第3部 流浪のヨーロッパ編 VOL2「沈まない太陽」 (2004年)
ー流浪のヨーロッパ編 VOL2ー
「沈まない太陽」
関西国際空港〜ミュンヘン 2004年11月
ー前回からの続きー
「あ、見つけた!」という感じで
タタタッと走り寄ってきた案内の係員の
女のひとが俺らに笑顔を見せながらも
トランシーバーに向かって
「ただ今最後のご搭乗のお客様と
そちらに向かっています。」
とやや緊張感を醸し出しながら報告する。
ちょっぴり「ついに取り押さえられて
しまった逃亡犯人」の心境になる。
モノレールに乗って降りて、
エスカレーターを降りてさらに先へ。
うーーむ、搭乗ゲートはこんなに
ずうっと奥やったんか。
それにしても出発25分前の
放送呼び出しなんて
いくらなんでも早過ぎるんちゃうのお?
まえにチューリッヒでスイス航空から
出発15分前に呼び出された時でも
ずいぶん早いなあって思ってたのに。
アメリカの航空会社なんて5分前でも
皆悠々と乗り込んでたぞ。
とにかくあの窮屈な座席に長時間座るのが
苦痛でたまらんから早めに乗り込むなんて
絶対ヤダ。
久々に乗ったヒコーキではいくつか
変化が見られた。
※機内でカートでの免税品販売はなくなり、
希望者は最後部の販売セクションで買う。
※着陸前に入国カードを書かない。
※ゲームや音楽を聴くための
コントローラーと薄型モニターの
各席への設置。
時代はぼんやり生きてる俺を取り残して
カクジツに進んでいるのであった。
やがて夕方になった。
窓から見える夕焼けが美しい。
茶色い広大な中国大陸が拡がる。
ー1時間後ー。
まだ夕焼けが見えている。
んん?? おっかしいなあ??
それからしばらくしてもほとんど
暗くなっていかない空を見て
やっと、ははあーーんと納得する。
地球は東へと自転し、西に沈んでゆく太陽。
このヒコーキは時速900キロ前後で
同じく西へと向かっている。
今俺らは沈もうとする太陽を追いかけて
飛んでいるのだっ。
子どもの頃からUFO、心霊現象、超能力、
タイムマシンなど不可思議なものに
関心の強い俺は、このヒコーキは
今もしかして地上より時間の流れが遅くなる
タイムマシン状態になってるんちゃうやろか
などと妄想してしまう。
このオモシロイ現状を教えてあげなくては
と思うが隣の席で宮本君は眠っている。
1時間ほどして目を覚ました宮本君に
信じがたいことにまだ続いている
「沈まない太陽」現象を報告する。
しばらく地球の自転とヒコーキとの関係の
会話で盛り上がる。
こういう自然現象や物理のことで
疑問に思うことや推測することを
例え無知な自分では答えを出せないとしても
あーだこーだと論議するのは好きだ。
この不思議な長あーーい夕焼けは
なんと3時間以上!も続いたのだった。
それにしてもただこうして座っているだけで
地球を3分の1周できるなどということが
単なる娯楽として学生にでも誰にでも
できるなんて。
いつもながら人間の知能のすごさ、
望むことを必ず科学の力で実践してゆく
その貪欲なまでの行動力には
ただただ驚いてしまうばかりだ。
ヨーロッパはとにかく遠い。
ミラノ経由、現地時間午後10時
ついにミュンヘンに降り立つー。
(「お宿はドコじゃ?」に続く)