邂逅
目が覚めると、真っ黒な部屋と真っ白な小さな女の子ががこちらを見下ろしていた。
僕は状況が全く把握できないでいる。
そもそも、頭をいきなりかち割られて気付いたら目の前に女の子がいるってどういう事だよ。
言語化しても意味わからないことなんてあるんだなんて驚きだな。
とりあえず、思考を一旦停止して第一声の内容を考える。
そして、この部屋に少女以外いないのを確認すると、静かな声で一言呟いた。
「あの、君。僕を縛ってる縄を外して欲しいんだけど」
そう、僕は縛られていた。それはもうエグい感じの縛り方で。
正直、君は誰?だとかここはどこだ?とか質問したいけどグッと我慢する。
幼女に見られながら縛られてる男とか絵面が完全にアウトだからね。うん。
「聞こえてる?君だよ君。外せなさそうならお家の人とか呼んでもらえれば・・・・」
いや、お家の人が蹴り女だったらどうしよう…まぁいいか…
そんな杞憂に悩まされていると、幼女が心底呆れたような表情でこちらを睥睨する。
「久しぶりね、いや、初めまして、だったかしら?」
どうやら僕らは知り合いだったらしい。
幼女との接点とか普通に怖いんだけど。前の僕の捕まった理由ってこれじゃないよね?
「あのさ、初めてでも久しぶりでも何でもいいんだけどとりあえずこれ、外してくれない?」
「私の名前は、ナルニア。ナルニア・ジャックズ。最果ての監獄、コキュートスの看守長を務めている者よ」
僕の声はミュート中なのかな?
完全無視って流石に酷いんじゃないかな。
「てか、ずっと男だと思ってたんだけど。完全に幼女じゃん」
「貴方ね、手紙を20000通近く出すとか頭狂ってるんじゃないの?」
ナルニアは手紙の束を取り出し僕に向かって放り投げる。
どうやら、僕の声は彼女に届いていないらしい。
会話が噛み合っていない。
「それで内容は、記憶がないからここから出せ?こんな下らない用事でここに来たなんて馬鹿らしくてやってられないわ」
「だって、僕悪いことしてないし・・・・」
「関係ないわ。一度でも収監された以上、大陸法で出すのは禁止されている。私に手紙を書いたって無駄」
どうやら僕はこの監獄から出れない上に縛るのはやめられないらしい。悲しい。
しかし、僕は諦めない。ポジティブにいこうポジティブに。ルールには例外ってものが必ずある。
「どうしても出たいんだけど。あるんでしょ例外」
「はぁ・・・・まぁ、裁判の再審をするしかないわね」
ほら、やっぱり合った。ていうか裁判ね、裁判。したこともないのに再審とね。なるほど。
「獄中にいる犯罪者は一度のみ捕まった要因となる事件の再審を要求できる制度があるわけ。それはコキュートスでも変わらない」
ナルニアはそう一息で言い切ると髪を掻き上げ、
何処から取り出したのか、白い羽根ペンで空中に何かを描き始めた。