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第35話 異変

 木々の間ににょきにょきと生えた岩の柱の近くに俺は着地した。

 近くで見るとものすごく高く大きく感じる。周りに生えている木の幹の数倍は太い。触れてみたがやはりただの岩のようだ。


 自然にできたのではなく多分魔法によって作り出されたのだろう。人工的には見えないがこんなものが突然森の中にあるのは不自然だ。


 この前森を抜けるときに大きな音がしたのはこのへんなのかもしれない。岩の柱は見えなかったけれど。


 調べるために岩の柱の周りを歩く。木が倒れたり、柱の中に埋まったりしている。

 いくつもある岩の柱をそうやって観察していると、近くにあるものを見つけた。


「……サーバントか?」


 一つはメイスで、もう一つは大剣だった。ひどくボロボロで至るところが欠けていた。持ち上げただけで壊れてしまいそうだった。死が近い。

 サーバントだと気づいたのは、その武器たちが苦しそうに呻いていたからだ。


 まだ生きている。

 じゃあ、契約者はどこだ?


 俺はかがみ込んでサーバントに声をかけた。


「なあ、聞こえる? まだ意識はある?」

「あ……ああ。人間か? 人間なんだな?」


 メイスのサーバントがかすれた声でそう言った。


「頼む、俺達を壊してくれ。もうこんな苦しみは耐えられない」

「ここで何があった?」


 俺が尋ねると大剣のサーバントが叫んだ。


「食われたんだ!! 俺たちの契約者はあいつに!! あのサーバントに!! あいつは自分の契約者を食った後、一人で魔法を使えるようになったんだ!! 俺達は太刀打ちができず、契約者を守れなかった! 食われるのをただ見てることしかできなかった! それからだ。あいつがアビリティを使うたびに、ひどい痛みが体に走るんだ!! お願いだから、俺達を壊してくれ!!」


 食われた?

 その時俺はマヌエラの言葉を思い出した。初めて彼女に出会ったときに言われた言葉を。


――何じゃこの莫大な魔力は。答えろ、おぬし、何人食った(・・・・・)


 マヌエラは「魔法を使う俺」を見てそう言った。人間は魔法を使うことができない。それは周知の事実だ。


 では、マヌエラは俺を何だと思ってそう言ったのか。

 

……サーバントだと思ったんだ。


「サーバントは、契約者を食らうと、一人で魔法が使えるようになるのか?」

「そうらしい。なあ、お願いだよ。早く壊してくれ。あいつが目を覚まして、また暴れまわる前に」

「その、人を食らったサーバントは今何処にいるんだ?」

「わからない。ただ、食われた契約者たちが死んでないのか、契約が切れていないみたいなんだ。だから俺たちは生きてて、苦しみだけが襲ってくるんだ。早く逃れたい」


 詳しい情報はわからない。ただ、混乱の原因はもしかしたらその契約者たちを食ったサーバントかもしれないということはわかった。


「最後に聞きたいんだけど、お前たちはどこから来たんだ?」

「ボルドリーだ。契約者たちは冒険者だったんだよ。無謀な男だった。それで、失敗して……。契約者たちは死にそうだった。そのときにあのサーバントが契約者を食ったんだ」


 ローザの父親、ボルドリー伯爵はあの混乱が無謀な冒険者のせいだと言っていた。そして彼らはすでに死んだとも。

 冒険者ギルドはどうやって死を判断したんだ?


 わからないことが多すぎる。


 色々と聞くことはできたが、彼らも巻き込まれたサーバントだ。すべてを知るわけじゃない。


「今から壊してやるが……本当にそれで良いんだな?」

「俺たちの契約者は死んだようなものだ。解放してくれ」


 メイスと大剣のサーバントたちはそう言った。

 

 俺は二つのサーバントを持ち上げた。ボロボロとかけらが落ちる。


「やるぞ」

「ああ。ありがとう」


 二人のサーバントはそういった。

 少し力を入れるとすんなりと、真っ二つに折れた。

 これでは壊れるのも時間の問題だっただろう。


 亡骸は革の袋に大切にしまった。ボルドリーのギルドに持っていこう。

 俺は深くため息をついた。


 「人を食らったサーバント」が気になった。

 これだけ巨大な岩の柱を何本も作れるんだ。

 相当危険な存在に違いない。


 高く跳躍すると、俺はボルドリーへと向かった。

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