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バカップル大作戦!!

 ホームルームが終わり、喧噪冷めやらぬ中でソラは銀次を囃し立てる男子をひと睨みで黙らせてその腕をとって教室を出て行った。愛華はそんな二人の様子を確認すると満足げに鼻を鳴らして取り巻きと生徒会室へ向かったのだった。

 一方教室を飛び出した二人は靴箱は自転車置き場に着くと銀次をサドルに押しやって坂道で自分は座布団を撒いた荷台に乗り込む。


「あー、ソラ?」


「……ボクんに向かって」


 傾くのが早くなった夕日の中、地の底から響くような声だった。今は何も言わない方がいいと察した銀次は、無言で自転車を漕いで寄り道することも無くソラの家に到着する。

 腕を牽いて銀次を家に引き入れたソラは後ろ手で鍵を閉めた。


「……むー」→ほっぺプクー&涙目&上目遣いで銀次を睨みつけるソラ。


「ソラ、聞いてくれ」


「あとでっ!」


 今度は銀次の腕を抱きよせるソラ。階段を上って靴を脱ぎ捨てる。有無を言わせぬ圧力で銀次をソファーに座らせて自分は台所へ駆け込んだ。


 一時間後。


「なんだこれ?」


 目の前に次々と並べられていくケーキやパイなどの菓子達。無言でそれらを用意したソラはエプロンを投げ捨てると、三階へから衣服を持って来て浴室へ突撃した。そして浴室からでたソラは……。


「何してるんだ?」


「見ればわかるでしょ? 銀次にはご主人様になってもらうから」


 頭にはフリルのヘッドドレス、トップスは七分丈のブラウス、膝丈ほどのフレアスカートはクラシカルな印象であるが、その下の黒のニーソックスがどこかコスプレのようで今風であることを表現している。 

 メイド服に身を包んだソラは優雅に一例をして、手に持っていたを物を銀次に差し出した。


「今日のボクはメイドです。なので『ご主人様』これをどうぞ」


「……」


 手渡されたのはいつかのチョーカーである。銀次の横に傅いたソラは白い喉を見せるように顎を上げた。銀次が示されるがままにそれを付けて金具で固定すると、ソラからむふーと鼻息が漏れる。緩む口元を引き締めて、今度はケーキを切り分けて銀次に差し出す。


「『ご主人様』あーん」


「いや、ソラ。これいつまで続け、むがっ」


 ひとしきりメイド姿のソラにケーキを食べさせられた銀次に紅茶が差し出される。

 

「それでご『主人様』。どうしてあんなことをされたのですか?」


「その話し方止めてくれ。こそばゆいんだ。後、話をするなら横に座ってくれた方が嬉しい」


「もうちょっとメイドごっこしたかったけど、大分回復したからお話できるよ。ごめんね、急にこんなことして」


 ポスンと銀次の横に座ったソラは銀次に体重を預ける。どうやら一連の行動は過剰なストレスの反動による激しめの『尽くしたがり』だったようだ。機嫌が直ったソラに銀次は安堵のため息をつく。


「あの場は俺が出た方がいいと思ったからな。四季がソラを引き込むのを止めたかったんだよ。急なことをしたとは思う。むぐっ」


 追加でケーキを食べさせたソラは今度はパイを切り分けながら口を開く。


「わかってるんだ……ボクがちゃんと断らなかったから銀次が助けてくれたこと。ボクを守ってくれたのに……それを理解しているのに、銀次が愛華ちゃんの傍に行くのを想像するのが嫌で、辛くて……己の臆病さと嫉妬心に駆られてメイドになってしまったんだ」


「そんな山〇記みたいに言ってもな。このパイ旨いぞ」


 流石にツッコミを入れざるを得ない銀次である。なんだかんだ悪乗りする余裕もあるあたり、ソラも大分落ち着いてきているようだ。


「あの巨大なストレスを緩和する為にはこれくらいじゃないと。はい、あーん」


「いつ買ったんだよそんな服」


「参考書(少女漫画)でよく出てたから通販で買ったんだ。どうかな?」


 胸元のタイをいじりながらそう言うソラは凶悪なまでに可愛らしく、今更ながらに動悸が早くなる銀次である。服装に負けることなく女優のようにメイド服を着こなせているのはソラ自身の魅力によるものだろう。


「めっちゃ可愛い。抱きしめていいか?」


「よ、よかです」


 銀次からソラを抱き寄せると、すっぽりと腕の中に納まったソラはそのまま首元に匂いを擦りつけるように頭を動かす。


「えへへ、それで……文化祭委員のことだけど。今からでも断ればいいと思う。あの時は上手く口に出せなかったけど、今度はちゃんと言うよ」

 

 ソラの言葉に銀次は首を横に振った。


「いや、委員は受ける。ここで退いたらどんなイチャもんを付けられるかわからねぇ。大方、あのお嬢様はデザインの件でソラの人気が高まったのが気に喰わねぇからこんな乱暴なことしたんだろ。ソラが受ければ前みたいに無理難題を押し付けるだろうし、断ればその理由をこじつけてなんかするつもりだったのかもな。他には俺をソラから引き離したかったとか……」


「やっぱり、銀次を狙って……ブツブツ」


「よしよーし、落ち着けソラ。四季は間違いなく俺を嫌っているし、俺はお前以外は目に入らねぇよ」


 油断するとダークサイドに堕ちそうになるソラの頭を撫でる。


「で、でも、クラスの皆の前で連絡先の交換とか言っていたし……それにやっぱり銀次が愛華ちゃんと一緒にいるの嫌だ」


「男子達のヘイトを俺にむけようとかしてんじゃねぇのかな。それと、俺達に対する嫌がらせってのもあると思うぜ。まったく、しょうもないことしやがる」


「銀次はボクが守るからねっ!」


 気合を入れ直すソラに銀次はしばらく目を閉じて思案した後にニヤリと悪い顔をする。


「四季の奴が何をするつもりかはわからねぇが、奴の狙いを外すいい方法を思いついたぜ」


「おぉ、どんな方法なの?」


「名付けて『バカップル大作戦』だ」

来週は月曜日更新予定です。余裕があれば追加で更新するかもしれません。


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奴隷に鍛えられる異世界生活

― 新着の感想 ―
砂糖で糖度を高めると水分を浸透圧で抜いてしまうので菌を寄せ付けないんです。 ジャムの保存に使う手法ですね。 つまり何が言いたいかと言うと 「もうコーヒーとか言ってないで大量の水分を用意しろ!干からびる…
オールブラックス最大警戒体制へ入る! 今すぐコーヒー豆を150kg輸入しろ!
よく考えてみればヤキモチ妬いた際の行動が、ご奉仕と束縛(自分を)というのはかなり新しいのでは?と今更ながら感心した次第。
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