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第148話 破壊神マヌエラ

 冗談じゃなかった。


 かつて、この悪魔改め破壊神マヌエラは、怒りにまかせてギルドを倒壊させていたらしい。


 ギルドに入った瞬間ギルドマスターとおぼしき男が受付の奥で失神し、あたりは騒然となった。


 一体何があったのか、と聞くと、



「ここのギルドはの、今のギルドマスターになる前、むかーしむかしは腐りきっておったんじゃ。教会との癒着があっての。金に関してもホムンクルスに関してもとにかく問題があったんじゃな。と言うので最初にギルドを破壊した」



 ……そのあと教会も破壊したわけか。



「今のギルドマスターにして我が旧友はその倒壊後にギルドマスターになったクリーンな奴じゃから安心してよい」

「……クリーンになったのはあなたが若い頃にひねり潰したからでしょう」

「そうじゃ。意識改革じゃ。あるいは教育じゃな」



 暴力による意識改革な。

 恐怖をすり込んだだけのような気がする。


 マヌエラは受付に近づいていくと、その向こうで倒れるギルドマスターを見下ろして、指をゆらゆらと振って、



「ほれ、起きろ」



 言って指を鳴らした。


 ギルドマスターはぱっと目を覚まして、見下ろしているマヌエラを見るや、ローチ系の魔物のようにカサカサとすばしこく後退って、棚に激突した。



「な、なななな、ななな、何でここにいるんですか。あ! そういえば数日前に教会が! あれ、あなたですね!?」

「そうじゃ」

「そういうことかああ! そういうことかああ! やっと合点がいきました。どおりで禍々しい雰囲気がここ数日当たりを漂っているなあと思っていたんです」

「なんじゃおぬし、妾を邪神か何かだとおもっておるのかの? 教育が足りないのかもしれないの」

「いえ! 思ってません、すみません!」



 ギルドマスターなのにばっと立ち上がるとへこへこと頭を下げた。



「あ、あのそれであの、今日はどんなご用事で?」

「ふむ、このニコラが最近依頼を受けておらんでの、しばらく依頼を受けないと追放になるんじゃないかと思ったんじゃ。その理解で間違いないか?」

「え、ええ。追放というか、一度登録が抹消になるだけですが。勝手に追放していたのはあなたですよ。あの時、処理が大変だったんですから」

「そうじゃったかの」



 最悪だこのエルフ。気に入らない冒険者を追放していたのかもしれない。



「なんか文句でもあるのかの?」



 マヌエラが俺に言って、俺は首を横に振った。ギルドマスターが俺を新しい生け贄だと思ったのか、腹を空かせて道ばたで伸びている子犬を見るような目で俺を見てくる。


 止めろ!


 俺は生け贄じゃねえ。



「と言うことで、依頼を見させてもらうのじゃ」



 マヌエラがいって、どこのギルドでもある依頼の張られた掲示板の前に立つと、冒険者たちはすぐに道をあけ、まるで俺たちが喧嘩でもおっぱじめようとするかのように遠巻きに見守っている。



「ふむ、これなんかどうじゃ」

「ちゃんと見てくださいそれAランクでしょ。Cランクの俺は受けられませんて」

「Sランクがないからこれにしたんじゃ。ほれ、受けて来るのじゃ」

「だから話聞いてください!」



 俺が抗議しているとギルドマスターが後ろからやってきて、



「あのお、マヌエラ様がご一緒なら依頼を受けても構いませんよ」



 おい!

 お前は俺の味方じゃないのか!

 仲間じゃないのか!

 裏切り者!


 とギルドマスターを睨んでしまうCランク冒険者、すなわち、俺。



「ほれ、こう言っておるのじゃ」



 俺は仕方なくその依頼の紙を外して、受付に持っていった。受付の女性はガッチガチに固まっていたが、震える手で処理を進め、完了した。



「よし、じゃあ行こうかの」



 マヌエラは俺の腕をがっちりと掴んでギルドを外に出た。俺の後ろから安堵の溜息がどっと漏れたのが聞こえてきた。


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