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第55話 気球がほしい

 クロードは本当に腹が減っていたようで、店に入ると注文が届いたそばからガツガツと食い始めた。


「実を言えば二日前から食ってなかったんダ。色んなものを作ってたら材料費で金が飛んでいっテ」


 肉を頬張りながら彼は言った。


「何か金を稼ぐ手段はないの?」

「魔法とかアビリティとか学んでる奴らは冒険者ギルドに登録するみたいだが、俺は戦えなイ。攻撃魔法とか勉強してないかラ」

「というか、そんなので学費は払えてるの?」

「俺は特待生だからナ。ほとんど払わずにここにいられル。貴族なんかはかなり金を払っているみたいダ」


 そういう制度があるのか。特待生ということはきっと優秀なのだろう。


「ニコラ、特待生でもないなら貴族なのカ? 金持ちじゃないって言ってたケド」

「いや、俺は学生じゃない」

「学生じゃないならなんでここにいるんダ? というかどうやって学内に入っタ?」

 

 全部べらべらとしゃべるとヴィネットの研究に問題が出そうなので、とりあえず俺は、「研究の手伝い」という名目で話をした。


「魔法を使える人間だもんナ。そりゃ研究されル」


 クロードはそう言ってうなずいた。


 彼は相当腹ペコだったようで、肉を食い終えた後もまだ物足りないようだった。

 好きなものを食っていいというと、クロードは目を輝かせて、


「お前良いやつだナ!」


 と言って次々注文しては平らげた。テーブルの上は皿で一杯になりクロードの腹は見るからに膨れて、ベルトを外していた。


「久しぶりに腹いっぱいダ」


 クロードは満足そうだった。


 彼はドワーフらしい。エルフと同じように長寿の種族だ。少年と言ってきたが、きっと彼もマヌエラやヴィネットと同じように歳をくってるのだろう。


「俺は魔力があるが、属性がないんダ。だから魔道具もうまく作れなイ。でも手先は器用なんダ。ここで色々学べば、属性がなくても便利なものを作れル」

「他にも作ってるの?」

「いや、それガ……」


 クロードは少しうつむいてから言った。


「金がなくて作れなイ……。アイディアはあるんダ。ただ、どれもかなり金がかかっテ……。小さいものだと役に立たなイ。俺はただの生徒だから、研究費はそう簡単にまわってこなイ」

「あの気球、金になりそうだけどね」


 人を乗せられれば、レジャーの一つになるだろう。


 というか、俺がほしい。

 現状では俺一人がなんとか空を跳んでいるだけだし、風属性の魔法を手に入れても、おそらくは俺一人しか飛ばせない。


 気球を使えば、俺の魔法で、俺以外の人間も一緒に飛ぶことができる。空飛ぶ魔法がうまく使えなくても飛ぶことができる。

 例えば、アリソンとか。

 

 そう、俺が思いついたのはそれだ。

 グリフォンやらドラゴンやらに乗らなくても、ノルデアへ行き来できるかもしれない。

 アリソンには待ってるといったが、単純に俺もノルデアに行ってみたかった。

 だって島が宙に浮いてるんだぞ。気になる。


「人が乗れるくらい大きな気球作らない?」

「さっき言っただロ。金がなくて作れないんダ」

「どのくらいかかる?」


 クロードは考え込んでいたが首を横に振った。


「わからない。火の属性を持つ魔道具を作らなければならないし、大きな布かなにかを用意して空気を溜める部分を作る必要がある」

「火の魔道具はいらない。俺がその部分をやるから」


 何を言ってるんだ? という顔をして、クロードは首をかしげた。




「……なんダ、それハ」


 店からでて先程の場所にもどると、俺は火の魔法を使ったり、火の剣で炎を出したりした。


「この剣は貰い物。それに魔力量は気にしなくていい。つまり、動力源に関しては気にせず作れる」


 クロードはむむとうなった。


「確かにそれならかなり予算を抑えられル。ただ、まだ金は必要だナ。気球の布の部分は結構な大きさが必要ダ」

「今まではどうやって作ってたの?」

「薄い布にスライムを塗って乾かして空気が通らないようにしていタ。今度もソレでやるか、別の方法をつかうカ……。でも強度ガ……」


 もうすでにクロードは乗り気になっていた。

 と、そこでベルが鳴って、クロードはビクッと体を震わせた。


「まずい授業ダ。行かないト。どのくらいの大きさが必要か計算しておク」

「じゃあ、明日もここで待ってるよ」


 彼は慌てた様子でいそいそと走っていった。




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