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待ち合わせ

 自転車でソラを家まで送り、それぞれが別の時間の電車で街の方へ向かうという打ち合わせになった。ソラ曰く『デートってのは、待ち合わせからスタートっぽい』とのこと、家に帰ると受験生である哲也は帰って勉強をしている。


「ただいま」


「おかえり兄貴。今日はソラ先輩と一緒じゃないんだ」


「あぁ……なんつうか、駅前のケータイショップへ行くことになってな。現地で待ち合わせだ」


「へぇ、待ち合わせなんて、いよいよデートみたいだね」


「デートらしいぞ」


 銀次の言葉に哲也はしばし無言となり、そして麦茶を一気飲みした。

 

「それは……頑張らないとね。いよいよ、兄貴もソラ先輩に自覚させられたか」


「……まぁ、ぼちぼちだな」


「この期に及んで!? ソラ先輩……頑張ってくれ」


 遠い目をする哲也を後目にTシャツにパーカー、ジーンズと言った普段の格好に着替えて銀次は家を出た。デートの為の服なんて持っていないし、下手に悩んで待ち合わせに遅れたくなかった。


 一方ソラは自室にて、クローゼットから服を取り出しては床に並べて組み合わせを考えていた。

 着る服がないとは銀次に言ったが、それでもベストは尽くしたいのが乙女心である。愛華の服をコーディネートしていた時はカジュアルからフォーマルまで、完璧に用意して見せたが自分のデートに何を着ればよいか、まったく見当がつかない。こうしている間にも時間は過ぎていく。


「ここは、お伺いを立てるしかないか」


 ムンと気合を入れてスマフォを取り出し、以前連絡先を交換した美鈴にIINEを送る。


『老師、助けて』


『老師ちゃうねん。どした?』


 カバのスタンプ付きで返答が来る。


『銀次と、デートするんだけど、どんな服を着ればいいかわかんない』


『やったじゃん。季節に合った服でよくない? どこにどんな目的でいくの? 待ち合わせはどこ?』


『銀次のスマフォの設定をしたり、デートの服を買ったりする予定。待ち合わせ場所は駅前の噴水だよ』


 合体ロボがオーラを纏うスタンプで気合を示すソラ。


『デートの服をデートで買うのか……どんなのがあるか見せてみ』

 

 そんな感じで、美鈴と相談しながらデート(戦)に備えるのだった。

 準備が完了し、ソラがお礼のメッセージを送る。

 

『ありがと、スズ』


『フォフォ、行ってくるのじゃソラよ』


 結局老師キャラになったスズがスマフォを閉じる。ちなみに、彼女がいる場所は()()のファストフード店である。学校の友達と帰りによってだべっている最中にソラからのメッセージを受け取ったというわけだ。そして、ニンマリと笑みを浮かべ友達に用事が出来たと別れを告げる。


「フッフッフ、そりゃ、見に行くっしょ」


 そう言って、ショップの場所を調べる為にスマフォのアプリを起動させた。

 そんなことが起きているとは露知らず、銀次は待ち合わせ場所の駅前の噴水に先に到着していた。

 ソラとは同じ路線だが、自分が先に乗ることはわかっていたので噴水のへりに腰かけ、ソラを待つ。


 待っていると、昨日の頬へのキスや甘えてくるソラを思い出して悶々としてしまう。週末にソラの過去を聞くまではならべくそう言った意識はしないつもりだったが結果は惨敗といっていいだろう。というか、可愛い女子にあんな態度をとられて意識しない男子は存在しないと言える。


 そして銀次自身、気持ちの変化を確かに感じていた。ソラを『幸せにする』から『自分が幸せにしたい』と望んでしまっている自分がいる。この気持ちに名前を付けるなら……。


「……馬鹿野郎。筋が立たねぇぞ」


 思考を続けているとドツボにハマりそうなので、頬を叩いて思考をリセットする。

 待ち合わせ時間は特に決めていないが、今の時間は5時を少し回ったくらいでまだ周囲は明るい。ショップに予約を入れたり、帰り時間を調べているとクイっと服を引っ張られる。


「ちっす」


「……おう」


 ソラがそこにいた。ショートの髪は普段よりも少し毛先を丸め、いつものゆったりしたシャツを太いベルトで止めて身体のラインを出しつつ、ジーンズを履いていた。女子っぽくはないと言えばそうなのだが、ソラが小柄であり、ベルトで腰の細さ強調しつつグッと胸元を持ち上げている為に女性らしさをアピールできている。


「あっ、間違えた。コホン……待った?」


 見惚れる銀次に対し、ソラがお約束の一言を口にする。


「電車一本分は待ったぞ」


「そこは今来た所っていうのがマナーらしいけど、待たせてごめんね。髪が決まらなくてさ。どう? 女子っぽい?」


 ずいっとソラが体を寄せると、銀次からは大き目のシャツの隙間からちらりと青い何かが見えて、慌てて目線をそらす。


「そうだな。可愛いと思うぜ」


「エヘヘ、流石老師」


「老師?」


「なんでもない。じゃあ、行こっか」


 上機嫌になったソラが、照れる銀次の腕をとって歩き始める。こうして二人の初めてのデートは始まった。


 そして、その様子を見守る影が一つ。ソラが現れて銀次に身体を寄せたあたりからアワアワと震えていた。しかも現在進行形で腕を組んでいる。あと、ソラが可愛すぎて後で画像を送って欲しい。


「いや、もう、付き合ってんじゃん!!」


 周囲の人の視線も気にせず、恋愛老師は叫んだのだった。

 

次回は明後日更新です。


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― 新着の感想 ―
[一言] 老師ツッコミありがとうぅ! ぜひそのままキャンセルドライブラッシュでソラに畳み掛けて既成事実を作らせてください(過激派
[一言] 代わりにツッコんでくれてありがとう、老師(歓喜) 見守り隊はホントに見守るだけでツッコミ不在だったから…。 二人共はよ自覚しろ!
[良い点] まずい、このままでは老師が糖分過多になってしまう…! [気になる点] さすがの銀次ももう自分の心に嘘つけなくなってきてますねぇ(ニヤニヤ) 果たしていつになったら認めるのか…。 [一言] …
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