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桃井家にて夕飯

「銀次、今日は何食べたい?」


「ん。今日は俺ん家で飯だろ。むしろ俺が作るからソラの食いたいもん教えてくれよ」


 自転車に二人乗りをして坂道を下っていく。ソラは横乗りで銀次に抱き着き、銀次はブレーキをかけながらハンドルを操作する。


「えー、ボクが作りたい」


「ほとんどソラが作るからたまには俺が作るぜ。たまには俺とテツの料理を食べるってのもいいだろ」


「……手伝う」


「譲らねぇな! 今日は学校でも色々あって疲れただろうから休んでっての」


「それなら銀次の世話をさせてもらったほうが癒されるし」


「いいだろう。こうなりゃ、じゃんけんで決着を付けようぜ」


「むむ、いいよ。勝ったら、尽くしたがりね」


 周囲の注目や愛華からの牽制などを受けたソラを心配する銀次なのだが、ソラ的にはむしろ銀次のお世話をしている方が落ち着くらしい。

 結局、厳正なる話し合い(じゃんけん)の結果本日の晩御飯は銀次と哲也が作ることになった。

 

「兄貴、こっちできたよ」


「おう、じゃ一気に焼くぞ」


 威勢の良い掛け合いと鉄鍋を振る音を聞きながら、ちょっと拗ねているソラだったが、料理をしている銀次を眺めてるのもまた良しと居間から銀次を眺めている。


「……ボクの彼氏、かっこいい」


 おもむろにスケッチブックを取り出して描き始める。そうこうしているうちにエプロンをつけた銀次が大皿を持ってソラの元へやって来る。皿の上には牛肉とブロッコリーの炒め物がデンと盛られている。


「描いてたのか?」


「うん、二人を描いていた」


 描き始めてすぐのスケッチはパースすらもとっていない、最低限の線のみだったが不思議とそれが銀次と哲也だとわかる。後ろから覗いた哲也がエプロンを外しながら卵スープを机に置いて口を開く。


「……いいっすね」


「だな。なんか照れるけど」


「本当に仲いい兄弟だよね。ちゃんと描き上げたら見せてあげる」


 三人でちゃぶ台を囲んで、手を合わせる。


「「「いただきます」」」


 ソラに合わせて辛さを抑えた炒め物はご飯を進める味付けで銀次は白米を口いっぱいに頬張り、ソラは上品にバランスよく食べていた。


「普通に美味しい。ボクも負けてらんない」


「中華は得意だからな。テツも得意だぜ」


「……別に」


 バンバンと背中をたたかれながら、無表情で応える哲也。あっという間に大皿は空になる。


「「「ご馳走様でした」」」


「食ったな~」


 腹をポンポンと叩く銀次。


「そうだね。洗い物はボクがするよ」


「いや、今日は俺がするって」


「ボクが」「俺が」


 食器を取ろうとする二人の横から手が伸びて大皿を持ち上げる。


「……早い者勝ち」


 そう言って哲也が洗い物をするのだった。

 手伝おうとする銀次とソラだったが、追い返される。しょうがないので二人で課題テストに向けて勉強をしていると、洗い物を終えた哲也が台所から出てきた。


「おう、ありがとうなテツ」


「ごめんねテツ君。次はボクがするから」


「……いや、兄貴はともかくソラ先輩が普段からしているのがおかしいんで。いつもありがとうございます」


 哲也はそのまま自室へ戻るようだ。去り際に何かを思い出したように振り返る。


「そういえば、二人の高校の文化祭がそろそろありますよね。兄貴、一応志望校なんで行ってもいい?」


「あん? 確認なんかしなくても、もちろん来ればいいぞ、ダチを紹介してやる」


「うん、よろしく。何人かと一緒に行くかも」


 銀次とソラが顔を合わせる。思い出すのは芸術祭での一幕、複数の女子に囲まれている哲也の姿だった。


「お、おう、そうか。まぁ、いいんじゃねぇか」


「うん、テツ君なら大丈夫だよ……多分」


 女子を複数人つれた弟を男子達に紹介するとどうなるかを想像して遠い眼をする二人。


「……? ならいいけど、じゃあ部屋にいるね」


 二人の様子に首を傾げながら哲也は自室に戻っていく。居間に残った二人がノートをしまいながら先程のことについて話す。


「そういや文化祭があったな。まぁ、今は課題テストに集中しないといけないが……」


「生徒会の雑務をしていた時に資料を読んだけど、結構な本格的だよ。他校からも人が来るらしいし。予算もかなりかけられるみたい」


「そっか。じゃあ一緒に回ろうぜ」


「文化祭デート……これはレベル高いよ銀次、エ〇タークくらいレベル高い」


 女子っぽいと頬を紅潮させて嬉しそうにするソラ。


「10ターンで倒さないとダメなやつか」


「今から楽しみにしとくね。じゃ、じゃあ、約束っ!」


 制服姿のまま、唇を寄せてくるソラに苦笑しながら肩に手を回す銀次。そのまま二人の顔が近づいて……。


「あっ、兄貴。言い忘れたことが……」


「「……」」


「……」


 無言のまま引っ込む哲也。


「ち、違うぞテツ、これは話の流れでたまたま距離感が近かっただけで……」


「そうだよ。テツ君。いくらなんでもここで変な事しないよ!」


「……」


 完全に哲也のことを忘れていた二人による言い訳は夜空に空しく響いたのだった。

次回の更新は、多分月曜日です。余裕があれば更新します。


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奴隷に鍛えられる異世界生活

― 新着の感想 ―
やっぱりこの作品はこうでなくっちゃ いけませんよ。 ラブラブコメコメイチャイチャコラコラ もうすでに愛華嬢の事なんて頭の片隅にも 無いかの如き振る舞い、流石です。 このまま文化祭でも猛威を振るうのは …
なんだろう、このブラックコーヒーとはまた別の需要を生み出しそうな流れは。 ガッツリ焼肉やけ食いしたい。
テツはなんか好意振り撒いてる女子ほっぽらかして男友達連れて行きそうな気もするな…銀次達のせいで基準が高過ぎるし
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