俺はクールに去るぜ……
ゲーセンで出会った美鈴という女子がソラと話をしたいということで、外のクレープ屋に行くことになった。メニューを見て注文を決める。
「ハンバーグクレープとコーヒーだ」
「そんなのあるの?……えーと、まだお腹いっぱいなんだよね。バナナクリームのハーフで」
「バナナモンブラン、イチゴトッピング、チョコソース盛りで」
銀次、ソラ、美鈴と順に注文して待ち時間ができる。ちなみにテーブル席に座っているのだが、銀次の対面の席にソラ、その横に美鈴が座っており、銀次としては席はこれで良いのかと首を傾げるが女子に言えるはずも無くだんまりである。
「えーと、自己紹介まだだったよね。あたし、海上 美鈴、スズって呼んでいいよ」
「桃井 銀次、銀次と呼んでくれ。二人は友達か?」
「えっと、スズは中学生の時の友達かな」
やや緊張している様子だが、学校で知らない男子に挨拶するよりは喋れている。
ソラにとって慣れた相手なのだろうと銀次は感じた。
「『かな』って寂しー。あたし等、結構話してたじゃん」
「あはは、そうだね。スズはボクと話してくれてたもんね」
「『ボク』……ね。それで二人はなんでスーツでゲーセンなわけ?」
話していいもんかと銀次が目でソラに問いかけると、ソラはすぐに頷いた。
「愛華ちゃんの手伝いだよ。ホテルだからこんな格好なんだ」
「さっきゲーセンでちょろっと聞いたけどさ。姫様の付き人辞めた方がいいよー。やりたいって人はたくさんいるだろうしさ」
「辞めたよ……正確にはいらないって言われたんだけどね」
「マっ! あの姫様が? 中学の時は『絵』以外はソラになんでも押し付けてたのに……へぇ、じゃあフリーなの、遊ぼうよ~。あっ、連絡先交換しよっ。ついでに銀次も」
「俺もか?」
「だってソラのいい人なんでしょ?」
「す、スズ……ち、違うから、銀次は恩人というか……」
モジモジと身体を揺らすソラに対して銀次はどや顔で。
「ダチだ」
と言い切る。美鈴はソラと銀次を交互に見て。手を『T』にした。
「……タイムします」
「あん?」「ふぇ?」
「はい、ソラ連行」
そのままソラの手を取って、どこかに連れて行く美鈴。
「もしかして俺、邪魔か?」
残された銀次は腕を組むのだった。そして連れて行かれたトイレ前の通路で美鈴はソラを問い詰める。
「銀次ってソラが女子だって知らないの!?」
「えっ? ゲーセンで言ったよね。女子だってことは黙ってって」
ズーンと寄って来る美鈴に圧にソラは目線をそらす。
「言われたけどさ。もしかして学校でもそうなの?」
「そうだよ。学校でも男子の振りしている」
「マンガじゃん。体育とかトイレとかどうすんの!? 先生だっているじゃん」
「学校は知ってるよ。ほら、中学の時……色々あったからそのせいで男子の振りをしたいって設定を愛華ちゃんが言って、それが通ってるっていうか。体育は生徒会室で着替えて、ジャージ着て参加できるものは男子のに参加してそれ以外は見学っていうか。先生達もボクを腫物扱いだから……トイレは生徒会の兼用トイレ使えるし……」
「うわぁ……そうか、うちらの中学ってエスカレーターだからほとんど、そのまま進学だもんね。ソラの高校に同中いないんだ」
「いたとしても、もともと友達いないし……本当にスズくらいかな、話してたの」
「凄いことになってたんだねぇ。それで、銀次とはどうなの、どうなの?」
グッと体を寄せる美鈴、銀次の名前が出た瞬間に鼻を赤くするソラを見てニンマリと笑みを浮かべる。すると、ソラのスマフォがなる。
「ま、待って、えと、銀次からだ」
逃げるようにソラがスマフォを見ると。
『邪魔ならそれとなく出てくぞ。タイミングを合図してくれ』
と言ったことが書かれていた。そしてそれを美鈴も横から覗き込む。
「これって、あたしとソラに気を利かせてるつもり?」
「……ダッテボクオトコダシ、ギンジニトッテドウセイダシ……」
感情の消えた目で片言で喋りながら画面を見つめるソラを見て、美鈴は背中を撫でる。
「だ、大丈夫だから。というかあたしが銀次がどういう奴か見てあげる、こう見えて男を見る目はあるから」
「えっ? い、いや、大丈夫……」
「遠慮しなくていいから、さっ、席へ戻ろ」
そのままズルズルとソラの腕を引っ張って二人は席に戻った。
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ジャンル違いではありますが、ハイファンタジーでも連載しております。
作者自身は面白いものを書いていると本気で信じています。下記にリンクを張っていますので、もしよろしければ読んでいただけたら嬉しいです。
『奴隷に鍛えられる異世界』
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