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怠惰な僕は穴だらけ  作者: 百谷撓
第一章
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真っ白な監獄



僕が太陽とお別れしてから98日たったらしい。

詳しい事は知らないので、多分としかいえないのだけど。


僕は今、犯罪者を永久に隔離し続ける最悪の施設、コキュートス監獄にいる。


 地下274層からなるこの監獄は、扉、牢、檻を含む全ての枷が存在しない。

その代わりに、地下1階には転移罠が貼られており、付近10メートルにいる人間を274階に強制送還する魔法(スペースムーブ)が常時稼働している。


ここでは、全世界各地で収容不能、または、8度以上の脱獄をした者が現在19名収監されている。


気性が荒い者も少なくはないが、中では範囲回復(エリアヒール)の魔法により全ての死傷は禁止されている為、比較的安全といえるだろう。

まぁ、中にいる全ての囚人が死を望んでいるという事以外はとてもいい事だと思う。勿論一部()()もあるけど。




そんな監獄の118階で、僕はペンをとっている。

ここは監獄内で唯一物がある部屋だ。

置いてあるものは便箋と封筒、あとは汚い万年筆とインク瓶。

つまり、手紙が出せる部屋ということになる。


この便箋はなかなかに便利で、手紙を封筒にしまうと、受け取る人間が直接受け取るまで他の全ての事象の干渉を受けず届けることができるという魔法がかかっている。


そもそも、犯罪者がポンポン手紙を出すのに検閲の一つもなくていいのかっていう話なのだが、

この監獄にいる人間が暗号を使わないことなんてないし、どうせ解読もできないから無駄なのでやめたそうだ。


まぁ、そんな事は置いておいて、ここに来たのは他でもない手紙を書く為だ。

今この部屋にいるのは、僕とぶっそうなくたびた婆さんだけ。

前の監獄の名残で喉が潰されているこの婆さんはシュカレットと言う。

罪状は、禁忌呪文使用罪並びに大陸破壊罪だそうだ。

彼女は、とある目的の為大陸を真っ二つにしようとたらしい。

捕まった後も口を閉じさせておかないと詠唱を開始する為、喉を潰されこの監獄に放こまれている。

その為、喋る事ができない彼女はこの部屋のインクと便箋をくすねて筆談をしている。


どうせ手紙を描くような性格でもないので多分、インクが切れたか便箋が切れたかしてちょうど取りに来たのだろう。


「やあ、シュカ。今日も元気そうだね」

濁った緑の目がこちらを向く。

サラサラっと数秒で何かを書き込むとこちらに突きつけてくる。

(あぁ、アンタまだ諦めてなかったのかい どんな用事があるのか知らないけどね、幾ら手紙を書いたって看守長は出しちゃくれないよ)

書く量が多い。

多分喋れたら捲し立ててくるんだろうな・・

あと、開口一番否定してくるのはやめてほしい。


「あぁ、もう日課になってるんだ。出れる気は・・あんまりしてない」

また下を向いて何かを描き始める。

(だろうよ、ま、精々死ぬまで続けるんだね わたしはもう行くよ)

大量の便箋を小脇に抱えたシュカは好きにしろとでも言いたげな顔でこちらを一瞥すると、地下に続く階段を降りていった。


先程シュカの婆さんが言っていた通り、僕は毎日看守長であるナルニア・ジャックズに手紙を書いている。

内容は勿論解放の嘆願。

()()()が、何をしたのかは知らないが目が覚めていきなりここじゃあ心臓に悪い。


別に好きで毎日書いてるわけでもないのだけど、監獄に返信は来ないから、本人が来るまで書き続けている。



背景、看守長様


どこから差し込んでいるのかわからない光と見渡す限り真っ白な壁、危ない隣人と娯楽のない生活。

そろそろこの空間が嫌いになりそうです。

先日もお伝えした通り、僕は犯罪者ではありません。

罪を犯した記憶どころか、監獄に入れられる前のことすら覚えていません。

兎に角、解放は先でもいいので一度会ってお話ししたいです。


考慮の程、よろしくお願いします。


PS:

ていうか、僕顔すら知らないんだけど。

送ってる人あってるよね?ナルニアさんだよね?



こんな調子で同じ文を8枚ほど書くと、封筒にしまう。

これを8枚ワンセットで毎日24回送りつけている。

関係ない人に届いてたらごめん…という気持ちで、封筒をそっと壁に向かって投げると、壁に吸い込まれるようにして便箋が消える。


送信完了だ。あとはこれを繰り返す。多分3年後には僕の腕がムキムキになっていることだろう。


「あぁ〜早く来てくれないかな、そもそも手紙届いてるのかな?」


誰も来ないので愚痴をこぼす。

勿論、誰が聞いているわけでもないのだけども。


「届いてるわよ」


「へぇ。じゃあなんで来てくれないんだろうね」


ん?僕が僕に相槌を打って


黒い女物のブーツが目の前に輝き、頭に強い衝撃。

どうやら、蹴られたみたいだ。


「忙しかったからに決まっているのだけれど。常識的な事を考える頭もなくなったのかしら?」


反論どころか、うまく声すら出ない。

抗おうとするが視界が黒く染まり始める。


「・・・・場所を変えましょうか」


若い女の声を最後に、僕の思考は黒い沼の底に落ちていった。



初投稿のため非常に不慣れです。不備がありましたらご指摘下さると助かります。

毎日連載する予定です。

感想等くれると加速しますので是非お願いします。

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