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第125話 抵抗【アリソン視点】

 ウィルフリッドの口角は異常なほど上がり、傷口みたいな笑みが浮かんでいる。アリソンはルナを体から()()がそうとした。距離が出来れば、ルナは魔力中毒症になってしまう。けれどそれは同時にアリソンとの魔力の交換が出来ないことを意味する。突き放せば、『箱』に魔力を吸い取られて殺されるのは免れる。


 しかし、ツタが瞬時に伸びてきて、アリソンの左腕を拘束した。ルナの体ごと巻き込むように押しつけられてしまい、身動きがとれない。アリソンは魔法を使ってウィルフリッドに攻撃しようとしたが、あまりにも急速に魔力が吸い取られているために魔法の発現すら(かな)わない。


 このままじゃ、ルナが!


 アリソンは左腕のなかでルナが徐々に衰弱しているのを感じた。ウィルフリッドの顔にますます深い笑みが浮かぶ。


「やめて!」


 アリソンが叫んだが彼は笑みを浮かべたまま動かない。アリソンは歯を食いしばり、右手の下にある『箱』を強く意識した。途端、ひどい頭痛に襲われたがその理由はわからない。体中に苦しみが走り、歯を食いしばって痛みに耐えるのがやっとだったけれど、アリソンはルナを助けたい一心で叫んだ。


『やめて!!』


 と、突然腹部を拘束していた黒いツタが弱まる。右手を拘束していたスライムのような黒も()がれて、右手が『箱』から外れる。体の中を駆け抜けていたルナの魔力が止まり、もう吸い取られていないのだと知る。アリソンを拘束していた真っ黒なツタはまるでしおれてしまったかのように倒れて、アリソンの体を地面にゆっくりと下ろした。そのままするするとアリソンから離れていく。


 ルナが心配でアリソンは左腕の中をのぞきこんだ。ああ、ちゃんと呼吸している。ルナは弱っているものの命に別状はなさそうだった。


「よかった」とつぶやいた瞬間、また体中に苦しみが駆け抜けた。腹の底から鈍痛が駆け上がってきて、駆け下りる。ひどい頭痛に涙が出る。コルネリアが人型にもどってアリソンの名前を必死に叫んでいる。


 と、光が陰って、ウィルフリッドが近づいてきたのがわかった。コルネリアは戦う姿勢をみせたが、彼は()(けん)シワをよせているだけだ。


「どうやって拘束を解いたのでしょう。なにか……、主導権を奪われたような気がしましたが……」


 とそこで階上から誰かが駆け下りてくる音がした。ウィルフリッドが見上げると、降りてきたのは部下のひとりで、慌てた様子で報告した。


()()()がお見えです! すぐに来るようにと!」


 ウィルフリッドの顔が焦りにゆがむ。


「ええい。調べるのは後です。この娘を(ろう)に入れるように。魔物とサーバントは隔離しなさい。魔法を使われては困りますからね。……まあ、この様子だとそれも出来ないでしょうが」


 ウィルフリッドが階段を上っていくと、すぐに部下たちが数人降りてくる。アリソンは抵抗しようとしたが体中を駆け巡る苦しみと痛みに何も出来ない。ルナも弱っていたためになすがまま。かろうじてコルネリアは抵抗したが、部下がアリソンにナイフを突きつけ脅したために静かについて行くしかなかった。

次回更新は土曜日です。

6月23日(金)に2巻発売予定です。よろしくお願いします。

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