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彼氏、いますから

「あー、ソラち。大丈夫そ? 全然断ってくれていいよ」


「……た、多分大丈夫。うん、がんばる」


 耳打ちしてくるスズに対し、首を横に振るソラ。高校入学してからは周囲の女子からイジメを受けていたこともあり、男子よりも女子の方が苦手まであるソラである。スズがソラの高校での生活について知っていればもっと気を使っただろうが、そのことをソラも銀次もスズには伝えていなかった。伝える必要はない、ここに銀次がいれば、きっと挨拶でもしろと背中を押してくれるはず。だから、ソラは一歩前に踏み出した。


「あの、ボク、ちょっと話すのが苦手……だけど、二人のことは覚えてるよ。六実むつじつさんと津久井つくいさんだよね。うん、よ、よろしくね」


 どうしても声がうわずってしまう。それでも、ちゃんと最後まで言い切った。言えたことに安堵しているとスズも含めた三人がポカーンとしていた。


「は? 可愛いかよ?」


「え、印象ちがーう。あたし達のこと覚えてるのすごーい」


「ソラち……成長したのう、二人のことはムツとツッキーって呼べばいいよ。んじゃ、暑いしカフェでも行こっか?」


「う、うん」


 ここまで来たのなら、頑張ろうと決意するソラ。


「りょ」


「うーす。モールじゃないんだ?」


「ソラちは人込み苦手なの。それに、フルーツジュースが美味しいとこがあるんだ。そこで休憩してから浴衣見ようよ」


 そして姦しい四人は駅前のジュースバーへ行く。基本的に三人の会話を横で聞いているだけのソラであったが、女子の輪の中にいることが新鮮な感じだった。高身長のすらっとした六実がソラに顔を寄せる。


「どしたの?」


「髙城さんのこと、ソラちゃんって呼んでいい? うちらのことはさっき、スズが言ったように呼べばいいからさ」


「……いい、です、けど」


 ギャルの距離感近い! と心で叫ぶ同年代女子のはずのソラである。六実はマンゴーのフルーツコーヒーを飲みながら興味津々とソラに顔を寄せる。


「私もソラちゃんって呼ぶね。コイバナしようぜー。ちゅーか、ソラちゃんしか男子と関わり無さそう。合コンとか開くことないしねー。あたしは候補いるけど」


「見栄をはるなよツッキー、悲しくなるだろ」


「ボクは、か、彼氏います」


 会話の流れを加速させる爆弾が投下された。


「マ!?」


「へぇ……どおりで女子っぽくなってると思った。彼氏の影響だったんだ」


「言っちゃうんだソラち」


「誤魔化したくないし」


 抹茶ラテの入ったカップを両手で持ってちびちび飲むソラ。


「どんな人? どんな出会い?」


「ちょ、ムツ。がっつきすぎだよ。ソラちがびっくりするじゃん」


 ムツの質問に対し答えを思い浮かべる。想い人のことを思い浮かべてそしてカップで口元を隠しつつ答えた。


「……秘密。ボクだけの彼氏だから」


「「「ッッッッッ!!!!」」」


 三人が天を仰ぐ。照れるその仕草は可愛らしいはずなのにどこか色気があった。


「スズ、何この可愛さ……意識が飛びかけたんだけど」


「……ソラちの女子力が……一万、十万……馬鹿なっ、化け物か」


「今のはドキっとした~」


「え? え?」


 わかっていないソラである。その後、当初の予定通り服屋に入り浴衣を物色する四人。

 入った服屋では浴衣のレンタルやオーダーメイドでの注文も受けているようだ。


「えー可愛い……普通に5000円以内で買えるんだ。でも着つけもあるしレンタルかなー? ねぇ、ソラちどの柄が可愛いかな?」


 レンタルのサンプルを見ながらスズはソラに相談する。かつて、愛華のコーディネートをしていたソラはスズをじっと見て、いくつか浴衣を選んでいた。


「ストライプ系か染物でも可愛いかも。愛華ちゃんはできるだけ大人しい柄だったけど、夏祭りならしっかりと柄がわかるものもいいよね」


「あはは、皆見てみて、レースの浴衣ー。これスケスケだよね」


 ツッキーが横からレースの浴衣を持ってくる。


「……なにそれ?」


「アハハ、エッロ、下着とかスケスケじゃん」

 

 ムツがケラケラと笑い体に当てる。


「下にインナーウェアやスカート履くっぽい。涼しそうでよくない?」


「例えそうでも、一緒には歩きたくないわ」


「えー、ひどーい。ソラはどう思う」


 急に話題を振られたソラは顔を真っ赤にする。


「し、室内ならいいんじゃない?」


「「「え?」」」


「ソラち……それって室内で彼氏に……」

 

「ち、違うよ。流石にそんなこと……こと……」


 直後ソラの脳内に銀次に室内で水着を披露したことを思い出す。あれ? もしかして、あれに比べたらインナーを来たレース浴衣くらいなら全然見せれる自分がいるのではないか。銀次が浴衣を着たボクを見て、顔を真っ赤にする。よき……そんな想像をして停止するソラ。

 そんなソラの反応をみてムツとツッキーは手を合わせて怯えていた。


「す、進んでる。あれが彼氏持ち……同じ年なのに……」


「可愛い顔してるのに……まさか、もう、行くとこまで……」


「ち、違うから! ほら、帯も見ようよ」


 誤魔化すソラはせっかくなので、自分の浴衣に加えて銀次の浴衣も選び買い物をしたのだった。

次回は月曜日更新予定です。


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奴隷に鍛えられる異世界生活

― 新着の感想 ―
良いギャルで良かった••• 願わくばこのままソラちゃんが 幸せでありますように••• そして銀次君とのピンクイベントですか••• これは忙しくなりますね。 しかし光が強ければ強いほど闇が深くなります。…
バカめ、ソラは女子力のコントロールが可能なんだ! そしてその女子力は第一形態(男装)ですでに53万。そして第二形態(彼氏持ち)で100万を裕に越える。その変身をあと二回(銀次あり形態)も残しているのだ…
人見知りによるスリップダメージと、彼氏持ちの爆弾発言によるダメージレース。なお、ソラの通常時の行動が結構な火力の模様。 実況解説席はエスプレッソ中ジョッキを用意しております。
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