ヒロイン候補?
駅の近くにあるこのゲーセンは二階建ての作りでこの辺では一番大きなゲームセンターだった。
中に入った銀次は慣れた様子で千円を小銭に替える。ソラもそれを真似して小銭を作る。
「凄いね! ねぇ銀次、あれ何?」
「エアホッケーだな。初めてっつうんなら、運動系のゲームからやるか」
一階部分はエアホッケーやバスケゲームなどの運動系のゲームと、クレーンゲームがメインのようだ。
上着を脱いで、エアホッケーを始める。結果は大人げなく全力で勝ちにいった銀次の圧勝だった。
「……一点しか入れれなかった」
「初めての奴に負けるわけいかないからな」
「こういう時って普通、励ます為に手加減するんじゃないの?」
ジト目で銀次を睨むソラにカラカラと笑う銀次。
「遊びは全力がモットーでな、次はバスケやるか」
「ボールは苦手……あっ、あの太鼓のやつやろうよ」
「……音ゲーか」
露骨に顔をしかめる銀次にニヤリと笑うソラ。今度はソラが圧勝する。勝負するゲームではないがスコアはソラが上だ。
「……こういうのは苦手なんだよ」
「フフフ、銀次は音痴っと」
「歌は自信あるっての」
「ほんとかなぁ?」
ニッコニコで煽るソラ、銀次に勝ったことがよほど嬉しかったようだ。
「次は二階いくぞ、格ゲーで勝負だ」
「やらいでかっ!」
二階部分はアーケードゲームやメダルゲームがメインとなっていた。
そこで格ゲーやレースゲームなどをこなして遊んだ後、二人は自販機コーナーで休憩する。
「やー、遊んだね」
「久しぶりに来たが、白熱したな」
「格ゲーはハマりそうだね。コンシューマー買おうかなー」
「さっきやったのなら俺んちにあるぞ、哲也とたまにするしな」
「いいね、お菓子作って持っていくから一緒にやろうよ。あっ、あれシューティングゲームだよね」
「そうだな。これ飲んだらやってみっか」
「うん、ホラーは大好きなんだよね」
立ち上がり、空いている筐体を探して二人プレイで始める。選んだのは洋館でゾンビを撃ちながら脱出を目指すゲームだ。
銀次は慣れた様子でボーナスも取っていく、ソラは初めこそはセンサーのズレに馴染めずゲームオーバーになったが、二回ほどコンティニューを経て慣れたのかそこからはミスも無く進むことができた。
10分ほどプレイして一面のボスに辿りつく。
「銀次っ、ひ、左からおっきいのが来たよっ!」
「チッ、ショットガンの弾がねぇ。ヘッドショットじゃねぇとダメージ通らねぇな」
「わわ、無理無理。一回死んで、弾追加で復活しようかな」
「馬鹿野郎、金にモノ言わすプレイはロマンがねぇ。死ぬ気で粘れ」
「うぅ……実は、腕がツリそう。あっ、左突破された」
「なにぃ、クソッ、死んだっ。特殊弾を温存しとくべきだったが」
「そうだね。あぁ、腕がパンパンだよ」
満足した二人が銃を筐体に立てかけて、振り返ると女子が一人立っていた。ウェーブのかかった茶髪で目が大きく可愛らしい容姿だ。
ゲームを待っていたのかと銀次が道を譲るが、そうではないようでマジマジとこちらを見ている。
休日なのに制服を着ているが、銀次達の学校のものではない、確かここから近い女子高の制服だったと銀次は思いだす。
「……ジー」
茶髪はソラに興味があるようで、顔を寄せる。
「な、なに? ぎ、銀次」
不意に近づかれて怖いのか、銀次に助けを求めるソラ。まだ慣れていない人と喋るのは苦手のようだ。
「おい、何かようか?」
「……やっぱソラじゃん! アタシだよ。海上 美鈴」
自分を指さして名乗る茶髪にソラが顔を寄せる。お前等男女なのにそんなに近づいて大丈夫なのかと銀次は思った。
「スズちゃん? わっ、久しぶり」
「おひさー。卒業式以来じゃない? ところで、何でそんな恰好してるの?」
「えっ……あぁこれは…なんていうか」
言葉を濁すソラを見て、美鈴と名乗った少女は銀次を睨みつける。
「あんたがこんな格好させてんの? 趣味悪いんじゃ、モガモガっ!?」
「ち、違うから。ちょ、ちょっとこっちに……」
ソラが横から美鈴の口を押さえて、銀次から離れて何かを説明している。
それを見て銀次はクワッと目を見開いた。
「ヒロイン候補か、ダチとして応援してやるぜソラ」
一人頷くのだった。
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ジャンル違いではありますが、ハイファンタジーでも連載しております。
作者自身は面白いものを書いていると本気で信じています。下記にリンクを張っていますので、もしよろしければ読んでいただけたら嬉しいです。
『奴隷に鍛えられる異世界』
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