第3部 流浪のヨーロッパ編 VOL3「お宿はドコじゃ?」
ー流浪のヨーロッパ編 VOL3ー
「お宿はドコじゃ?」
ミュンヘン 2004年11月
ー前回からの続きー
さぶいっ。
夜の空港には雪が積もっている。
予想よりちょっと寒いか。
さっき乗り換え地のミラノで
マイナス1度って言ってた。
(後で知ったけどこの時は
たまたま寒波が来てたらしい)
日本を出る前に「地球の歩き方」に載ってた
宿を確保しておいたんやけど、
場所がさっぱりわからない。
中央駅の近くかなあ、くらいに思ってたけど
目的地の通りの名前が地図を見ても
載っていない。
駅員や乗客に何回も訊いたけど
誰も知らない。
うーーん、これは中央駅じゃなくて、
そこからいくつか離れた駅にあるな。
最寄りの駅がわからないことには
まったく前に進めない。
ヤバイっ。 イキナリお手上げだ。
宿ににFAXで確認しておくべきだった。
長いフライトの後ですごく疲れてる
というのに横たわれるベッドには
なかなかたどり着けそうにないみたいだ。
宮本君は初めての外国旅行で初めての夜、
もう10時を回ってるのに
いきなりこんな状況になって
すごく不安なんやろうか?
FAXに書いておいた到着予定の時間を
1時間半は過ぎそうだ。
宿に電話して行き方を教えてもらうしか
ないのかあ。
いややなー。
ただでさえ英語のリスニングが苦手やのに
電話ではさらに難しい。
観念して
「電話して場所を訊くしかないなあ。」
と溜め息をつく俺に宮本君があっさりと
「ボクが電話するよ。」
と言う。
おお! とても海外旅行初めてとは思えない
この頼もしさはナンダ!?
彼は関空でケータイをレンタルしてきてた。
ううーーむ、用意周到ではないかっ。
路線図を見ながら最寄の駅名などを
一生懸命訊いている。
ドイツの地名は耳慣れない発音で
しかもドイツ語訛りでわかりにくい。
スペルを何回も何回も訊きなおして
やっと向かうべき駅がわかった。
ででででかしたぞ、宮本君!!
地下鉄で目的の駅に向かう。
宿のある通りも確認できて、
駅から5センチほど雪の積もった
車の列を見ながら真っ暗な石畳の道を
スーツケースをゴロゴロ引っ張って歩く。
歩いてきた30代位のペアに宿の住所を
言うと、ちょうどそっちへ向かうから
一緒に行こうと言う。
アメリカ人の男はバーで飲んできて
酔ってゴキゲンさんだ。
いきなりコートのポケットから
ジョッキを2つダダーン!と嬉しそうに
取り出して見せる。
「コレ盗んできちゃったあ。 でへへえ。」
おいおい、ナンギなやっちゃなあ。
彼を指差して
「You, Ba-d Bo-y!」
と言うと彼はさらにゴキゲンになって
人なつこく話してきた。
「大阪から来たのか。
バーを経営してたってえ?14年??
ヒュー、やるねえ!」
ここミュンヘンに住んでいる
すごいベッピンさんのカノジョは
もう困った人ねえ、という顔だ。
超遠距離恋愛で久々に会えて
カレシは有頂天のようであった。
宮本君もベッピンさんと話して
すごく楽しそうだ。
宿になかなか近づいていけない
不安な状態からやっと解放された
というのもあるんやろなー。
彼らに別れを告げて、やあーっと宿に到着。
ユースホステルをキレイにしたような建物だ。
「イーズィー」が口癖ですごく低い
シブイ声のスキンヘッドオヤジが
明るく出迎えてくれる。
クタクタだというのにカード式ロックの
部屋のドアを開けるのが何度やっても
どうしてもうまくいかず、仕方なく
イーズィーオヤジに来てもらう。
オヤジは
「イーズィー、イーズィー。」
とドアのノブをビミョーに引っ張って
ロックを開けてみせた。
オヤジいー、そんな「ワザ」が必要なら
最初から教えといてくれよー。
一体これのどの辺がイーズィーなんや?
ベッドの上にやあっと
ドサッとひっくり返る。
ふいーーーーーっ。
それにしても初日からてこずったなあ。
そう、あとになって思えばこの大変な
スタートがこれからいくつも起こる
ハプニングを暗示していたのかもしれない。