何だってできる!
時刻は夕方5時、一日宿題をしていた銀次と尽くしたがりをし続けたソラだったが。
流石に疲れたので残りは明日するということで、夏休みの予定について話し始めていた。
「そういや、絵の方は何か取り組むつもりなのか?」
「んー、どうだろ。春に愛華ちゃんの作品として描いた絵は夏の美術展に飾られるらしいけど……」
美術系のコンクールで全国規模な物は春の内に作品を提出し、審査を経て夏休み期間に展示されるものが多く、春は愛華の代わりに作品に取り組んでいた為に今は応募している作品は無い状態であった。
「四季の奴は夏にもコンクールに参加するらしいって噂で聞いたぞ」
チリンと風鈴がなり、ソラが少し考え込む。
「愛華ちゃんがでるつもりの全国規模の大きなコンクールは、地区の出場枠がもう無いんだよ。それに愛華ちゃん、一般のコンペにも参加するっていってたし。夏休みには社交の場にも出るだろうから忙しいだろうなぁ。ボクは今までできなかったデッサンや油絵の基礎を勉強するよ。コンクールなら来年から頑張ればいいしね」
「そっか、まぁ、別にわざわざ四季と同じ大会を狙う必要もねぇか。でも、せっかくなんだし何か挑戦したいよな」
「確かに、ちょっと調べてみようか」
二人でスマホを取り出してポチポチと探し出す。数分後、同時に二人で顔を上げた。
「「これっ!」」
差し出した画面に映されていたのは、隣県と共同で取り組んでいる芸術祭のサイトだった。
県の出身の芸術家も参加するが、県民の参加を推奨しており、緩く参加できるイベントのようだ。
「第一回らしいよ。コンペというよりは楽しくゆるく見たいな感じだね」
「申し込みで自由に参加できるらしいぜ。色々な部門もあるし絵もあるだろ。期間もギリギリセーフときたもんだ。まっ、真面目な感じじゃないが、見に行くのも楽しそうだ」
「油絵は時間ないけど、他の絵なら……でも、銀次と遊びたいし。中学の二年から夏休みも愛華ちゃんの手伝い以外はずっと一人だったから。その、夏休みらしいこととか憧れてて……でも、自分の作品を作りたいって気持ちもあるし……どうしよう」
頭を抱えてポテンとソファーに倒れ込むソラ。銀次は愉快そうにその横に座る。
「そんなら、デートと勉強と美術、全部すりゃいいんだよ。絵のことはからきしだが、競うわけじゃない自由参加なら俺だって芸術に挑戦できる。一緒に参加しようぜ。それならデートみたいなもんだろ。海に行くし、夏祭りに花火、肝試しもあるな。全部やって全力で楽しまなきゃ損だろ。一ヵ月も時間があるんだ。何だってできるさ」
「銀次と一緒……おもしろそう……付き合ってくれる?」
芋虫のように動いて、銀次の太ももに頭を乗せるソラ。
「ハッ、俺から言ってんだっての」
「そ、それなら。ずっとやりたかったことがあって……その、合作とかどう?」
「合作?」
「うん、ずっと一人で絵を描いていたから。まだどんな感じかもわからないけど……その初めてのきょうどう……モニョモニョ」
語尾が消えるソラの肩を持って引き起こした銀次は拳をそっと突き出す。
「楽しくなるな」
パァとソラが満面の笑みで拳を当てる。
「うん、やらいでかっ!」
二人はさっそくノートを取り出して、夏休みの予定を詰めていくのだった。
次回の更新は、多分月曜日です。
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