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第153話 ローザと共にボルドリーへ

コミカライズ決定しました。詳細は活動報告をご覧ください。

「なんか身体の中の魔力がずいぶん綺麗に巡っているように見えるのだけど?」



 ローザはグレンを通してそう言った。

 

 レズリー……より先にボルドリーに向かう馬車の中である。


 どうして、ローザまで乗っているのかと言えば、俺がボルドリーに一度戻るというとローザが一時帰省的に付いてきたからで、つまり、いま馬車の中には二人の人間と一体のサーバント、そして一体のホムンクルスがいる状態である――俺は人間なのか微妙だから全員種族が違うとも言えるかもしれないけど。


 アルベドは興味深げにグレンとローザをみて、グレンの顔をベタベタと触って嫌がられている――止めてやれ。


 俺はアルベドをグレンから引き離しつつ、



「非情な奴に改造されたんだ。死ぬかと思った」

「非情な奴ね。人間じゃない」

「ああ、人間じゃない(エルフだから)」



 ここに微妙なすれ違いが生じていたけれど、ローザの意味でもその通りだったのでそのままにしておいた――マヌエラにされたことを思えば人間のすることではないと言って大きく外れていないし。


 ドロップキックまでされたし。


 ローザは少し苦々しげな顔をして、



「ってことはまた魔法がうまく使えるようになったってこと?」

「不幸にも」

「もう……やっと私も追いついたと思ったのに……」

「いや……まだローザの方が圧倒的に上でしょ。同じく人間じゃないキカに『もう教えることはねえ』って言わせしめたんだから。人の魔法消去できるんでしょ?」

「消去っていうか、逆の魔力をぶつけて相殺する感じ。最近発動前の魔力が見えるようになってきたから」



 言ってること化け物じみてる。

 いや、キカとかマヌエラはそのくらいできて普通とか思ってるんだろうか。

 あの規格外お姉さん方は求めるものが高すぎる気がする。


 そうしないとこの先の苦難で死んでしまうからか?

 訓練の時点で死ぬかと思ったんだけど。

 そしてその訓練もろくに成果を得られた訳ではないのだけど。



「俺ができるようになったのはちょっと大きな魔法を今までより少し綺麗に作れるようになったってくらいで、細かな所はこれからもっと訓練しないとダメだ。今までと勝手が違う部分もあるし」

「そう。いや、それでもね、私はニコラの隣にいたいから。もう少し頑張ることにする」



 そう言いながらローザは今現在俺の隣に座っているアルベドの方を見た――当のアルベドはグレンにちょっかいをかけるのに飽きたのか馬車の窓から外を眺めている。



「各地にある『箱』は結局ルベドのレプリカっていってたけどそもそもレプリカってどうやって作っているの?」

「『箱』にたくさん魔力を流すと作ってくれるんだよ。レプリカからレプリカをどんどんね。同じようにしてホムンクルスの材料も作ってくれるけど」



 アルベドの言葉に俺はアリソンがいた空飛ぶ島――ノルデアでのことを思い出した。

 巨大な魔石にへばりつくようにして根を張り巡らせていた『箱』は、あそこから魔力を吸収してホムンクルスの材料を作っていた。


 そこで俺はふと思って、



「じゃあ、本体が俺を作り出したってのは、本体から作られた材料で俺が作られたって意味か?」

「うん、大枠はそうだし、ルベドに近い『箱』は大体そうやって作られてる。でもニッコラは紋章がずいぶん深いから、もしかしたらルベド自体のアニミウムも少し入ってると思う。そう考えるとずいぶん特殊だね」



 何でそんな特殊なのを俺に使ったんだ?

 俺がそう考えているとローザも同じことを考えていたようで、

 


「その特別なものをどうしてレズリー伯爵が持っていたのか、レズリー伯爵が本体のルベドとどのくらい関わりがあるかが問題なのでしょ?」

「まあ、うん。あの馬鹿親父が本当に何か知ってるかは解らないけど……ボルドリー伯爵は何か知ってるかな?」



 そう俺が尋ねたのは、ボルドリー伯爵、すなわちローザの父と俺の馬鹿親父は以前から社交があったはずであり、ことの発端である俺の誕生の時点で何があったのか少しは知ってるのではないかと思ったからだった。


 俺の知らない過去を、知っているかもしれない。

 

 そんなことをローザに言うと、



「さあ、どうかな。お父様はレズリー伯爵と昔から交流があったのは聞いてたけど」

「俺が生まれる前から?」

「ええ。ただ、どちらかと言えば昔から交流があったのは伯爵と言うより伯爵夫人、つまりニコラのお母様の方だった気がするけど」

「……あの馬鹿親父とボルドリー伯爵はタイプがぜんぜん違うからおかしいなとは思ってたけど、そうか。そういう繋がりが」

「そう。だから、レズリー伯爵の『悪事』についてはどのくらい知ってるかわからないかな」



 やっぱり本人に聞くしかないのか……会話になるかな。

 俺は唸ってから、自分に言い聞かせるように、



「ま、さっきも言ったけどさ、そもそもあの馬鹿親父が『箱』について本当に知ってるのかすら疑問だ。言われるままに使っただけなら、『七賢人』も『箱』も何もかも知らない気がする」

「でも、ゾーイはどこかから手に入れてきたんでしょ? あのホムンクルスだって元をたどれば『七賢人』に関係してる。ってことはまったく無駄って訳でもないと思うけど」

「ああ……」



 あんまり考えてこなかったけど、そうか、ゾーイか。


 我が弟、ライリーと契約したホムンクルス――ライリーを甘やかし、最後には喰らい、一体になって、ボルドリー近くにあるCランクの森を徘徊し、膨れ上がり、ボルドリーの街自体を襲おうとした存在。


 いろんな所に迷惑をかけたあのホムンクルスを馬鹿親父に押しつけた奴がいるはずだ。


 その人物が直接『七賢人』や『ルベド本体』に関わっているかは解らないけれど、アルコラーダというアニミウム産出地周辺にホムンクルスをばらまいたという前科があるので、関連する可能性は極めて高い。


 と言うか絶対関係してる。


 ようやく馬鹿親父と話すきっかけというか、手がかりみたいなものが掴めて俺は少しほっとしていた――もし、どこから話していいかわからないままあの男と会っていたら、顔を合わせた瞬間、新しい魔法でぶっ飛ばしてしまいそうだったから。


 カタリナにそれをしていない時点で馬鹿親父にもそんなことはしないだろうと一瞬思ったけれど、あれからずいぶんいろんなことがあったから――実際会った時どうなるか俺自身も解らない。


 そんなことを考えていると、ごろごろと馬車は進み、ボルドリーにたどりつくまさにその直前、アルベドが急に馬車の中で立ち上がって天井に頭をぶつけた。



「何してんだ」

「大変だよ! 近くに『箱』があるよ! それもものすごくルベドに近い! あの街の中にある!」



 そう言ってアルベドは、あろうことか、ボルドリーを指さした。


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