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第3部 流浪のヨーロッパ編 VOL8「バクオン!の夜」 (2004年)

ー流浪のヨーロッパ編 VOL8ー

「バクオン!の夜」   

ヴェネツィア    2004年11月


ー前回からの続きー


「ああ!! これはっ!!」

G線上のアリア。

CMなどでよく使われてる馴染みのメロディ。

ロック、ファンク、ジャズ、クラシック、、、

どのジャンルにも何度も何度も繰り返し

聴いた曲は今までいくつもある。

でもその中でもこの曲だけは

俺にとって特別だ。

胸が急にザワザワし始める。

周りの観客は教会の空間にこだまする

4人が奏でる演奏を静かに聴いている。

俺は突然ひとりだけ違う空間に

来てしまったような慌てた気持ちに

なりながらも集中して耳をすませる。


ー ここで話は大ーきく脱線する -


27歳からボロい10畳ワンルームで

10数年ひとり暮らしをしていた。

ある日ずうっと空いてた隣の部屋に

引っ越してきたひとが挨拶にきた。

「あのー、音楽をやってるんでちょっと

うるさくなることがあったらすみません。」

と髪を伸ばしていかにもミュージシャンらしい

年齢不詳の男のひとは同棲しているカノジョと

お菓子を持ってきて頭を下げた。

「ああボクもバンドやってるんで

わかりますよ。

そんなに気にしないでくださいね。」

そう言ったものの隣の「集会」は

予想以上にナンギだった。


当時経営していたアメリカンバーを閉めて

夜中3、4時頃に帰ってきて寝ようとすると

笛(フルート?)、シンセサイザー、ギター、

そして3、4人の男女のハーモニーが

壁を通してかなりはっきり聞こえてくるのだ。

たびたびそういうことがあったんで

やんわりと抗議した。

しばらくしてからバンド仲間に聞いて

わかったけど、彼らは沖縄風の音を取り入れた

関西ではそれなりに名の通った

プロのバンドだった。

ちょうどその頃雑誌に写真入りで

特集が組まれてたし、夕方のニュースで

「韓国で初めて日本のバンドが演奏しました」

と隣のニイチャンが映っていて、

翌日の新聞にも載ってた。

隣の部屋のドア内側にはカノジョのポスターも

貼ってあった。

迷惑かけたおわびに、と後日ライブの

チケットをくれたけれどわるいけど

好みのジャンルでなさそうで行かなかった。

それにしてもなんでスタジオでなくて

いつも自宅で練習してたんやろ?

失礼やけど、プロといっても

そんなに儲けてたわけじゃないのかもなあ。

(その後、活動範囲はアジア各国へ拡大、

さらにヨーロッパでもライヴ、

レコーディングを行うようになる。)


ある夜すっごく酔っ払って帰ってきて

「G線上のアリア」がどうしても

聴きたくなった。

たまに昼間にステレオのボリュームレベル

80の内50というかなりの大音量で

30分くらい繰り返して聴くところを、

夜中3時を回ってるというのに

レベル60!で1時間ぶっつづけで聴いた。

夜中3時。 バクオン!

なあーんて非常識でメーワクなことを

してるんやろ!?

とは思いながらもどうしても

その突き動かされるような内なる衝動を

抑えられなかった。

あかん! 止められへん!

何をやってるんやろ俺? 狂ってるのか?

隣のニイチャンにえらそーに

言われへんやんかあ!

オレンジの暗い明かりの中で横たわり、

目を閉じてひたすら繰り返し聴きながら、

ハダカで宙に浮いてるような

気持ちになって涙を流した。

この曲を何度も何度も聴き続けると

すごくリラックスすると同時に

コーフンしてくる。

ついには果てしなく神聖な気持ちになり、

なぜか泣けてしまうのである。

そして妄想が加速してゆく。


(さらに続く。

長くなっちゃってゴメンねー。)



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