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ラブレター?

 二人が色々濃い昼食を終えて、教室に戻るといつものように愛華の周りに人だかりができていた。


「夏にコンクールに絵を出すんでしょ、どんな絵か今から楽しみです」


 他クラスの女子数人、愛華に話しかけている。どうやら夏休みに向けて愛華はコンクールに絵を出すようだ。愛華はいつものように笑顔で答える。


「ありがと、この学校の代表のような気持ちで頑張るわね」


「愛華さ……愛華さん。文化祭の看板のデザインとても好評でした」


「デザイン、あぁ、あれね。良かったわ」


 男子生徒が看板のデザインの話題をダシに愛華に話しかける。


「はい、ところで色の指定はどうしますか?」


「あぁ、えっと。後で画像にして生徒会のフォルダに入れてもらえるかしら、指定しておくわ」


「はい、助かります」


 次の授業の準備をしながら銀次は聞き耳を立てていた。確か看板のデザインはソラが愛華のかわりにした仕事のはずだ。少しずつ、ソラがいないことの影響が出ているのかと考える。

 一方ソラは、昼に自分がしてしまったこと(膝に座って頭を寄せる)について今更ながらに恥ずかしくなって、それでも嬉しくて何度も頭の中で反芻していた。愛華の様子は眼中にないようだ。


「……」


 そんなソラを愛華の後ろにいる澪は睨みつけていた。

 放課後、二人はいつものように生徒会横の資料室へ向かう。


「今日の雑用はなんだ?」


「えーと……今日は資料の製本だね。道具も資料室にあるから、印刷してさっさと終わらせれるね」


「書類作らないなら余裕だな」


 そんなことを言いながら資料室の鍵をソラが差し込こむ。中に入り、プリンターの電源を入れてパソコンにある資料を頼まれた部数印刷していく。二人で分担しながら慣れた調子で仕上げていくのだが、ソラは昼休みの熱が冷めておらず、銀次も黙っている為、雰囲気は少し緊張していた。


「なぁ、ソラ」


「ふぁい! な、何さ?」

 

 不意に呼ばれてソラが飛び上がる。


「そんな驚くことないだろ。そろそろ、この作業を断っていいかと思ってな」


「……何でさ。別に苦じゃないよ?」


 銀次と一緒に作業をする時間が割と楽しみだったソラは不満げに唇を尖らせる。


「愛華の奴に、ソラがどれだけ頑張っていたかをわからせるいいタイミングだと思ってな。これまでは向こうの報復を警戒していたけど、最近は俺達のことを知っている奴も増えたし大丈夫だろ」


「銀次がいればそれでいいけど……て言うわけじゃないんだよね。陰口を言われても周囲に人がいると遮ってもらえるし、荷物だって隠されなくなった。確かに知ってもらえるって大事だったんだね」


「お前が凄いことは俺は知っていたからな。知ってさえもらえれば不当なことは減ってくんだよ。この作業だって、お前がいなければ生徒会の誰がやるんだよ。もっとアピールしたっていいんだ。それをさせてもらえないなら、やめりゃいいのさ」


 ペシっと完成した文化祭資料を指先で叩いて、銀次が悪い顔をする。


「でも、愛華ちゃんに断りの連絡を入れるのは怖い……かも」


 朝は勢いで言えたが、改めて断ると言う意思表示をすることには抵抗があった。愛華がソラに打ち込んだ楔はまだ刺さっている。俯くソラを見て、まだ早かったかと銀次は頭をかいた。焦ってどうこうなる問題ではない。また、日を改めて提案するかと考えていると、ソラが銀次の袖を掴んだ。


「ソラ?」


「怖いから……一緒にいて欲しい。そしたら、怖くてもきっと言うことができると思うんだ」


 その手は微かに震えているが、銀次を見る視線は強い決意を示していた。

 銀次はソラの頭に手を落く。


「お前は俺が思っているよりも、凄い奴だよ」


「銀次は自分で思っているよりも、いい男かもね」


「『かも』は余計だっつうの」


 銀次が雑に頭をくしゃくしゃにしてソラは気持ちよさそうに目を細めた。

 そして、二人で製本した資料をカゴに入れて職員室へ運んだ。

 

「明日、朝のホームルーム前にさくっと言っちまおうぜ」


「うん。頑張る。やらいでか!」


「ハハ、その意気だ」


 雑用を終えた二人はソラの家に帰り、ソラ『尽くしたがり』で銀次は肩回りのマッサージを受けたり、満足いくまでヘ〇シオの機能を使って二人で料理を楽しんだりしたのだった。

 

 翌朝、二人が登校すると、今日も今日とて生徒会は挨拶をしているようだ。

 昇降口を通り過ぎて靴箱に移動する。


「今日も挨拶は無理だね。でも、愛華ちゃんとのことは頑張るよ」


「気合はいってんな。挨拶も教室への行きがけでもできるだろ。知った顔も増えてるしな。あん?」


「どしたの?」


 靴箱を開けた姿勢で銀次は訝し気な表情で止まっていた。


「何か入ってるな」


 銀次が取り出したのは封筒であり、可愛いマスキングテープで止められたものだった。

 ソラが顎が外れんばかりに口を開ける。


「ラブレターじゃん」


「マジか……初めてもらったぜ」


 ソラは頭から愛華とのことはさっぱり抜け落ち、目の前の緊急事態に頭が一杯になったいた。

明日は更新お休みさせてもらいます。すみません。

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奴隷に鍛えられる異世界生活

― 新着の感想 ―
[良い点] 罠みたいに思えても呼び出しに引っ掛かるのが男の子という生き物なのです………銀次君はどうなるのやら… [一言] 毎日投稿ってかなりキツイですよね。 ゆっくり自分のペースで頑張ってください
[一言] EMERGENCY!!EMERGENCY!! て感じでソラの頭の中は今頃真っ赤だな。 銀次は自分へのアクションだからどうでも良さそう。
[良い点] 十中八九罠だと思いますが、ソラちゃん ヤンデレモード発動かと思うと激熱演出 とも言えます。 フフフ。ラブコメしていますね。 [気になる点] 今までソラちゃんに任せきりだったので いくら自分…
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