や汗を掻いていた。嫉妬した今のソラならば過激な事をしてきそうだ。今日の食事が桃井家で行われたのはある意味僥倖であったと言えるだろう。


「とりあえず、何があったのか説明してよ」


 哲也が鞄を降ろして腰かける。


「うぅ、実は――」


 ソラからやや誇張された説明を受けた後、哲也はため息をついた。本人達がどう思っているか知らないが、傍から見ればいつものイチャつきと大差はない。


「大丈夫ですソラ先輩。兄貴は鈍感だけど、先輩を裏切るようなことをするような人じゃないんで」


 哲也の言葉にやや暴走気味だったソラが落ち着いてシュンと縮こまる。


「……うん、わかってる。ごめんね銀次。銀次のことは信じているけど、ボクが銀次に相応しいのか自信が無くて、甘えちゃってるんだ。わかってるけど、つい……」


「謝ることはねぇぞ。俺だってソラに相応しい男なのか怖くなることあるからな。よしっ、この話は終わりだ。飯でも作るか」


「うんっ」


 ガシガシとソラの頭を撫でる銀次。幸せそうなソラを見て哲也はうんうんと頷き、着替える為に立ち上がった。先に台所に言って準備を始めるソラ、銀次は哲也を追う。


「すまん、助かった」


「……別に、何をしなくてもすぐに仲直りしてたよ」


「それはそうなんだが、あのまま放っておくとソラは俺の身の回りのことを全てしかねんからな」


「難儀だね」


「楽しいけどな。飯、腕によりをかけるから待っとけ」


 カラカラと笑って台所に向かう銀次と薄く笑みを浮かべる哲也。しばらくすると、食欲を刺激する香ばしい匂いがただよってきた。哲也が居間に戻るとデンと机の中央に回鍋肉が乗せられていた。そして二人でドヤ顔で哲也を見てくる。炊飯器も横に設置されており、ご飯がおかわりできるように準備されていた。


「自信作だ。是非感想を聞かせてくれ」


「はい、大盛り。スープもあるからね」


 どうやら二人のお礼のつもりらしい。哲也が取り分けられた回鍋肉を口に入れる。その後に、無言で白米をかっこんだ。甘辛の味付けに歯触りの良い野菜には豚肉の旨味が染み込んでいて、いくらでも食べれそうだ。


「モグモグ……美味しい。明らかに家で作れるレベルじゃないけど……」


「油通しからしっかり作れば美味しく作れるよ。ボク、野菜の色で火入れするの得意だし」


「鍋振りは任せとけ。ちなみに甜面醤もソラの手作りだからな」


 哲也の反応を見てハイタッチするバカップルを見て、哲也は無表情のまま回鍋肉と白米に向き合うのだった。食事の片付け後、思い出したように哲也が口を開く。


「あっ、兄貴。そういえば母さんからメール来てたよ。多分バイトのことなんじゃない」


「おう、わかった」


 『バイト』という単語にソラが反応して、にゅっと顔を近づける。


「そういえば銀次ってお母さんの仕事を手伝っているんだよね。どんなことをしてるの?」


「あん? どんな事って言ってもなぁ……基本的には色んな工場の部品の営業だな。フリーで色んな工場と契約して品物や売ったり、作ったり。あるいは需要を掘り出して仕事として工場に繋げるとかだ。機械製品の部品が主だったけど、最近は親父が色々手を広げて繊維とかも売ってるな」


「あんまり聞かない仕事だね」


「あぁ、もともと母さんはそこそこ大手の企業の営業だったらしいんだが、不況で仕事の無くなった知り合いの工場を助ける為に、勤めていた仕事を辞めて今の仕事を始めたらしいからな。儲けとか度外視してたはずなんだが、逆に儲かってそれ一本に絞ったって感じだ」


「人助けを仕事にしちゃったんだ。凄いっ!」


「「……」」


 目を逸らす桃井兄弟。二人の様子に怪訝な表情をするソラだったが、先に銀次が口を開く。


「ま、まぁ、そんな感じでバイトってのは母さんが出先で話を通したものを、書面にまとめてクライアントに提出するような高校生でもできるような簡単な事務だよ」


「俺も手伝いたいんだけど……母さんも兄貴も許してくれない……」


「哲也はまだ中学生だからな。高校に入ったら許可も下りるだろ」


「兄貴は中学の終わりにはバイトしてたじゃん」


「暇してたからな。親父も忙しかったし」


 そう言いながら、ちゃぶ台にノートPCを置いて起動する銀次。メールに目を通して、簡単にメモを取った。


「……悪いソラ。明日、明後日とバイトになりそうだ。勉強は来週からな」


「ん、わかった。ちょっと寂しいけど仕方ないね。久しぶりに画塾で描こうかな……夜、IINEしてもいい?」


「あんまり遅い時間にならないならいいぞ。埋め合わせはするからよ」


「うん」


 その後はスマフォケースを組み立てて、おそろいのケースにテンションが上がった二人があれこれ話をして、銀次がソラを送ったのだった。

 帰宅した後、下着姿のままソファーに寝転んだソラはスマフォを確認してため息をついた。


「画塾、明日はお休みかぁ。先生、気分でお休みにするからなぁ。家で描けばいいか」


 ため息をつくと、ピロンとメッセージが届く。相手はスズだった。


『明日暇? 銀次との濃い、恋バナ求む!』


「おぉ、ナイスタイミング」


『かしこまりました老師!』


 と返答して、スタンプを送り。明日の待ち合わせ場所を話し合ったのだった。

次回の更新は多分月曜日です。


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奴隷に鍛えられる異世界生活

― 新着の感想 ―
[一言] 回鍋肉をデンと机の真ん中にデンととクライエントの所が誤りでしたよ
[一言]  哲君強く生きろよ。    まあ隠れてふたり以上のスペックを持っていた、なんてことになっても不思議じゃない。  きっと「2周目」だからな!
[良い点] グフフ••• 結局イチャコラやないかい!と ツッコミたくなるラブコメ。 グフフ••• 何でもイチャイチャの材料にしますね。 [気になる点] テツ君本当に学生ですか? 冒頭の「今を覗く」は誤…
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