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第3部 流浪のヨーロッパ編 VOL7「沈みゆく魅惑の街」 (2004年)

ー流浪のヨーロッパ編 VOL7ー

「沈みゆく魅惑の街」   

ヴェネツィア    2004年11月



ヴェネツィアの水の風景をよくテレビなどで

見て川と思ってる人は多いかもしれないけど

実はヴェネツィアは島の集合体であり、

水路や川のように見えるのは運河なのだ。

島の内部を逆S字型に突っ切るのが大運河。

海とつながってるから運河には当然

潮の満ち干きがある。

地盤沈下でほぼ海抜ゼロになってきている

この島は昼前になると道端の排水溝から

海水が逆流してきてあちこち水浸しになる。

前回は春に来たけど冬の方がなぜか

浸水しやすいそうだ。

(海水温度が高い方が膨張して水位が高く

なると思うんやけどなあ。)

先日ニュースではすでにヴェネツィア全土の

なんと80%が浸水していると言ってた。


あちこちの道の真ん中やいつも浸水する

サンマルコ広場には幅1.5mほど、

高さ1mほどの板がずらーっと並べられて、

人も犬もみんなその上をゾロゾロ歩いてる。

前回来た時はこんな板の道は

どこにもなかった。

ほんの数年でのこの沈下の進み方は深刻だ。

店の中にまで水が入ってきて

モップで拭いてるところもある。

毎日タイヘンやなあ。

時々靴を履いたまま膝の上まで被せる

ピンクや緑のビニールカバーを着けて

ジャバジャバとたまった水の中を

お構いなしに歩く人達がいるけど、

この地だからこそ販売される商品と

言えるだろう。

こんなものここ以外で見たことない。

満潮の時間には運河沿いの道の上にまで

波が打ち寄せてくる。

「一体あと何年もつんやろう?」

こんなに素晴らしい情緒豊かな風景が

やがて水没する運命にあるなんて

ちょっと信じられない。


島であるヴェネツィアは車と信号が

いっさい存在しない街でもある。

人が歩くためだけの不規則に入り組んだ

路地と水路。

ほとんどの通りには名前などついていない。

今までいくつもの街を訪ねたけど

ここほど道に迷う所はないかなあ。

(スペインのグラナダとかもすごいけど。)

方向オンチでなくても1度行った店に

再びたどり着けないなんていうひとは

けっこういるはず。

宮本君と2人で毎日迷いっぱなしだった。

まさに街じゅうが迷路だ。

でもここでは迷って歩くことさえ楽しい。

味わい深い歴史を感じさせてくれる空間に

心がざわめく。


複雑な路地に迷って時間ギリギリに

教会でのクラシックコンサートに間に合う。

俺が絶対オススメだからと勧めた

企画の1つだ。

ちなみに2人ともよそ行きスタイルに

着替えている。

今回の旅で生まれて初めてヒゲを生やして、

柄の派手なネクタイをして黒いコートを

羽織った俺を見て宮本君が

「ポン引きのニイチャンや!」

と大笑いする。

バンドはヴァイオリン3台と

ウッドベース1台の構成。

演奏者の男達は白シャツに黒のスーツの

正装だけど実にリラックスしている。

馴染みのある曲が透明感に満ちた音で

次々と奏でられてゆく。

それにしても教会の空間の自然な音響効果は

本当にスバラシイ!

演奏を終えた静寂の中にも3秒くらい

残響が漂うのだ。

教会というものはもしかして礼拝のため

というよりライヴのために建てられたのでは

ないのかと思ってしまうほどだ。

そして「その曲」が始まった。


(「バクオン!の夜」に続く)


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