第121話 城の地下へ【アリソン視点】
ペネロペは地下の話を聞くとひどく驚いた様子だった。
「お父様が知らないはずはないのだけど……」
アリソンはそこで口をつぐんでしまった。たしかにその通りだった。もしかしたらあの黒い物体に王自身が関わっているかもしれないと言うことをほとんど考えずにペネロペに話してしまっている。ペネロペはしかし眉間に皺を寄せたまま言った。
「前も言ったけれど、お父様はここ数年、様子がおかしいの。だから重要な役目は役人たちに任せきりなのだけど、地下の様子もあまりみていないかもしれない」
「王様とはまったく関係がないのかもしれない。それを調べるためにも城の地下に行かないと……」
ペネロペは少し考え込んで、頷いた。
「わかったわ。でも本当に気をつけて。何があるかなんてわからないから」
アリソンは頷いた。
ペネロペとともに城の廊下を歩く間、アリソンはコルネリアとルナに謝っていた。
「ごめんね、私のわがままで」
「私はアリソンと一心同体だからな。気持ちはよくわかるし、それに、私がいなきゃ魔法使えないだろ。だれが守ってやるんだ」
コルネリアの言葉にアリソンはうっと呻いた。
『僕も頑張ってアリソンを守る!』
ルナが意気込んだ。愛おしくて、アリソンはぎゅっと抱きしめた。すでに毛が生えそろった背中に鼻を押しつける。もふもふしている。
「ふたりともありがとう」
ペネロペが先を進んでいく。地下への扉の前には騎士が二人立っていて、厳重に警備されている。ペネロペが扉に近づくと騎士たちはかかとをくっつけて敬礼した。
「通ります。開いてください」
ペネロペが言うと二人の騎士は顔を見合わせた。どうするべきか悩んでいるようだった。
「誰かにここを通さないよう命令されているのですか?」
騎士たちは黙っている。ペネロペは二人をじっと睨むと、言った。
「いいでしょう。もし別の機会に私たちが地下に入れたとして、そこで何らかの悪事が露呈した場合、あなたがた二人は悪事を隠蔽しようとした罪に問われます」
「ちょ、ちょっと待ってください。私たちはただウィルフリッド様に……」
騎士の一人がそこまで言って口を閉じた。ペネロペは怪訝な顔をする。
「ウィルフリッド? 彼が命じたのですね」
騎士たちは渋々頷いている。ウィルフリッドという名前を聞いて、ルナが鼻に皺を寄せた。ルナをいじめていたあの男だ。魔力至上主義者で、アリソンにたいしても横柄な態度をとっている。彼に何か関係があるんだろうか、とアリソンが考えているとペネロペが咳払いをした。
「ウィルフリッドに私を止める権限はありません。通してください」
騎士たちは少し考えると頷いて扉を開いた。
扉の向こうはすぐ階段になっていて遙か下にくだっている。壁に魔道具のランプが備え付けられていて、騎士が操作するとそのすべてが起動する。石造りの階段がランプのほのかなオレンジに染まる。
「さ、行きましょ」
ペネロペがいってアリソンはおどろいた。
「え、私だけで行くつもりだったのに」
「途中までは一緒についてくよ。私も知りたいことがたくさんあるから」
ペネロペはそう言うとアリソンの返事も聞かずに降りていってしまった。アリソンはコルネリアと顔を見合わせた後、すぐにペネロペの後を追った。
次回更新は火曜日です。